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表面研磨機用クーラントタンク部材の溶接構造と漏れ問題

目次
はじめに:表面研磨機用クーラントタンクの重要性
表面研磨機は、金属加工・精密機械製造の現場で欠かせない設備です。
その性能を発揮するには、切削粉や研磨カスを効率よく流し、工具やワークピースを冷却・洗浄する「クーラントシステム」が不可欠です。
そして、その心臓部とも言えるのがクーラントタンクです。
クーラントタンクは、切削液や研磨液を貯蔵し、安定して供給する役割を持ちます。
一方で、溶接構造による製造過程や、昭和時代からの慣習の名残りで「漏れ問題」も起こりやすい部材です。
ここでは、現場目線で「溶接構造」の基本、「漏れ問題」の実態と対策、さらにバイヤーやサプライヤーが押さえるべきポイントを、最新の業界トレンドを交えつつ解説します。
クーラントタンクの溶接構造:基本とその必然性
なぜ溶接構造なのか?
クーラントタンクには、一般的に溶接による密閉構造が採用されています。
理由は二つあります。
まず、密閉性と強度を両立しやすい点。
液体を長期間安定して貯留し、作業環境での振動や衝撃にも耐える必要があるため、ボルト締結やゲージ溶接よりも全周溶接が適しています。
次に、形状・コストの柔軟性です。
現場のスペースや研磨機仕様にあわせて、板金のプレスや曲げ加工で製作した複雑な形状の部材を簡易かつ低コストで組み立てることができるため、溶接が業界標準として根付いています。
主流となっている溶接の方法
クーラントタンクの製造現場では、下記の溶接手法が用いられます。
– アーク溶接
– TIG溶接(気密性・美観を重視する場合)
– MIG/MAG溶接(量産ライン向け)
とくにステンレスや鉄板の溶接ではTIGが多く、微細なピンホールや歪みを最小限に抑える工夫がなされています。
溶接構造による漏れ問題の実態
漏れはなぜ起こるのか?その原因を掘り下げる
「溶接するから絶対に漏れない」、というのは現実とかけ離れています。
実際の製造現場では、下記のような要因により漏れが発生します。
– 溶接ビードの不均一(肉盛り不足、溶け込み不足)
– 板厚のばらつきや熱による歪み
– 溶接後のグラインディング作業での過研磨
– 角部など応力の集中箇所でのクラック発生
– 気泡によるピンホール(特にステンレス材)
こうした現象は、省力化・外注化が進む一方で熟練技能者が減少している現場では、ますます起きやすくなっています。
実際のクーラント漏れによる現場の被害
クーラント漏れは、一次的な液体損失のみならず、下記のような深刻な問題を引き起こします。
– 機械設備や床の腐食
– 滑り事故などの労災リスク
– 製品の品質不良(冷却不十分、異物混入)
– 近くのセンサーや制御盤の故障
これらは工場の生産性や安全性に直結する問題であり、軽視できないのが実状です。
昭和から抜け出せない!?業界の構造的な課題
図面・指示書の「暗黙知」とそれによる失敗
製造業の現場では、「この程度」「経験でわかるだろう」といった曖昧な指示が今もなお通用しています。
州現場独自の”阿吽の呼吸”に支えられてきた背景には、熟練工の世界観と、長年使い続けた仕様書のアップデート不足があります。
そのため、新規参入サプライヤーや若手技術者が溶接した場合、微妙な溶接条件の違い、検査方法・基準の統一不足から、気付かぬうちに漏れタンクが大量発生――という事態が起きてしまうのです。
現実的な「コストと工数」のトレードオフ
溶接タンクに完全性・耐久性を求める一方、「コスト競争力重視」「短納期化」の波は年々高まっています。
例えば、JIS検査レベルに満たないリークが発生しても、「溶接直し」ではなく「経済ロットに乗せて焼き直し(やり直し)」の判断が下される――。
こうしたシビアな現実を、発注者・バイヤー側のみならず供給側も理解し、一定の歩み寄りを見せなければならない時代です。
バイヤーの視点:発注リスクの最小化へ
バイヤーが押さえるべきチェックポイント
バイヤーとしては、サプライヤーに溶接タンクを発注する際、下記を徹底すべきです。
– 溶接仕様書・検査基準書の最新版を提示
– 加工現場視察による「真の技術力」把握
– リーク試験(エアテスト・水張り試験)データの提出義務
– シリアル刻印などトレーサビリティの確保
特に、検査基準は「目視でOK」などの主観に頼らず、JISや業界ベンチマークを参照して明確化した書面管理を徹底することが重要です。
トラブルを未然に防ぐ“コミュニケーション”
溶接タンクの不良は、発注段階でのすり合わせ不足・意識の食い違いから起こるケースが大半です。
「漏れさえなければ良い」のか、「溶接ビードの美観にもこだわる」のかによって採用すべき溶接法・検査方法は変わります。
初回取引や仕様変更の際は、現場管理者・品質管理担当・調達購買担当が一堂に会し、具体的なNG・OKレベルまで共通認識を持たせることが理想です。
サプライヤーの視点:本当に価値ある納品を目指す
求められるのは「安く早く」よりも「止まらない安心」
サプライヤーの本質的な役割は、「短納期・低コストを守って出荷」だけではありません。
現場の機械トラブルを未然に防ぐ、安定供給まで含めて“止まらない工場”を実現する部材作りこそが求められています。
信頼構築のポイントは下記です。
– 漏れ事例やクレーム再発防止の事例共有
– 加工工程内でのセルフチェック体制(4M管理など)
– 突然の量産オーダー変動にも柔軟対応可能な生産キャパ
– 溶接以外の漏れ対策(ガスケット構造のアドバイス、検査治具の提案など)
上述した「バイヤーの視点」も理解し、対等な“ものづくりパートナー”として提案型の姿勢を見せることで、単なる受託加工から一歩上の信頼関係に昇華できます。
最新トレンド:漏れ対策のデジタル化と新材料へのシフト
非破壊検査技術の進歩とその現場定着
近年、X線透過や超音波探傷検査など、非破壊で漏れリスクを事前に可視化できる技術が普及し始めています。
まだまだコストなどの壁はあるものの、「100%エアテスト」に代わる転換点を迎えつつあります。
また、IoTセンサーによる漏れ早期検知(タンク底部の液体センサー設置)も、現場のダウンタイム低減に貢献しています。
従来構造からの脱却:溶接レス構造の模索
製造業の一部では、部品点数削減と再利用性向上の観点から、「溶接レス」タンク(樹脂成型一体構造、ロールフォーミング接着構造など)の採用事例も現れています。
まだコストや耐久性検証段階ですが、昭和世代の「鉄・溶接の常識」から、新たな選択肢を模索する動きが生まれています。
まとめ:バイヤー・サプライヤーが共に考える持続可能な工場づくり
表面研磨機用クーラントタンクの溶接構造と漏れ問題は、製造業の現場改革・DX化が叫ばれる現代にも色濃く残る“現場課題”です。
伝統的な技術のよいところを引き継ぎつつ、新しい設備導入・検査手法・コミュニケーションのアップデートが不可欠です。
今一度、バイヤーは「購買力を最大化するための仕様管理と現場対話」を重視し、サプライヤーは「止まらない工場を支えるための価値提供」を目指す。
これにより、失敗も経験もともに分かち合い、昭和から未来へ“現場の進化”を続けていきましょう。
これから製造業を志す方、現場で奮闘されている方に、この記事が現場改善のヒントとなれば幸いです。
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