- お役立ち記事
- 工程見直しが品質より生産性を優先される時に起きる破綻
工程見直しが品質より生産性を優先される時に起きる破綻

目次
はじめに ― 製造業の現場で起こる葛藤
製造業の現場では、常に「品質」と「生産性」のバランスが求められます。
しかし現場の実情として、生産性向上を優先するあまり、工程見直しの場面で品質が犠牲になるケースが少なくありません。
私は20年以上、製造現場と向き合い、多様な工程改善や設備導入の最前線に立ってきました。
今回は、業界全体に根強く残る昭和型の思考やアナログな判断基準も交えて、生産性優先主義がもたらす弊害、その背後にある構造、そしてこれからの新しい解決策について深堀りします。
なぜ「生産性優先」になってしまうのか?製造業の現場力学
数字で評価される現場 ― 伝統的な管理手法の呪縛
日本の製造業は、長年にわたり「効率=善」という思想の下、労働生産性やコスト削減を最重要指標としてきました。
現場の管理者は、月次・日次の生産数や稼働率によって評価されます。
そのため、人的な要素やトラブルによる“ムダ”の排除が最も重視されるのです。
しかしこの数値至上主義が、ある種の“現場のムリ・ムダ・ムラ”を生み出しています。
「納期に間に合わせるために工程を短縮する」「検査工程を簡素化する」といった、短期的な効率化が行われがちになります。
トップダウン型経営と現場の声のズレ
一方で、経営層や管理職は“生産性向上”という掛け声を現場に一方的に求めることが多い傾向にあります。
現場作業員は毎日の工程を直接担い、品質リスクを肌で感じていますが、経営層との情報の齟齬や距離感から、その危険性が過小評価されがちです。
現場の声が上層部に届かず、「現場で何とかしろ」とプレッシャーだけが増す。
それが“品質より生産性優先”の文化を助長しています。
昭和型マネジメントとアナログな工程管理
加えて、紙や口頭による指示、目視検査など、属人的・アナログ的な管理手法が根強く残っている現場もまだ多いのが現実です。
これが属人的な判断や経験則による工程削減を招き、安全や品質の保障が“あうんの呼吸”や“空気を読む”ことでしか維持されない組織体質を築いています。
生産性優先が引き起こす「品質崩壊」のリアル
検査工程の簡素化がもたらす見えない瑕疵
現場でコストカットやスピードアップのため、工程の“簡素化”が安易に行われるケースは非常に多いです。
よくある例として、
・目視検査工程の省略
・測定回数の削減
・設備の自動化による人的チェックの削減
があります。
一見、合理化・自動化によって工程がシンプルになったように見えますが、実は初期不良や微細な異常を見逃すリスクも飛躍的に高まります。
ラインを止めずに流し作業で進めた結果、出荷後に顧客からのクレームやリコールが発生する。
このような「後戻りできない失敗」が発生する原因は、工程簡素化による品質担保力の低下にあります。
現場の“暗黙知”が崩れた時、組織が混乱する
製造現場には、ベテランオペレーターによる「目利き」や「勘」といったものが、長年業務品質を守ってきた歴史があります。
しかし属人的な品質確保は、ベテランが退職した瞬間や、急速な生産拡大で現場人員が入れ替わる瞬間に、簡単に機能しなくなります。
「なぜこの工程は必要なのか?」という本質的な問いが置き去りにされたまま、「前例がないから」「現場が回らないから」と安易に省略される。
そして本来必要な“守るべき品質基準”を明文化しないまま、暗黙知が流出した時に、組織全体で対応できなくなる破綻が起きます。
データドリブンから遠い“帳尻合わせ”の現実
昭和的な現場では、問題が発生しても「なんとかする・ごまかす」文化が根付いています。
データや根拠による改善よりも、「現場の目で確認」「上司の指示通り」といった精神論、帳尻合わせの姿勢が優先されてしまいます。
そのため、不良品の発生原因やロスの分析は十分に行われず、属人的でアナログな“対症療法”ばかりが繰り返されます。
これが結果として工程のブラックボックス化を招き、品質の再現性が損なわれてしまうのです。
現場起点で求められる「本質的な改善」とは何か
品質イノベーションと工程の“見える化”の重要性
本来、工程見直しの本質は「同等もしくはそれ以上の品質を、より高効率で実現すること」に他なりません。
そのためには、現場に埋もれた暗黙知や“なんとなく”に頼るのではなく、データや根拠に基づくプロセス設計が不可欠です。
デジタル化・IoT化による工程の“見える化”は、工程ごとに発生するロスや正確な品質変動要因の可視化につながります。
たとえば、
・自動化ラインにセンサーを設置し、微細な異常や振動データをログ化する
・各生産ロットごとに検査データを蓄積し、統計的に異常を特定
・紙の帳票ではなく、クラウド上でリアルタイム共有できる作業手順書へ変革
こうした工程見直しこそが、品質担保と生産性向上を両立させる鍵となります。
“作業者目線”での業務フロー設計
工程を見直す際、管理者や現場作業者が一体となって業務フローのボトルネックや、効率・品質両面の課題箇所を洗い出すことが大切です。
パレート図や工程FMEAなどの定量分析だけでなく、現場従業員のヒアリング、実作業観察から「なぜここで品質トラブルが起きるのか」を掘り下げましょう。
現場で“本当に必要な工程は?”“不要な二重チェックやムダなやり方は?”と問い直すことで、制度疲労した古い工程思考から脱却できます。
トライ&エラーとPDCAサイクルの徹底
現代の製造業は、単なる効率化よりも「失敗を前倒しで検証し、小さく改善を積み重ねる」力が求められます。
現場全体で小さなトライ&エラーを積み重ね、その都度データでフィードバックする仕組み作り。
これが“工程のブラックボックス化”“属人化”から抜ける第一歩です。
昭和型の“頑張ってなんとかする”発想から、科学的根拠に基づいて仕組みを変革し続けるプロセス志向へと進化する必要があります。
サプライヤー・バイヤー双方が「品質より生産性」を越えるためには
バイヤー目線:納期やコストだけでなく品質維持の対話を
バイヤー・購買部門は「コスト・納期・スピード」でサプライヤーを比較しがちですが、真のパートナーシップを築くには“工程改善の中でどこまで品質保証に投資しているか”も評価軸に加えるべきです。
現場での品質管理体制や工程改善のストーリーを積極的にヒアリングし、単なる「値切り」だけではなく、付加価値としての品質維持に協力体制を求める関係性が、これからの調達現場には不可欠です。
サプライヤー目線:安易な工程削減提案はリスクをはらむ
サプライヤー側が競争に勝つためには「コスト・納期短縮」ばかりを訴えるのではなく、“工程削減によるリスクとその対策”をデータで説明できることが信頼獲得の近道です。
たとえば、工程短縮によってどのような検査ロスや品質トラブルが発生しやすくなるか。
そのリスクに対してどんな監視手法やフォローアップ体制を敷いているかを論理的に伝えましょう。
現場作業者や品質管理者まで巻き込んだエビデンスを提示することで、「この会社なら工程変更しても大丈夫」という安心材料をバイヤーに示せます。
共通基盤としての品質文化と、オープンな現場対話
本質的な工程見直しのためには、バイヤー・サプライヤー双方の現場間でオープンな対話と情報共有が重要です。
「なぜこの工程を削減したいのか」「そのリスクは何か」「どんな定量的な根拠や改善施策があるのか」
こうした踏み込んだ対話が、業界全体の品質文化の底上げにつながります。
単なる「成果主義・安値主義」に留まらず、現場力を合わせて“持続可能な品質競争力”を目指す姿勢が、これからの製造業には求められています。
まとめ ― 昭和的効率主義から現代型ものづくりへの転換
工程見直しが「品質より生産性」を優先する現場では、必ず何らかの破綻や品質崩壊のリスクを内包しています。
長年培われてきた昭和的な“効率=善”という価値観は、もはや現代のグローバル競争の中では通用しません。
本当に必要なのは、現場起点で「なぜこの工程が必要なのか」を科学的に問い直し、一方的な効率化や省力化ではなく、根拠に基づいた品質維持と生産性向上の両立です。
現場と経営の間で本音の対話を育て、クラウドやIoTなど新しい技術も活用し、データと人の智慧を融合した“現代型ものづくり”へシフトしましょう。
バイヤー・サプライヤー双方が同じ“品質文化”を共有し、現場力を生かし切ることで、持続可能な産業競争力が生まれます。
今この瞬間が、昭和から令和へ―製造現場のパラダイムシフトの分岐点にほかなりません。
ノウハウ集ダウンロード
製造業の課題解決に役立つ、充実した資料集を今すぐダウンロード!
実用的なガイドや、製造業に特化した最新のノウハウを豊富にご用意しています。
あなたのビジネスを次のステージへ引き上げるための情報がここにあります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが重要だと分かっていても、
「何から手を付けるべきか分からない」「現場で止まってしまう」
そんな声を多く伺います。
貴社の調達・受発注・原価構造を整理し、
どこに改善余地があるのか、どこから着手すべきかを
一緒に整理するご相談を承っています。
まずは現状のお悩みをお聞かせください。