投稿日:2026年1月11日

製造業の会社に就職する学生たちに事前に知っておいてほしい業界の本音とOJTの限界

はじめに

製造業は、モノづくり大国日本を長年にわたり支えてきた根幹産業です。

その一方で、近年は人手不足やデジタル化の波、グローバル競争など大きな変革期を迎えており、昭和の時代から変わらず根強く残るアナログな現場文化とのギャップも顕在化しています。

これから製造業界に就職しようと考えている学生の皆さんは、希望や不安などさまざまな思いを抱いていることでしょう。

今回の記事では、現場で長年働いてきた経験をもとに、学生の皆さんや、これからバイヤー職を目指す方々、またサプライヤーとしてバイヤーを理解したい方にも役立つ「製造業の本音」と「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の限界」について解説します。

製造業の現場はなぜアナログなのか

デジタル化が進まない理由

私自身、現場の管理職として工場の自動化やIT導入に携わる中で、一見「時代遅れ」とも感じるほどアナログなやり取りや、非効率に思える慣習が多く残っていることに驚く方も多いでしょう。

デジタル化が進みにくい理由は一つではありません。

第一に、品質や安全を最優先するがゆえ、実績のある現場のルールや作業手順が容易には変えられない背景があります。

第二に、経験や勘に大きく依存してきた業界文化が根強く、データ活用や仕組み化による効率化よりも、「人の目」「人の手」を信頼する傾向が色濃く残っています。

第三に、設備投資の意思決定に時間が掛かる点も、一気に転換できない要因となっています。

業界動向としての変化

近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)の掛け声とともに、IoTやロボット、AIを活用したスマートファクトリーの導入が進みつつあります。

しかし、これが全ての工場、特に中小の現場に一挙に波及しているわけではありません。

コスト回収や人材のリスキリング、サプライチェーン全体の最適化といった課題が山積しているため、まだまだ昭和のやり方が粘り強く生き残っているのが実情です。

つまり、学生の皆さんは「最先端の工場=標準」ではなく、現場ごとにデジタルとアナログが混在する現実を受け止めておく必要があります。

OJTのリアルな実態とその限界

OJTで学べることは何か

製造業での新人教育は「OJT」が主流です。

ベテラン社員が実務を通じて仕事を教えるため、知識だけでなく、現場でしか得られないノウハウや暗黙知を効率的に吸収できる大切な仕組みです。

これは机上の学習や座学だけでは身に付きにくい、「現実的な問題の切り分け方」「工程ごとの注意点」「不具合を察知する身体感覚」などに優れた効果があります。

また、現場の仲間たちとの絆や、工程ごとに引き継がれる文化を体験しながら学ぶことで、組織への帰属意識や自主性も育まれます。

OJTの限界が生まれる背景

一方で、OJTでは「教え手の主観や経験則」に依存した教育になりやすく、最新の知識や体系的な理論に乏しいまま育成が進むことも少なくありません。

教え方のバラツキや、教える余裕・時間が取れずに放置される、新旧世代間のコミュニケーションギャップなどが問題となっています。

また、昨今は生産変動や人員削減から現場が常に人手不足気味となり、じっくり教育に向き合う心の余裕すら奪われがちです。

加えて、働く側も「なぜその手順が必要なのか」「本質的な改善はできないのか」と疑問を持ちやすくなっており、「とりあえず教わった通り」に流されることで、現場の硬直化や創造性の欠如につながるというマイナス面も現れています。

アナログOJTの弊害とキャリア自立

例えば「このやり方が昔からの決まりだから」「定年間際の○○さんの指示なら間違いない」という言葉が現場で通用してしまう場合、若手の成長やイノベーションが阻害される傾向が強くなります。

現代の製造業では、多様な価値観や、グローバルな視点が不可欠です。

OJTだけに頼るのではなく、業務の標準化やマニュアル化、学び直し(リカレント教育)、システム導入による属人化の排除が急務となっており、それ自体が次のキャリアを切り拓く力となります。

バイヤー・サプライヤーの立場で知っておくべき現場の「本音」

バイヤーの視点で気を付けるべきこと

調達やバイヤー職を目指す方が増えていますが、原価交渉や納期管理、品質要求などデスクワーク中心と思われがちなバイヤーも、実は現場との連携なくしては成り立ちません。

現場の製造プロセスや、どこで品質のボトルネックが発生しがちなのか、なぜある設備投資や工程省略が困難なのか──こうした「現場の本音」を正しく理解し、サプライヤーとWin-Winの関係を築くためには、現場の見学や現物確認、現場担当者との対話が避けては通れません。

サプライヤーはなぜバイヤーの言葉に戸惑うのか

一方、サプライヤー側の担当者からは「バイヤーの要求が現実離れしている」「コストダウン要請ばかりで、現場の苦労が伝わらない」と感じる声もよく聞かれます。

これは、バイヤーとサプライヤーの双方に「現場実態への理解のズレ」があるからです。

完成品しか見ていない、過去の難易度を考慮しない短納期要求、細かな仕様変更への対応力を過信した業務指示──こうした積み重ねが、時に大きなトラブルや不信を生みます。

現場目線で成果を出すバイヤー・サプライヤーの条件

現場を理解すること、現場で何が起きているかを自分の目で見て、現場の人の話を「傾聴」する。

これだけでも取引の信頼感や、最適な条件設定の精度が格段に上がります。

逆に「現場を知らずに数字だけを追うバイヤー」「現場の声を吸い上げられないサプライヤー」は、やがて社内外から信頼を失いかねません。

製造業の現場を肌で感じ、改善や調整を繰り返しながらチームで成果を出す──。

時代が移り変わっても、バイヤー/サプライヤー双方にとって変わらぬ真実です。

製造業に就職する前に知っておくべき本音

安定志向は通用しなくなる?

「製造業=安定」「大企業=安心」というイメージは、昭和・平成の時代には根強くありました。

ですが今、グローバル化による競争や新興国メーカーとの価格競争、エネルギーコストの高騰、ESG要求の高まり、デカップリング(サプライチェーン分断)など、将来を不確実にする要素はさらに増えています。

安定思考だけではなく、「どうやって自分で学び直し続けるか」「現場とIT・事務・経営がどう繋がるのか」を考える姿勢が必要です。

現場を知ることで広がるキャリア

逆にいえば、OJTや現場実習を通じて製造現場を知り、改善や変革の活動に自ら関わることで、経営管理・生産企画・調達購買・海外展開など幅広い職種へキャリアチェンジできる可能性が広がります。

現場を知る経験は、どんな業務領域に進んでも大きな財産になるのです。

「現場で考え抜く力」が最強の武器に

今後求められる力は、上からの指示を待つだけではなく、「何が問題かを自分で問い直し、アイデアを仲間と形にして問題を解決する力」です。

これはChatGPTのようなAIも簡単には真似できません。

特に製造業現場は、予想外のトラブルや複雑な調整が日常茶飯事であり、現場目線で深く考えるラテラルシンキングや、時には既成概念を飛び越える力が生きる場所です。

OJTの「次」を目指して

OJTは今も製造現場の基礎ですが、それだけに頼る時代は終わりつつあります。

例えば、
– 自分で情報を収集し学ぶ「セルフOJT」
– オンライン研修や動画を使って体系的知識を補う
– 社内・社外のカンファレンスやコミュニティで異業種と交流する
– 業務改善や新規プロジェクトに主体的にトライする

こうした「ラテラルシンキング型の学び方」が、今後の製造業の発展と個人のキャリアの両方を強く支えていくことになるでしょう。

まとめ

製造業はアナログとデジタルが混然一体となり、OJTの文化も進化の過渡期にあります。

学生の皆さんやバイヤーを目指す方、現場に関心を持つサプライヤーの皆さんには、現実的な現場の課題や業界の本音、OJTの「光と影」を事前に知り、自ら考え、現場から新しい価値を生み出す意志を持っていただきたいと思います。

皆さんの挑戦が、きっとこれからの日本の製造業を変える力になります。

どんな時代にも「現場から始まる進化」は、ものづくりの本質です。

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