- お役立ち記事
- 人手不足問題をシステムで解決しようとしてつまずく瞬間
人手不足問題をシステムで解決しようとしてつまずく瞬間

目次
はじめに:人手不足と製造業の現場
日本の製造業が直面する深刻な課題の一つに「人手不足」があります。
人口減少による若年層の減少や高齢化、さらには都市部への人口流出により、地方工場では従業員の確保そのものが大きな問題となっています。
これを受けて多くの企業では、ITシステムや自動化技術の導入へと舵を切っています。
「現場の負担を軽減し、少ない人数でも安定して生産を続けていく」ことを目指しているのです。
しかし、システム化を図ろうとしても、現場特有の事情や昭和時代から残る“文化の壁”で思わぬつまずきを経験するケースは後を絶ちません。
本記事では、現場目線で「人手不足をシステムで解決しようとする際につまずく瞬間」と、その乗り越え方を、過去の経験や業界動向も交えて深掘りしていきます。
人手不足解消に向けたシステム導入の実態
工場で検討される主なシステムとは
人手不足への対策として、現場では下記のようなシステム・IT活用が多く検討されています。
・生産管理システム(ERP、SCM など)
・IoT端末を活用した設備の稼働監視・自動帳票作成
・AI画像解析による品質検査自動化
・工程進捗管理の自動化
・購買・調達業務の自動化(EDI、電子入札 など)
これらは業務効率の向上と人依存の脱却を目的としています。
システム導入で得られるはずのメリット
システム導入が上手くいけば、「記録・報告書作成の省力化」「属人化作業の削減」「情報共有の高速化」「ヒューマンエラー抑制」など、多くのメリットがあります。
少人数でも工程を回せたり、現場の負担が軽くなって残った従業員の定着率もアップする、といった好循環を描くことも可能です。
昭和から続く“文化”がつまずきを生む理由
現場の“すり合わせ文化”とシステムの相性
私は現場で20年以上働く中で、昭和から脈々と受け継がれている「人に頼る文化」「現場力への過度な信頼」「帳票や伝票の“はんこ文化”」の強さを何度も感じてきました。
システム導入にあたって、こうした“職人技”や“暗黙知”、阿吽の呼吸を前提とした運用が、大きく立ちはだかるのです。
「これまでこうしてきたから」「不具合時の現場の動きは書面に載せきれない」「人が見ればワカる」という言葉は、どの工場でも必ず聞くものです。
結果、システムベンダー主導で進められたIT化が現場との議論不足で進み、「現場に合わない」「入力が面倒」「現場の動きと合致しない」と反発や形骸化を招きます。
アナログな現場ワークとデジタルのギャップ
多品種少量生産や変化の激しい現場では、柔軟な判断や微調整が日常的に求められます。
これが「定型業務ありき」のシステム設計と根本的にズレてしまうことも多いのです。
例えば、実際の作業工程では複数の工程を一人が兼務したり、計画変更が飛び込んできたり、ラインの“融通”で一時的な段取り替えが発生することが珍しくありません。
その全てをシステムに反映しきれないため、「結局、エクセルや手書きが一番早い」「システムは動きについてこられない」と現場の信頼を失ってしまうのです。
最もつまずきやすい瞬間とは?
1. 画面入力の増加で「手間が増えた」と現場が声を上げる瞬間
システム導入の際、「これまでの紙伝票やホワイトボードで管理していた作業を、項目ごとに端末へ打ち込む」ことになる場合が多いです。
とくに高齢のベテラン作業員やPCに不慣れなスタッフには「余計な仕事が増えた」「帳票なんて現場で見ればわかる」と反発が起きやすくなります。
2. システムに現場の“例外処理”が網羅できず、負荷が逆に増す瞬間
工程変更や緊急対応、イレギュラー発注が発生したとき、システムに必要事項が登録できない、システムでは本来禁止されている手順を現場で“脱法”している、などの理由で、現場作業がかえって煩雑に。
こうして「紙とデジタルの二重管理」が常態化し、現場の不満が頂点に達します。
3. サポート体制の不備で現場が混乱する瞬間
現場でシステムトラブルや使い方の疑問が発生しても、IT部門やシステムベンダーからの十分な支援がない場合、「システムがあっても現場は困るだけ」とネガティブな声が増大します。
このタイミングで現場がシステムを“使わなくなる”ことが多いのです。
4. 経営層と現場、ベンダー間の意思疎通不足が問題化する瞬間
経営と現場の温度差、そして現場の実態を深く知らないベンダーの設計とのミスマッチが露呈するのもこの瞬間です。
「現場は大事にしているが、現場が望む形になっていないシステム」が氾濫し、結局「元のやり方に戻ろう」となるケースを何度も見てきました。
人手不足とシステム活用の真の“処方箋”とは
ラテラルシンキングで壁を突破する視点
「人手不足を埋めるためにシステムを導入する」のではなく、「今いる現場の人たちの“真の困りごと”が何なのか」から出発し、システムもしくはアナログも“目的達成のための手段”と考えることが重要です。
業務そのものの流れや工程をラテラルに分解し、「本当に人が担うべき価値ある仕事」と「システムが担う単純繰り返し部分」を冷静に切り分けます。
課題を棚卸し、現場と経営が納得できる共通認識化を
現場のキーマンを含む多職種横断ワークショップを設け、現行業務のボトルネックやムダ、属人化点を“可視化”します。
たとえば、紙帳票のルート、二重三重の記録、現場で暗黙に承認している手続きなどを全て洗い出し、「なぜその作業になっているか」「本来の目的は何か」と根本を対話します。
この時点でベンダー任せではなく、自社の課題に本質的に向き合うことが、後の失敗低減に繋がります。
段階的なシステムの“現場慣らし”と改良サイクルを回す
一気に全業務をシステム化せず、小さな単位・代表ラインでトライアル運用し、現場意見を反映した“現場目線のチューニング”を繰り返します。
システム画面や入力方法、運用ルールの見直しを何度も行い、現場が「使って良かった」と自発的に思えるポイントを徐々に増やします。
「とりあえず部分的にでも成果が出せればOK、まず一歩」の姿勢で、成功体験を積み重ねるのが大切です。
“デジタルとアナログの共存”こそが今の業界の現実解
昭和型の現場では、100%デジタルを現場運用に移行するのは想像以上に壁が高いです。
無理にアナログ排除をせず、「現場の安心感」が得られる部分には紙伝票やホワイトボードも並行活用しつつ、データ連携や分析だけをシステムが行う形を選ぶ企業が増えています。
手書き帳票を“スマホで撮影→自動文字起こししてシステムへ”といった、現場負担を増やさない工夫も生まれています。
バイヤー・サプライヤー双方から見たシステム活用の本質
バイヤー視点:調達購買業務効率と新しい価値創出へ
調達・購買業務でのEDIや発注システム化も、バイヤー側の入力負担アップや運用現場との連携ミスにより「効率化どころか手間が増えた」と苦戦する現場を多く見てきました。
本来、バイヤーの力は「良いサプライヤー発掘」「トラブルの未然防止」「現場支援提案力」に発揮されるべきです。
単純な事務作業をシステムへ寄せ、バイヤー本来の業務価値を最大化する視点でのデジタル活用こそ、本質的な活用法だといえるでしょう。
サプライヤー視点:顧客の“困りごと”解決提案力の育成
サプライヤー側も、単なる「納期通りの物提供・伝票処理」から、顧客の業務全体課題の解決提案、つまり「現場目線の真のサポート」が今後求められていきます。
バイヤー側の現場課題や“実際の困りごと”を知ることで、どこにシステム化ギャップが発生しているのか、どうすれば顧客業務を根本から支えられるかのヒントになります。
自身の現場でも、顧客とのコミュニケーションで得た“生の課題”をフィードバックし、商品やサービスの進化に活かせる組織文化が必要です。
おわりに: これから現場とシステムの共生へ
製造業の人手不足は、避けて通れない社会課題です。
システム導入は万能の解決手段ではありませんが、「現場の本当の困りごと」に寄り添い、「現場の知恵×デジタルの効率化」の両輪で現実解を探すラテラルな思考こそ、これからの製造業の新たな地平線を拓くカギとなります。
現場にいるからこそ分かる“つまずきの本質”を的確に見抜き、現場主導でシステム化を進め、「もっと働きたい」「この会社で続けたい」と思える職場づくりを、皆で目指していきましょう。
今この記事を読んでいるあなたが、現場・購買・サプライヤー、どの立場であっても、主体的に“現場をより良くしていくためのアイデアの種”をぜひ現場に持ち帰り、対話を始めてみてください。
ノウハウ集ダウンロード
製造業の課題解決に役立つ、充実した資料集を今すぐダウンロード!
実用的なガイドや、製造業に特化した最新のノウハウを豊富にご用意しています。
あなたのビジネスを次のステージへ引き上げるための情報がここにあります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが重要だと分かっていても、
「何から手を付けるべきか分からない」「現場で止まってしまう」
そんな声を多く伺います。
貴社の調達・受発注・原価構造を整理し、
どこに改善余地があるのか、どこから着手すべきかを
一緒に整理するご相談を承っています。
まずは現状のお悩みをお聞かせください。