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エコバッグの防水性を高める撥水コートと縫製止水処理

目次
はじめに:エコバッグの防水性は本当に問題ないのか?
エコバッグは、環境意識の高まりとともに、私たちの生活に欠かせないアイテムとなりました。
軽量で持ち運びしやすく、繰り返し使えるため、レジ袋有料化などの流れを受けて需要が急増しています。
しかし、エコバッグを実際に使ってみると、雨や飲み物の結露、食品の水気など、中に入れたものが濡れてしまうことや、逆に外部から水が浸入して中身が濡れてしまうことが意外に多いと感じる方も多いのではないでしょうか。
この「防水性」は、消費者にとっては「安心」「清潔」「使い勝手の良さ」につながる重要なポイントです。
しかし製造側から見ると、単純に「防水にしてね」と言われても「じゃあ何をどうすればよいのか?」と迷うことが多いのが現実です。
なぜなら、エコバッグの防水には
・素材自体の性質
・撥水コートなどの表面処理
・縫製や目止めなどの作り込み
など、複数の技術が関係しており、単純なコストアップだけでは済まない現場ならではの“葛藤”があるためです。
ここでは、エコバッグの防水性を高めるための「撥水コート」と「縫製止水処理」の技術、製造業の立場から“現場あるある”とともに詳しく解説します。
エコバッグに求められる防水性とは?
エコバッグは主に、買い物や日常のちょっとした持ち運び用途で使われるため、過剰な防水性(例えば完全な防水=潜水服レベル)は求められていません。
しかし、
・雨の日の使用や自転車カゴでの持ち運び
・食品・冷凍もの・飲料などによる水濡れ
・袋の中が不衛生にならないようにしたい
こうした用途には、ある程度の「水の侵入・漏れを阻止する性能」が不可欠です。
つまり「水をはじく(撥水)」と「染みこませない(防水)」双方の技術が必要になります。
実際の顧客クレーム・現場トラブル例
エコバッグをめぐるよくある現場での声、クレーム例にはこんなケースがあります。
・買い物帰りにエコバッグを自転車カゴに入れたら、雨で中の紙箱や書類が濡れてしまった。
・冷蔵/冷凍品の結露で、バッグの底から水が漏れて車のシートや自宅の床が濡れた。
・繰り返し洗濯したら、縫い目や端部から水が染みるようになった。
これらは素材・工程ごとの防水対策が不十分な場合に頻発します。
撥水コートの重要性と加工現場のリアル
エコバッグに使われる素材は、ナイロンやポリエステル、不織布、コットン(綿)など多岐にわたります。
各素材には元々「水をはじく力=撥水性」があるものとないものがあり、そこに追加で施されるのが「撥水コート」です。
代表的なのは、シリコンやフッ素系樹脂、パラフィン、ポリウレタンなどを生地に塗布・浸透させる加工です。
撥水コートの種類と特徴
代表的な撥水コートは以下の通りです。
・フッ素系コート:抜群の撥水性・耐久性がある一方、環境規制(PFOA・PFOS問題)で転換が進行中。
・シリコン系コート:比較的環境負荷が低く、柔軟性を維持したまま撥水効果を付与可能。
・ポリウレタンコート:撥水+伸縮性や蒸気の透過性も与えられるため、通気性が求められる用途にも適用。
加工現場視点の苦労・ノウハウ
表面にコートするだけなら簡単そうにも見えますが、現場では
・素材に対する相性(コートが“染みない”“弾かれる”ケース)
・コストと持続性(安い撥水剤は効果が弱い、持続性が低い)
・見た目や風合いの劣化(テカリ/ごわつきで売り場評価が下がる)
・「洗濯耐性」の確保(洗濯や摩擦でコートが落ちやすい課題)
など、リアルな苦労があります。
従来の昭和的な小規模縫製工場や、“とりあえずやってみる”精神の現場でも、「撥水剤の希釈倍率」「乾燥温度」「塗布量のバラつき」など細かなコツを積み重ねて、防水性品質の安定化を行っています。
特に海外OEMで大量生産する場合、「現地スタッフがレシピ通りに加工せず、思わぬ不良が出る」というこぼれ話もよく耳にします。
「防水」と「撥水」は違う?エコバッグの縫製止水処理
撥水コートだけでは、水を強く押し付けるなど“圧力”がかかった時に生地の隙間から水が通ってしまうことがあります。
そのため「完全防水を目指すなら、縫製部(縫い目)への止水処理」が肝心です。
縫製止水の具体的な工法
縫い目から水が漏れるのを防ぐには、下記の処理が行われます。
・シームテープ(止水テープ)加工
縫い目の裏側に防水性のテープを圧着し、水の道を塞ぎます。
レインコートやテントなどでも使われる代表的技術です。
・縫製糸の選定(止水糸、撥水糸)
縫い糸自体に撥水・防水性を持たせ、伝い水を減少します。
・シリコン・樹脂コーキング
縫い目を専用の樹脂で埋めることで、隙間を塞ぎます。
現場での苦労・失敗談
止水テープは熱圧着・手貼りの2方式があり、量産現場では「温度管理」「圧着圧力」「貼付ズレ」などによる失敗がよくあります。
また、コストダウン追求で「全ての縫い目に貼らず、部分応用で済ませたら漏水クレームが出た」「強度を気にして分厚いテープにしたらごわごわして開閉がしにくくなった」――こんなことも業界あるあるです。
従来の“安価エコバッグ”が激戦となる中、止水処理はコストの大きな要因となります。
そのため、百均やノベルティ用途では無処理のまま販売される例が多く、「防水性を付加価値として訴求できるか」がサプライヤー・バイヤーの腕の見せ所となっています。
何を重視すべきか?バイヤー視点・サプライヤー視点
では、製造側(サプライヤー)と調達側(バイヤー)それぞれの立場から、防水性をどう考えるべきでしょうか。
バイヤー視点でのチェックポイント
・「防水性」は本当に購買決定要素か?
消費者から明確な要望が多い場合、また、ブランド価値や付加価値型商品を狙う場合は、防水スペック強化は有効です。
逆に低価格・大量配布目的の場合は、そこまで追求しなくても良い場合も多いのが現実です。
・耐久性検証(洗濯テスト/摩耗テスト)が重要
商品カタログやサンプルだけでなく、実際に「繰り返し使った後も効果が続くか」をきちんと評価できるかどうかが、リスク管理のプロとして価値を生みます。
・実際の生産現場(海外OEM含む)の技術レベル
“言うだけ委託”ではなく、現場の工程管理・品質保証フローを確認しておくことがトラブル防止につながります。
サプライヤー視点でのポイント
・どの顧客・市場に納品するかによって「防水性」の必要度が変わる
予算重視か、耐久性・安心感優先の高価格帯かで、導入すべき工程・コストが大きく異なります。
・現場スタッフの教育・管理
アナログな現場でも、「なぜこの工程が必要か」「どこで手順を間違いやすいか」を現場全員が共通理解しておくことで、品質トラブルを大幅に減らすことができます。
・『安全マージン=やりすぎくらいがちょうどいい』
規格ギリギリ設計は不具合のもと。
現場力を生かし、少し余裕を持ったプロセス設計・品質保証を心がけることが、長く信頼されるメーカーの基本です。
まとめ:新時代の「ものづくり現場力」を生かして
エコバッグの防水性強化は、単なる“作ればいい”ものではありません。
消費者ニーズ、コスト/品質のバランス、そして現場の細かな技術力・管理体制すべてが揃って初めて本当に使い勝手のいい商品になります。
現場では、何度も失敗しながらPDCAを回して
・最適な撥水コートの剤・手順をつかむ
・縫製止水処理の安定再現技術を磨く
・使い手の声やエンドユーザーの暮らし・価値観まで把握してものづくりに活かす
そんな努力・知恵の積み重ねが、エコバッグに限らず製造業全体の競争力となります。
昭和から続く“現場力”と、今後求められる“DX・新素材・環境配慮”のミックスで、日本のモノづくりはまだまだ進化可能です。
バイヤー/サプライヤー両方の立場に立ち、現場目線で「本当に価値あるもの」をつくり続ける姿勢こそ、アナログから脱却し新たな地平線を切り開くカギとなるでしょう。
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