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ケーシング部材の溶接構造が振動騒音を招く背景

目次
はじめに:ケーシング部材と振動騒音の関係
製造業の現場において、ケーシング部材は機械装置や産業機器の外装や構造部品として広く利用されています。
一方で、これらの部材の溶接構造が原因で振動や騒音が発生し、現場にさまざまなトラブルやクレームを招いていることも事実です。
なぜ、ケーシングの溶接構造が振動騒音につながるのでしょうか。
その本質と現場目線での課題、さらにはサプライヤーやバイヤー、ものづくり現場の未来像について掘り下げていきます。
そもそもケーシング部材とは何か
ケーシング部材とは、機械や装置の内部機構や電子部品を外部から保護するためのカバーや筐体のことです。
素材は厚板の鉄、ステンレス、アルミニウム、樹脂など用途によって多岐にわたります。
多くのケースで板金加工と溶接によって組み立てられ、強度や気密性、防音性などが求められます。
現場では、「設備を守る盾」としてはもちろん、見映えや安全性の側面からも非常に重要な部品です。
なぜ溶接構造が振動・騒音に影響するのか
応力集中と固有振動数の変化
金属材料同士を溶接した場合、接合部に高い熱が加わることで「熱影響部」と呼ばれる特殊な金属組織が生じます。
この領域は母材に比べて歪みやすく、振動エネルギーが集中しやすい傾向にあります。
溶接箇所の剛性や形状が部品全体の固有振動数を変化させ、機械的な共振条件を満たしやすくなります。
特にモーターやポンプ、送風機など振動源に近いケーシングの場合は、この影響が顕著に現れます。
溶接部の仕上げ精度とバラツキ
現場の溶接作業には「人の手によるばらつき」がつきものです。
ビード(溶接線)の盛り上がりや欠損、歪み取りの不十分さがあると、部材全体のバランスが崩れます。
この不均一な構造がわずかな振動を増幅させ、騒音源となることがあります。
残留応力の影響
溶接作業後も、溶接部と周辺母材には「残留応力」が発生します。
この応力が時間とともに変化したり、外部荷重や振動の刺激で解放されると、部材が微妙に変形し、ガタや軋みの音が発生します。
熟練工でも完全にゼロにはできないため、設計段階から配慮が不可欠です。
昭和時代の“溶接万能主義”と現場の固定観念
戦後の日本製造業は、「溶接すれば何でも強くできる」という溶接万能主義に支えられてきました。
ボルトやリベットに比べてコストダウン、作業効率化が可能であり、現場の絶大な信頼を得て今に至ります。
しかし、現代の高精度機器や静音化ニーズの高まりに対して、旧来のアプローチでは対応しきれない場面も増えてきました。
現場では“伝統のやり方”が根強く残り、溶接による剛接を最優先することで振動や騒音リスクへの意識が薄れがちな実態もあります。
機械組立現場での実例:騒音クレームの裏側
ある産業用送風機メーカーでは、納入後の現場から「異常振動・うなり音」のクレームが頻発しました。
設備の回転数や固定歯、軸受け部には問題が見当たらず、「ケーシングの筐体構造が音を増幅しているのではないか」という仮説が立てられました。
分解調査の結果、溶接部の応力集中や板金部の共振、さらにケーシング内部の隔壁構造による音波反射など、複数の要因が複雑に絡み合っていることが判明しました。
100分の1mm単位の差が大きな騒音トラブルとなる現実に、現場は対応に追われました。
この例は決して特殊なものではなく、現代の製造業ではごく一般的に起こりうる問題と言えるでしょう。
バイヤー視点で見るケーシング部材の調達と品質管理
調達購買の“安さ”と“品質”のジレンマ
バイヤーの立場では、ケーシング部材コストの最適化と製品の品質保証を両立させることは難題です。
価格競争の激しい中、単純にコストを追求し過ぎると、溶接品質や板金精度が犠牲になりがちです。
設計段階から振動・騒音リスクを想定した品質基準を明確にし、サプライヤーと共通理解を持つことが重要です。
検査や受入れで重視すべきポイント
ケーシング部材の受入れ検査では「見た目」「寸法」だけでなく
– 溶接ビードの仕上げ
– 部品全体の振動特性(共振周波数)
– マイクロクラックや歪み
など、現場での使用環境や後工程を見据えた多角的な目利きがポイントになります。
時には現場実装での仮組み試験や音響測定を導入するケースも増えてきました。
バイヤーとサプライヤーの溝を埋めるには
サプライヤー側も、従来の「図面通り作る」だけでなく、現場でどう使われるか、振動音まで気を配った提案・改善ができることが求められます。
現場での課題や不具合のフィードバックを仕入先と積極的に共有し、双方で対策や開発を進める“パートナーシップ”の構築が不可欠です。
品質管理から見た溶接部材のポイント
品質管理部門では、溶接部材の振動・騒音問題にどう取り組むべきか。
ポイントは「静的検査」だけでなく、「動的評価」をルール化することです。
例えば
– 共振周波数の測定
– 打音検査やAE(アコースティック・エミッション)評価
– ひずみゲージの活用による微小変形の計測
などの高度な技術を積極的に取り入れる必要性が高まっています。
FA化・DX化の進展とケーシング部材の将来像
現場のFA(ファクトリーオートメーション)化やDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中、ケーシング部材への期待も大きく変化しています。
– 振動センサーやIoTデバイスを組み込んだ“スマートケーシング”
– 軽量化と防音性を両立した異種材接合・構造用接着剤の活用
– 解析ツールによる共振リスクの「見える化」
など、アナログから脱却した新たな発想が求められています。
伝統の溶接技術は製造業の土台ですが、“変わらない現場”から“進化する現場”への転換が一層加速していくでしょう。
まとめ:ケーシング部材設計・調達の未来に向けて
ケーシング部材の溶接構造が振動騒音を招く背景には、技術的な問題と現場の固定観念、さらにはバイヤー・サプライヤー間のコミュニケーション不足が複雑に絡み合っています。
真の静音化や高品質化を実現するためには、設計・製造・調達・品質管理の各部門が連携し、“振動騒音リスクを最小化する”意識を全社的に共有することが重要です。
現場の課題は必ずしも「昭和的な常識」で解決できません。
新たな手法や発想、現場目線の課題発見力で、製造業全体のレベルアップを目指していきましょう。
バイヤーを目指す方、サプライヤーとして最前線で戦う方ともに、ケーシング部材の本質を深く理解し、より良いものづくりを推進していくことが、これからの時代に求められる姿勢です。
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