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エプロンの防汚性を高める撥水加工樹脂と熱圧処理温度制御

目次
はじめに:製造業の工場現場におけるエプロンの防汚性の重要性
製造業では、作業者の安全衛生と作業効率の向上を目的とした現場装備の改善が絶えず求められています。
その中でも作業時の基本アイテムであるエプロンは、現場の状況や職務内容によって多様な機能性が求められます。
特に食品・医薬品・化学加工や精密機器製造の現場では、「防汚性」と「清潔性」の維持が製品品質や現場の生産性に直結するため、従来以上に高機能なエプロンが必要とされるようになっています。
近年、撥水加工樹脂と熱圧処理温度制御の技術進歩がエプロン性能の進化を強力に後押ししています。
この記事では、20年以上の製造現場経験を踏まえつつ、撥水加工技術の基礎から、加工樹脂ごとの選定ポイントや熱圧処理工程の実践的ノウハウ、さらには昭和時代から「変われない」現場がどのようにしてアップデートに挑むべきかについても深掘りし、実践的な知見をお届けします。
エプロンの防汚性を構成する要素とは
なぜ“防汚性”がこれほど重視されるのか
工場現場のエプロンは「汚れ防止」「耐久性」「洗濯耐性」という3つの役割が求められます。
特に近年はコンプライアンスや品質マネジメント規格(ISO9001, FSSC22000など)の観点から、清潔を保つためのルールや点検が厳格化しています。
一方で、油分・水分・薬品などの飛散や食品・インクの付着といった過酷な汚染リスクが常に付きまといます。
このため、防汚性=「如何に液体や粒子が生地表面にとどまらず、こびりつかないか」が最も基礎的かつ重要な機能になるのです。
従来のアプローチが抱える“落とし穴”
昭和からの伝統的な現場では、PVCやポリエチレンなど「単一樹脂のラミネート加工」により防汚性を持たせてきました。
しかし、これらは経年での剥離やひび割れ・柔軟性低下・通気性低下が問題となり、作業時の快適性や洗濯時の清浄性能にも限界がありました。
また、単なるコーティングだけでなく、実際の使用環境(温度、湿度、摩擦など)に応じて細やかな対応が求められるため、“現場の困りごと”が見落とされてきた部分も否定できません。
最新撥水加工樹脂の特徴と選び方
撥水加工樹脂の主流たる3大樹脂
近年急速に進化した「撥水加工樹脂」には、目的や環境に応じて主として3つの系統があります。
1. フッ素系樹脂(PTFE系、PFA系)
超絶撥水、耐薬品性に優れる。汚れだけでなく油も弾くがコスト高。
2. シリコーン系樹脂
柔軟性・耐候性に優れ摩擦抵抗低減効果も。繰返しの洗濯にも強い。
3. アクリル・ポリウレタン系樹脂
コストと性能のバランスが良く、食品工場などでの標準的選択肢。
これらを製品に活かす場合、「現場の液体汚れ特性」「エプロンの繰返し洗濯頻度」「作業環境の温度域」などを考慮し、最適な樹脂を選定します。
撥水加工樹脂選定の現場チェックポイント
撥水加工樹脂を選定する際、単に「よく弾く」性能のみで決めるのは危険です。
現場で本当に役立つかどうかを判断するには、以下の実践的ポイントも重視する必要があります。
– 付着しても簡単に落ちるか(食品の油、金属粉、インクなど具体的な汚れ)
– 樹脂自体の耐久性(割れやひび、摩耗にどれだけ耐えるか)
– 作業者が着用する際のゴワつき・動きやすさ(柔軟性、厚さ)
– 洗浄時の優しさ(強アルカリや漂白剤にどこまで耐え、風合いは保持されるか)
– 環境負荷(環境対応素材やリサイクルも今後は必須視点)
施設や現場のバイヤーは、こうした詳細なプロファイルを頭に入れて、単なるコストダウン提案ではなく「工程全体の効率UP」「安全衛生・持続可能性」を含むトータル最適化の発想でサプライヤーと交渉を進めなければなりません。
防汚性のカギを握る“熱圧処理温度制御”技術
熱圧処理とは何か、なぜ重要なのか
エプロンの基布に樹脂膜を付与するにあたって“熱圧処理”は不可欠な工程です。
ここでの温度設定・圧力・接触時間の管理こそが、「樹脂本来の持ち味=撥水・柔軟・耐久」を最大限引き出すポイントになります。
昭和時代は「職人の勘」に頼る部分も少なくありませんでしたが、「温度設定がわずか10度外れるだけで、密着性や樹脂の微細構造が大きく変わる」「ラミネートの一部に温度ムラが出ると、その箇所が早期劣化の起点になる」など、現場での品質バラツキの主因になりかねません。
最新の熱圧処理制御トレンド:IoT+データ活用の時代
工場の自動化が進む今、ヒートラミネートや乾熱処理には高度な温度PID制御や、製品1枚ごとのサーマルカメラモニタリングも導入されつつあります。
これによって
– 低温域では密着が不十分になり撥水が弱まる
– 高温過多では樹脂が分解・変色し下地布まで劣化
というリスクを「リアルタイム見える化」しつつ、最適パラメータに調整可能です。
また加熱・冷却サイクルの自動制御と「ログデータ蓄積」により、過去の工程データと現場不良情報(ピンホール、剥離など)を突き合わせる解析が容易となり、不良の再発防止や生産効率アップの起爆剤になります。
アナログ現場でこそ生きる“半自動化”導入術
実際には、まだまだ「古いミシンやプレッサー」「温度計のみで制御」な現場も多いでしょう。
丸ごと設備刷新できなくても、デジタル計測器の取り付けや、作業ごとにPIDレコーダーを導入するだけで、温度制御の精度は劇的に上がります。
加えて、加工データの記録と“見える化ボード”掲示で、昭和頭のベテラン達も「自分の加工の良否」を実感しやすくなります。
実はこうした“半歩ずつの自動化”こそが、現場力を底上げしうる現実的な改善策と言えるのです。
撥水性向上と熱圧処理による現場価値の最大化
防汚性UPがどんな現場メリットになるのか
撥水性の向上 × 適切な熱圧処理が実現されると、次のような本質的メリットが現場に生まれます。
– 作業終了後の清掃・洗濯時間が大幅短縮され、ムダな水・洗剤もカット
– エプロン自体の寿命が延び、装備品コストの削減につながる
– 作業時の「ヌルつき」「ヘタリ」によるケガの危険性が低減
– 社内・顧客への「現場品質管理力」アピール(監査対応力UP)
– サスティナビリティ指標(環境配慮型素材・工程)での差別化推進
要は「目に見える成果」として現場や経営層に利益が還元されるわけです。
これこそが平成世代・令和世代の現場リーダーたちが意識すべき“現場を動かす本当の武器”となります。
サプライヤー/バイヤーが知っておくべき交渉術・周辺知識
サプライヤーは単に「◯◯撥水素材です」だけでなく、加工後の強度試験・防汚性能比較・熱圧処理パラメータの実データ提示で提案力を高めましょう。
一方でバイヤーは、「自社の汚れ種類」「着用環境」「洗浄頻度」まで具体的に“現場の困りごと”を明示することで、ムダのない最適品を選びやすくなります。
またSDGs対応の観点から、PFAS規制やリサイクル適合の有無も今後の大切な評価軸となってくるため、長期の調達戦略としても押さえておくべきです。
まとめ:アナログ工場から脱しつつ、地に足のついた進化を目指す
エプロンの防汚性向上は、単なる設備依存の話でも高機能素材導入だけの問題でもありません。
どんなに優れた撥水加工樹脂や熱圧処理温度制御が手に入っても、「現場でどう活かすか」「実際の困りごとにフィットしているか」が最も重要です。
デジタル&サステナビリティ時代に対応しつつ、昭和の現場で語られてきた“現場の泥臭い知恵”も融合させ、トータルで現場価値を最大化する——この発想こそが、日本の製造業現場における持続的イノベーションの出発点なのです。
製造業に携わる皆さん、調達バイヤーを志す方、そして現場課題の解決を真剣に考えるサプライヤーの皆さん、それぞれの立場から“使われる本物のエプロン”にこだわった製造現場改革を推進していきましょう。
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