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投稿日:2026年1月28日

産業医の提言がコスト理由で却下される瞬間

はじめに:産業医の役割と現場のリアル

製造業において「安全と健康」は、コスト削減や効率化と並ぶ最重要課題です。

特に産業医の存在は、従業員の健康維持や職場環境改善に不可欠な存在となっています。

しかし実際の現場では、産業医が提案する施策が「コストがかかる」という理由で却下されることも少なくありません。

ここでは、20年以上の現場経験を踏まえながら、産業医の提言がどのような瞬間に却下されるのか、またその背後にある業界構造や意思決定プロセスを掘り下げ、今後どうあるべきかを考察します。

産業医の提言とは何か?現場での事例紹介

産業医の提案の主な内容

産業医の提案は多岐にわたります。

例えば以下のようなものです。

・作業時間の見直しや長時間労働の是正
・化学物質に対する換気設備など環境改善
・熱中症・腰痛・VDT(パソコン作業)対策
・メンタルヘルス推進やストレスチェック頻度増加
・新たな安全保護具や衛生消耗品の導入

それぞれが従業員の健康リスク軽減や事故未然防止を目的としており、現場の安全文化の質を左右します。

現場で実際にあった提案と却下事例

私が現場で経験した例では、夏場の熱中症対策で産業医から「作業中の水分補給タイム」と「大型スポットクーラー増設」の提案がありました。

ところが現場責任者や経理部門から「設備費用が高い」「生産が止まる時間が増えて非効率」という理由で却下されてしまいました。

同じく、有機溶剤使用現場で換気設備増設を求める産業医の提案も「設備更新コスト」「生産レイアウト変更にかかる工事費・工期」の壁に阻まれ、先送り扱いになりました。

このような事例は全国の大手・中小製造現場のあちこちで発生しています。

なぜコスト理由で却下されるのか?昭和的企業風土の影響

短期コスト優先主義の現実

多くの工場では「安全対策は最重要」と標榜する一方、現場での実態は「安全>コスト」ではなく「コスト重視」が根強く残っています。

年間自動車事故ゼロを目指して安全キャンペーンを実施しながらも、費用のかかる改善投資には後ろ向き――という矛盾も決して珍しくありません。

特に昭和時代からの経営層や現場リーダーには「これまで大事故はなかった」「昔は対策なしでも回ってきた」という心理バイアスが働きやすく、追加コストに理由のつく提案はつい棚上げされがちです。

アナログ管理体制がもたらす弊害

現在でも多くの製造現場では、安全・健康対策や労務管理情報が紙ベース、もしくは個別Excel管理で運用されているケースが多いです。

産業医からの提案内容やリスク評価データがデジタルに見える化されず、現場判断や経営決裁者に伝わるまでにフィルタリングや伝言ゲーム化してしまいます。

このため「追加コスト(金額)」のみが強調され、「安全とコストのバランス」や「未来への投資」「訴訟リスク回避」などの論点が曖昧になりやすいのです。

バイヤー・サプライヤーが知るべき現場の論理

バイヤーの立場で考える

バイヤーを志す方や、現役バイヤーが現場判断を知ることは非常に重要です。

というのも、設備投資や安全消耗品の導入は、多くの場合バイヤーが購買決裁に関わります。

経営層や工場長への説明・説得を行う際、「単なるコスト」ではなく「労働基準監督署対応」「従業員モチベーション」「事故時の損失(工場停止コスト、企業イメージダウン)」などの見えにくいリスクも整理して説明する必要があります。

また、従業員の健康問題が高度化・複雑化する中で、バイヤーが産業医と現場の仲介役となり「最小コストで最大効果を発揮する提案」や「段階的導入・多拠点横展開」などのオプションを自ら設計する力も求められるようになりました。

サプライヤーとしての処方箋提案

一方でサプライヤーの側も「顧客がなぜ安全投資に消極的なのか」「どうすれば現場ニーズを顕在化できるのか」「費用対効果の見える化をどのように支援できるか」といった現場理解が不可欠です。

例えば「生産停止時間を最小限に抑えた工事方法」「初期費用を抑えるリース提案」など、現場の実情に寄り添った営業・技術提案によって、コスト障壁を下げることができます。

また、働き方改革やESG(環境・社会・ガバナンス)指標が重視されつつある今、「安全・健康対策=ブランド価値向上」に繋がるストーリーも提案する時代になりつつあります。

ラテラルシンキングで「安全とコスト」を再定義する

見えないコストを数字で語る

今後求められるのは、「目先のイニシャルコスト」だけでなく「事故や病気発生時の沈黙コスト」「優秀人材の流出」「工場停止のサプライチェーン全体損失」といった複層的なコスト・価値を“見える化”し、全社で合意形成する力です。

そのためには、バイヤー・サプライヤー・現場管理職・産業医の四者が同じテーブルにつき、「リスク評価→想定損失額→対策案コスト」の因果関係をERPデータや経営ダッシュボードに落とし込み、ロジカルに意思決定していく仕組みが理想です。

デジタル化と現場コミュニケーションの融合

産業医のレポートや提案履歴、設備リスク診断のデータをデジタルに一元管理し、経営層直下で共有する環境をつくることで、「現場の健康と安全の声」が埋もれず届くようになります。

また、「作業現場×現物×現実」の三現主義を忘れず、現場従業員との定期的な対話を産業医やバイヤーが能動的に実施し、「コスト優先」だけに偏らない意思決定プロセスを醸成することが重要です。

まとめ:コスト理由の却下、その先へ

産業医の提案がコスト理由で却下される瞬間には、「過去から続く昭和的経営体質」と「見えづらい中長期コスト」、「業界全体に根付く現場優先主義」という複雑な構造が隠れています。

しかしアナログ重視の産業界も変革期を迎えています。

デジタル技術とラテラルシンキング(横断的・多角的思考)を融合させることで、健康・安全の投資が「コスト」ではなく「未来への価値創造」であることを説得力と数字で訴求できる時代に突入しています。

バイヤー、サプライヤー、現場マネージャー、産業医――立場の異なる人々がともに共通目標に向かい、「コスト却下」の壁を乗り越える新しい地平線を切り開くことが、これからの日本のモノづくりの現場に必要な進化なのです。

製造業に携わるすべての方へ、現場からの声と知恵を武器に、実践的な安全・健康経営を推進していきましょう。

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