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採用支援の改善が応募者体験を悪化させるケース

目次
はじめに:採用支援改善がもたらすジレンマ
昨今、製造業において人材不足はますます深刻化しています。
デジタル化や自動化の波が押し寄せても、現場で活躍する熟練の技能者や、新しいプロセス・設備を担うエンジニアの確保が、事業の競争力を左右します。
そのため、多くの企業が「採用支援」体制の強化や採用フローの効率化に力を入れています。
しかし、同時に現場では「採用支援の改善が応募者体験(キャンディデート・エクスペリエンス)を悪化させているのではないか」という声が聞かれるようになっています。
急激なシステム刷新や外部委託によって、あるはずの「温かみ」や「現場との距離」が損なわれてしまうケースが増えているのです。
本記事では、なぜ採用支援の改善が応募者体験を悪化させてしまうのか、現場で起こっている具体的な事例とともに、製造業ならではの課題や今後の打開策をラテラルシンキングで深く考察します。
昭和的価値観が根強く残る製造業の採用現場
採用の現場に残るアナログ慣習とその功罪
「現場を見ないと人柄は分からない」、「まずは履歴書を手書きで」といった昭和型の価値観は、今なお多くの製造業現場で根強く残っています。
これらの慣習は一見時代遅れに映りますが、実は現場特有の「人を見る目」「業務に対する人間力重視」といった製造業ならではの要素を反映しています。
バイヤーや生産管理、品質保証など、工程の節目を担う重要な職域では、書類データやスキルだけでなく、対面での熱量、話し方や現場での所作が重視されています。
しかし、こうした伝統的な価値観は、デジタル化や外部委託による採用支援強化によって希薄化しつつあります。
「効率化」が生んだ応募者体験の悪化とは
採用支援の改善の名のもとで進められることが多いのは、応募プロセスのデジタル化やAIマッチング、選考プロセスの画一化です。
これらは人事側の業務工数削減や母集団拡大、データ活用といった観点では好ましい効果を生んでいます。
しかしその裏側で、応募者から見ると以下のような不満が生じています。
– 書類選考の通過理由・不通過理由が機械的で納得感に欠ける
– 誰と面接するか分からず、現場感がつかめない
– 定型メールのみの連絡で、企業の「顔」が見えない
– 自動配信されるだけで、本当に自分に関心があるのか感じられない
製造業においては「職場の空気」や「現場の人間関係」が重視されるため、こうした応募者体験の悪化はイメージダウンや志望度の低下を招きやすいのです。
現場目線から見る「採用支援の罠」
製造現場ならではの採用ニーズの本質
ものづくりの現場では、単なるスペックマッチングだけではなく、「現場で長く活躍できそうか」「職場の文化になじめるか」といった人間的な相性が極めて重要です。
たとえば、生産管理や調達の分野であれば、サプライヤーとの交渉力はもちろん、社内関係各所とのコミュニケーションや信頼関係の築き方が求められます。
また、品質管理職や現場オペレーターは、突発的なトラブルでも冷静さを保てるかどうか、一瞬の判断力や柔軟な対応力といった「見えない力」が問われます。
これらの資質は、AIマッチングやオンライン面談だけでは把握できないものです。
デジタル化が生む「すれ違い」
2020年代に入り、多くの製造業メーカーでオンライン面接やWeb適性検査が当たり前になりました。
新卒採用だけでなく、中途採用やシニア人材の再雇用でも「まずはオンラインで…」が標準です。
しかし、工場現場の管理職やベテラン作業員の中には、「直接会わないと分からない」「現場の雰囲気や匂いが伝わらない」と感じる人が少なくありません。
現場サイドは「Web面談で好感触でも、配属後にすぐ辞めてしまう」「採用したい人材が選考フローで脱落してしまう」といった課題に直面しています。
つまり、採用支援の効率化が、肝心の“職場定着率”や“即戦力人材の獲得”という最重要KPIの達成に逆行する現象が起きているのです。
「選ばれる企業」としての本質的なブランディング
製造業現場は、「硬派」なイメージが強いため、ともするとブランディングの意識が希薄になりがちです。
しかし、採用活動のあらゆる接点は、今や「企業そのものの価値を測る場」となっています。
特に若い世代の応募者は、採用選考プロセスそのものを通じて「この会社は自分を大切にしてくれているか」「働く人や価値観は自分に合うか」を強く見ています。
したがって、効率化だけに目を向けず、企業独自のストーリーや、現場の魅力・働きがいをいかに伝えるかが、応募者体験を左右する鍵となります。
生産性向上の裏で失われる「人らしさ」
製造業特有の“コトバにならない価値”
調達購買の現場では、サプライヤー各社との長年の信頼関係がビジネス基盤となっています。
単なる価格や納期のみならず、「何かあった時にどれだけ柔軟に対応してくれるか」「困った時はどんな助け合いができるか」といった、目に見えない価値が重視されます。
これは、採用の現場でも全く同じです。
書類やスペック上では伝えきれない「ものづくりへの情熱」や「現場の課題を共に乗り越えたい想い」をいかに伝えられるかが、質の高い採用活動を実現する上で不可欠です。
しかし、採用支援や人事業務のシステム化・外注化によって、このような“人らしさ”が失われつつあります。
社内外のコミュニケーション断絶が招く危機
採用担当部署と現場、さらには外部のRPO(採用アウトソーサー)や人材紹介会社との連携のズレは、応募者体験にも直結します。
– 面接日程調整のレスポンスが遅い
– 現場担当者へのフィードバックパスが機能していない
– 「なぜこの人に内定を出したのか」の意思統一が図れていない
こうしたケースでは、「この会社は組織がバラバラに動いている」「自分の働き方やキャリアをちゃんと考えてくれないのでは」と応募者の不安感をあおります。
そもそも製造業の職場は多様なチームの連携があってこそ強みを発揮します。
採用プロセスでも、単なる業務分担ではなく“現場と人事・経営が一体となった採用チーム”としての動きが求められるのです。
昭和からの脱却と現代的採用の融合がカギ
現場が実感できる「リアリティある接点」の創出
現場目線で見ると、「入社前に現場見学を設ける」「職場社員との座談会の時間を確保する」といったアナログ志向の取り組みも、今こそ改めて見直されるべきです。
特に製造職や技術職の場合、現場の音や匂い、そこで働く人々の表情や空気感はWeb説明会やオンライン面談だけでは到底伝えきれません。
実際、某大手メーカーでは、内定後の現場体験プログラムを設けたり、現場社員によるカジュアルな職場紹介動画を積極的に活用したりすることで、選考途中での辞退率を大幅に下げた例が出ています。
デジタルとアナログの最適なハイブリッドこそが、応募者体験向上の勘所となります。
「採用支援=現場支援」という意識転換を
採用支援の本質は、人事・経営の工数削減だけでなく、最終的には現場や工場長、職場リーダーの「人材戦略を共に創る」役割にあります。
つまり、採用支援担当者や外部のパートナーは「現場に最適な人材」を「現場と一緒になって探す」サポーターであるべきです。
現場の生の声を積極的にヒアリングし、その声を採用基準や選考フローに柔軟に落とし込んでいく。
これにより、応募者体験の質も高まり、結果的に優れた人材が集まりやすくなります。
まとめ:新旧のいいとこ取りで「選ばれる工場」へ
製造業の現場に根付く昭和的なアナログ文化は、時に時代遅れと揶揄されがちですが、実はそこにこそ“人を大切にする心”や“現場力を高める知恵”が詰まっています。
一方で、デジタル化や採用支援の合理化も否応なく進める必要にも迫られています。
採用支援の改善が応募者体験の悪化につながらないよう、「人の温かみ」と「効率性」を融合した、新しい現場主義の採用支援を目指しましょう。
そして、バイヤーを目指す方、サプライヤーの立場でバイヤー思考を知りたい方も――
ものづくりの現場で培われてきた“人を見る目”や“現場感覚”を、時代の変化の中でも大切にし続けてほしいと願います。
採用は現場への最大の投資です。
変化を恐れず、現場を主役とする採用支援のあり方を、これからも一緒に探っていきませんか。