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採用後フォローが弱い製造業で人材不足が加速する構造

目次
人手不足が常態化する今、製造業の採用後フォローを見直すべき理由
日本の製造業は、長年にわたり「ものづくり大国」として発展してきました。
しかし、近年は人手不足が慢性化し、業界全体が深刻な課題に直面しています。
特に、採用活動の後、人材を定着させる「採用後フォロー」が極端に弱いことが現場の喫緊の問題として顕在化しています。
少子高齢化が進み、若手人材の確保が難しくなる一方で、従来型の人材マネジメントを続けている企業が多いことが要因です。
今回は、現場目線で「採用後フォローが弱い」構造的な課題を掘り下げ、製造業発展のための新しいアプローチを考察します。
昭和的な価値観とアナログ文化が残す“変われない現場”
終身雇用と年功序列の呪縛
多くの製造業では、昭和時代から続く「終身雇用」「年功序列」の文化が根強く残っています。
条件に合う人材がいれば、とりあえず大量に採用し、現場に放り込んでから育成する――そんな感覚が今も根づいています。
時代は変わり、就職する若手世代の価値観は多様化し、会社や上司との人間関係だけでなく、「やりがい」や「成長実感」、「ワークライフバランス」まで重視するようになっています。
それにも関わらず、入社式から現場配属までの流れや、OJTの在り方は何十年も変わらない会社が非常に多いのが実情です。
習うより慣れろ、の限界
「まずは現場で覚えろ」
「見て盗め」
「手を動かしてなんぼ」
こうした発想は、確かに一時代を築き、多くの熟練工を生み出した原動力でした。
しかし、今の若い人材にとっては、こうした無言の圧力や非言語的な指導スタイルが離職やモチベーション低下の大きな引き金になっています。
どの現場でも問題になっているのは、せっかく採った人材が半年~1年以内でやめてしまう「早期離職」です。
製造業の現場目線で見る採用後フォローの実態
実務任せきりになる新人
多くの工場では、配属直後にOJTと称して「現場の先輩について仕事を覚える」スタイルが主流です。
現場リーダーや係長が細かく指導する……はずが、現実には忙しい現場の中で、新人へのフォローが後回しになりがちです。
近年は生産性向上のプレッシャーが強まり、既存社員が教育担当として時間を割く余裕すらありません。
本来は体系だった教育プログラムや、業務進捗のヒアリング、定期的なフィードバックなど「人を定着させ、育てる仕組み」が欠落しています。
メンタルケア不在の「人任せ文化」
製造現場は肉体的にも精神的にも負荷が大きい場所です。
しかし、メンタルケアやキャリア形成について考えている職場はごくわずかです。
新人との面談や相談の場を設けても「やってる感」のため、もしくは人事部の業務として定型的に処理するだけ。
本人がSOSを出すまで誰も異変に気付かない、気づいても行動を起こさない、そんな空気感が蔓延しています。
なぜ採用後フォローが強化されないのか?業界構造的な要因
ベテランの“経験値”頼みの教育体制
製造業の特徴として、技術やノウハウが文書化されずベテランの頭の中にしかない「属人化」が挙げられます。
「昔はこうだった」
「俺たちの時は教科書なんてなかった」
こうした現場のベテランの経験値に頼る教え方が、組織全体の教育体制の進化を阻んでいます。
人事部と現場の分断
採用担当と現場管理職の間に強い壁が存在する会社も多いです。
採用は人事部が責任を持ち、現場に配属したら現場任せ――こうした責任のなすり合いが、「採用後の成長」や「定着」の視点を弱めています。
また、人事部自体には現場経験者が少なく、現場の本当の苦しさ、仕事の厳しさを知らないことも問題です。
採用後のミスマッチを早期発見できない原因の一つとなっています。
現場リーダーの育成機会不足
現場を支える係長・主任クラスが、マネジメント研修などをほとんど受けていないという実態も見過ごせません。
現場で何十年とモノづくりをしてきたが、人材の育て方は自己流という人が多く、人の心に寄り添うマネジメントスキルの欠如が、若手との断絶を深めています。
採用後フォロー強化がもたらす現場改革のインパクト
人材定着で知見・技術が蓄積される現場へ
現実的に、人が短期間で入れ替わるたびに、現場には教育負担と失敗リスク、そして暗黙知の流出が加速します。
採用後の丁寧なフォローを通じて人材が定着すれば、技術伝承と生産性の向上に直結します。
また、現場に根付いたknow-howや改善文化も若手に持続的に受け継がれていくため、組織としての強靭さが増していきます。
現場イノベーションの土壌が生まれる
多様な視点や異質な人材が定着することで、改善提案や新しい発想が育ちます。
オペレーションの自動化、生産現場のデジタル化など、今後求められる“現場の変革”も若手人材の活力があってこそ実現できます。
バイヤー・サプライヤー視点からみる採用後フォローの価値
優れた現場=強いサプライヤー
仕入れ先を選ぶ立場のバイヤーから見ても、現場が安定しているサプライヤーは魅力的です。
人がしっかり定着し、技術伝承が進み、突発トラブルにも柔軟に対応できる体制は、納期や品質を守る上で最重要の要素です。
逆に、人が定着せず混乱しているサプライヤーは、生産計画や品質保証の観点で大きなリスクとなります。
サプライヤーが現場改善に投資する意義
サプライヤーの立場であれば、人材育成や働く環境の見直しに積極投資することで、バイヤーからの評価、すなわち取引拡大にもつながります。
「うちは現場が安定している」
「教育体制がしっかりしている」
そうした強みは、受注競争の場で大きな差別化ポイントとなります。
実戦的!採用後フォロー強化の現場実践アイデア
現場との交流を強化したオンボーディングプログラム
配属直後から数週間、若手に専用トレーナーを付け、定期的なヒアリングと個別フォローアップをセットで実施する。
現場のリーダーと新人がワンチームになる機会を意図的に増やすことがポイントです。
教育の見える化とノウハウのシステム化
暗黙知や現場でしかわからない業務手順、考え方を徹底的にマニュアル化・動画化し、属人化から脱却する取り組みを急ぎましょう。
現場の先輩の「勘」や「当たり前」を言語化したコンテンツを作ることで、誰が教えても一定の水準に新人を引き上げられる体制ができます。
メンタル面での定点観測
月1回の新人面談を人事部+現場リーダーで実施し、想定問答を超えたリアルな意見・本音を聞く機会を持ちましょう。
「職場内に相談できる人がいるか?」という観点でのケア体制もセットで仕組みに組み入れるべきです。
現場リーダーのマネジメント研修
係長・主任といったミドル層には、従来型の技術指導だけでなく「人を育てる」「やりがいを引き出す」マネジメントを学んでもらう場が重要です。
外部研修や異業種交流会へ参加させたり、最新の人材マネジメントスキルを学ぶ機会を増やしてください。
まとめ : 採用後フォローは「現場力」の中核戦略
採用活動に力を入れても、採用後のフォローが弱ければ人は定着せず、現場の弱体化につながります。
今こそ、「作って終わり」の昭和的なアナログ文化から脱却し、定着・成長を支える現場型オンボーディングを追求しましょう。
製造業の未来を担うのは、“人”であり、“現場”です。
ビジネスパートナーとして安心される強い工場、強い現場づくりのために、採用後フォロー強化という新たな地平線を一緒に切り拓いていきましょう。
今ここから、持続可能な「現場力」強化へ大きく一歩を踏み出しましょう。