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投稿日:2026年2月18日

MAで自動化したはずの販促が人手に戻る瞬間

はじめに:製造業を襲う“デジタル化の逆流”

近年、製造業でもマーケティングオートメーション(MA)や各種ITツールを使った業務効率化の波が押し寄せています。
とくに販促分野では、リードの獲得から育成、カスタマーサポートまでを「ほぼ自動」で対応できるMAシステムの導入が相次いでいます。
しかし、その導入効果に満足している企業は、意外なほど多くありません。
それどころか、せっかく自動化したはずの施策が「気が付けば人手に戻っている」というケースも珍しくありません。

本記事では、なぜこのような逆転現象が起こるのか、現場で20年以上経験を積んだ立場からその本質に踏み込み、今後のあるべき姿を考察します。

MAツールの導入に熱狂した製造業界

“工場IoT”の勢いそのままに営業・販促もDX化

2000年代後半から「ものづくり現場」においてはIoT技術や自動化が加速度的に進み、工場内のモノ・ヒト・設備の管理はデジタル化が定着しました。
その波が少し遅れて販促や営業の現場にも到来し、「これまでFAX・電話が主流だったBtoB受注プロセスもついに自動化できる」と期待が高まりました。
多くの会社が見込み顧客のフォロー、イベント告知、製品カタログの案内までをMAツールに切り替え、大幅なリードタイム短縮や工数削減を実現しはじめます。

経営層・管理者も“DXによる競争力強化”へ賛同

ここ数年の“DXブーム”に乗り、社内抵抗を乗り越えて従来アナログだった「販促の現場」も急速にデジタル化されました。
「見える化」「自動化」は経営層からみても勢いのあるキーワードであり、現場管理者としてもこれを推進しない理由がありませんでした。
MAツール導入で“脱・昭和”“働き方改革”を実現する――そんな雰囲気が業界には満ちていました。

なぜ、自動化された販促が「人手」に戻っていくのか

現場に蔓延していた「お任せ幻想」

しかし、導入から数年も経たぬうちに、多くの企業が「自動化バブル」の落とし穴にはまります。
例えば、下記のような現象を現場で経験された方も多いのではないでしょうか。

・MAが自動配信するメールに顧客から全く反応がない
・“温度感の高いリード”と抽出されるリストが現場感覚とズレている
・施策ごとに「承認フロー」や「例外対応」が多すぎてむしろ工数が増えた

こうした問題の根本には、「ツールに任せても、自分たちがやっていた販促の質と同じアウトプットになるはず」という“お任せ幻想”があったと言えます。
とくに製造業のお客様はBtoB業態が多く、現場での人的なつながりや商談の深堀りが成果を左右します。
MAツールは、業界独特の文化や意思決定フローを自動で補うものではなく、「現場知」をうまく反映できなければ、本来発揮すべき性能を発揮できません。

現場事情の「微妙なニュアンス」は自動化しにくい

BtoB製造業の顧客リストには「担当変動」「連絡ルートの多重化」「取引先ごとの形式的なしきたり」など独自の複雑さが存在します。
たとえば、メール一通送るにしても、“A社にはB担当からアプローチしてほしい”や、“この時期はC社には連絡を控えるべき”など、人手で微調整していたことが膨大にあります。
これらは定量化しきれず、自動化ルールに落とし込みにくいものです。
その結果、「気の利いた一言」や「現場ならではのタイミング調整」などは、結局ベテランの勘と経験に頼った“人手”に戻っていくのです。

属人化したノウハウが可視化しきれない問題

実は多くの販促業務は、ベテラン担当者の頭の中に蓄積されたノウハウや人脈リストに支えられています。
これは簡単にデジタルに移管できるものではありません。
結果的に、「自動でアラートが上がっても、結局ベテランに一声かけないと進まない」という状況になり、形を変えた属人化・アナログ回帰が起きています。

人手に戻る販促業務の実例

メール自動配信の“あて先不達”問題

ある製造メーカーでは、MAを使って新製品情報やセミナー情報を月次で一斉配信する体制を構築しました。
しかし、「知らないメールアドレスからは開かない」という現場の慣習や、「担当変更で宛先エラー」が頻発。
最終的に『配信後、一人ひとりに電話確認』という「人海戦術」に戻るという事例がありました。

“自動抽出”リストと“現場目線”のズレ

別の企業では、リードスコアリング機能で優先すべき商談先リストを自動生成しましたが、管理者や営業が現場感覚で大きく修正を加える必要が生じました。
「あの会社は、先方の経営者同士のつながりが強いから、数字以上に対応を慎重に」という暗黙知が、結局すべて手動のフィルタリングに戻る原因となりました。

クレーム対応が対面・電話に逆戻り

自動応答やFAQボットの導入も進みましたが、厳しい品質要求や緊急性の高いクレームへは「やはり電話での説明が不可欠」だと現場は判断し、最重要クレームは“人手・対面”での即応体制に回帰しています。

アナログ製造業ならではの“人手回帰”の根本原因を掘る

「情緒的信用・信頼」がデジタルだけでは醸成できない

製造業のサプライチェーンは、今でも数年単位の長期取引や、現場の突発的なトラブル時の信用で支えられている部分が大きいです。
特に工場長や購買・バイヤー担当者は、「このメーカー・担当なら何とかしてくれるはず」といった“情緒的信頼”を重視します。
こうした感覚的な信頼感は、自動配信メールやロボットによる対応一辺倒では生まれません。
そのため、重要案件や大口顧客ほど「結局は人対人の調整」に回帰します。

現場特有のリスク回避文化・前例踏襲志向

製造業、とりわけ大手の現場は、「万が一のトラブルを最小化する」ために前例主義・慎重主義が根強いです。
たとえば新しいITツールを導入した際も、「何かあったらとりあえず従前のやり方で…」という“バックアップ対応”が暗黙のうちに運用されます。
これが「せっかく導入したMAが形骸化し、人手に戻る」最大の温床となっています。

熟練者不在の機械的な対応では、顧客の“真の要望”を拾えない

工場視察や技術打合せでは「一見普通の質問、実は重大なサイン」という微妙なニュアンスをベテランが読み取ります。
MAツールやチャットボットでは、こうした“裏の意図”や「緊急度・温度感」を十分にキャッチできず、重要な商談のきっかけを逃してしまうというリスクがあります。

これからの製造業販促とDXの“新しい地平線”

全自動よりもハイブリッド化、現場力×デジタルの最適解

製造業の販促における真の自動化・デジタル化は、「人を減らす」ではなく、「人の質を活かす」ためのデータ活用・ツール設計にかかっています。
ありがちな“全自動化の幻想”から脱却し、「ツールが不得意な領域=人の出番」と明確に切り分けたハイブリッド運用こそが、アナログ業界における現実解です。

たとえば、
・MAツールは「漏れなく・定型的な情報配信」に徹する
・重要なリードや特殊案件は、ベテラン営業・現場購買の目利きを活用する

という役割分担が現実的です。

デジタルの“裏”に回っている現場ナレッジの見える化

ここで重要なのは、属人化した現場知・暗黙知を「再現性ある形」に落とし込むための工夫です。
「なぜこのお客様だけ電話なのか」「なぜこのタイミングで案内なのか」を、現場がナレッジとして共有し、デジタル運用に反映できれば、より全体最適なオペレーションが期待できます。
意図的な振り返りやフィードバックループを仕組み化することが、今後ますます重要になるでしょう。

顧客体験価値(CX)向上への“人の介在価値”を再評価

相手をよく理解し、必要なタイミングで「きめ細かな一手間」をかけられることは、数値化・自動化が難しいですが、BtoB製造業では重要な差別化要素です。
究極的には「人の感性+テクノロジー」の相乗効果が、昭和型の“泥臭い営業力”を進化させるカギだといえるでしょう。

まとめ:昭和から抜け出せない業界に新たな“地平線”を

製造業界の現場に根強く残る「人手主義」は、一見“時代遅れ”に見えますが、実は顧客志向・現場対応力という面で本質的な強みがあります。
今後、MAツールや自動化技術の導入では、「何を機械に、“何を人でやるか”」の明確な仕分けと、属人化ナレッジのデジタル転換、現場との対話的PDCAが不可欠となります。

デジタル導入は「人はいらない」方向ではなく、「人の価値を高める」ためのもの――
古いものと新しいものの“接ぎ木”が、製造業販促の新たな地平線を切り拓くのです。

現場で奮闘するバイヤー、サプライヤー、営業、管理職の皆さんとともに、“人とデジタルの最適融合”という課題に、ぜひこれからも挑戦していきたいと思います。

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