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人が足りない状況で新しい業務を増やす判断の是非

目次
人手不足が続く製造業の現場における新業務導入のリアル
製造業の現場では、慢性的な人手不足が話題となっています。
経済産業省の調査でも、今や大手のみならず中小企業の現場まで「人材が採れない」が共通の悩みです。
このような状況でも、新しい案件や顧客ニーズ、サステナビリティ対応、品質管理強化など、日々「新しい業務」を増やす必要性が問われます。
しかし、本当に今「新たな仕事」を現場に追加して良いのでしょうか?
この課題について、現場目線で深掘りし、その判断の是非を考えます。
人手不足下での新業務導入は「必要悪」か?
現場では何が起きているのか?
人手不足の現場では、「今でも手一杯なのに」「現有戦力では回しきれない」といった声が要員から上がっています。
追加業務が増えるたびに、誰かが“皺寄せ”を受けるのが当たり前の状況です。
たとえば品質文書のデータ化、トレーサビリティ情報の拡充、新機械導入に伴う段取り設計など、業務改善やDX推進の名目で「増えるタスク」は数知れません。
一方で、追加される業務の多くは、モノづくりの信頼性や受注増に不可欠なものも多いのが現実です。
現場には「やらなければ会社が成長しない・生き残れない」という重圧もあります。
なぜ“やめる”・“減らす”は難しいのか?
昭和から引き継がれたアナログ慣習や、社内文書の多重管理など“抜本的改革”が難航しています。
「今までやってきたから」「誰かが必要としているかもしれない」そんな曖昧な理由で、不要な業務や定型手続き、帳票作成が温存されがちです。
加えて、ルーティン化された業務は、その成果や必要性が数値で見えにくい点も“やめにくさ”を助長しています。
また、現場スタッフが多能工化されている場合、特定メンバーの離脱や交代が「業務消失」よりも「負荷分散」に繋がっていることも理由の一つです。
判断のカギとなる視点
1. 業務追加の「理由」「目的」を徹底的に明文化する
新しい業務の追加には、その“本質”を明確に言語化することが大切です。
「顧客要望だから」「監査指摘があったから」だけでは不十分です。
“なぜ”その対応が必要で、“いつまでに”“誰が”“どの程度”やるべきなのか、現場レベルに落とし込む必要があります。
また、その業務が「どの程度売上や利益、リスク低減など経営に寄与するのか」を数値化する意識も重要です。
2. 実施前に「やめる」「減らす」業務をセットで検討する
追加する業務があれば、並行して「やめられる業務はないか」「アウトソーシング可能か」「簡素化・自動化できる工程はないか」必ずセットで検討するのがベストです。
例えば、出荷前検査票が紙で二重管理されている現場の場合、新しい検査項目を追加するのではなく、現行の票を統合・簡素化するだけで大幅に負担が減ることもあります。
3. “一時的”“試行”の枠組みで運用、効果検証で見直す
追加業務は一度始めたらなかなか止められません。
ですが、「まず1か月だけ試し、負荷と効果を数値で振り返る」「POC(概念検証)として暫定導入する」といったステップも有効です。
現場の声を拾い上げ、事実に基づいて“続ける/中止する”を決めやすくなります。
現場が抱える“やる気の壁”をどう崩すか
新しい業務が増える時、人は少なからず「やらされ感」を持ちます。
特に人手不足下では「これ以上ムリ」とネガティブになりがちです。
大切なのは、「現場が楽になる/収入に繋がる/成長できる」など、追加業務が自分たちにとってプラスになる側面を伝え続けることです。
たとえば新しい自動化装置の管理業務が負荷増と映る時、効率化による作業時間短縮や、「高度な業務にチャレンジでき、スキルアップを図れる」と積極的側面も示しましょう。
現場メンバーを早い段階から巻き込み、要望や懸念を聞き取ることで、不安要素を減らし「自分たちの業務」という納得感を醸成できます。
“バイヤー”や“サプライヤー”の立場から見た現場変化
バイヤーを目指す方やサプライヤー側としては、「現場の負荷感」を把握して交渉や提案を行うことが成功のカギになります。
例えば調達側なら、「現場が余計な業務で苦境に陥っていないか」「新商品導入でどんなサポートが必要か」といった配慮が重要です。
サプライヤーとしては、「追加業務で現場が困るなら、納入部品の管理票やトレース情報を電子化する」など提案型のサービス提供が、取引深耕につながります。
現場を変えるラテラルシンキング~新発想で突破せよ~
“業務を足し算”から“引き算”へ
「必要だから追加する」だけでなく、「いま本当に必要なものか?」と疑う姿勢が重要です。
海外工場のように「業務棚卸し」を定期的に実施し、稼働率や付加価値で業務を仕分けるアプローチを導入するのも効果的です。
デジタル化・自動化も「現場の負担を増やすもの」ではなく、いかにアナログ業務“撲滅”の起爆剤にするかという視点で発想してみましょう。
現場“外”からの視点を組み込む
モノづくり現場にどっぷり浸かっていると、業務の“非常識”や“無駄”に気づきにくい傾向があります。
第三者監査や、新入社員・女性・外国人スタッフなど多様な目を活用することで、思わぬ無駄や改善案が浮上することも多いです。
経営層や本部、あるいは顧客の課題と現場の負荷の“最適着地点”を探すことが重要です。
人が足りない時こそ、業務見直しのゴールデンタイム
人手不足の嘆きが全国を覆っていますが、実はこの状況こそ「現場の既存業務をゼロベースで見直す最大のチャンス」と捉えることができます。
追加業務を安易に受け入れるのではなく、必要な業務は続けつつ、根拠の薄いルール・惰性的な手順を徹底見直ししましょう。
経営・間接部門は現場に負荷を丸投げするのではなく、現実的な運用方法や“やめる意思決定”にもコミットすべきです。
バイヤー、サプライヤーを目指す方も、この「現場の本音と苦労」に寄り添うことが信頼構築への第一歩となるでしょう。
まとめ:人の時間は有限、より価値ある“本業”へ力を注ぐべき
人手が足りないからこそ、現場の“本来やるべき仕事”を明確にし、やめる決断もしなければなりません。
新しい業務を増やすか否か、その判断基準は「現場の生産性や安全性向上」と「本当にお客様や会社にとって不可欠かどうか」に徹底的にこだわるべきです。
工場自動化・デジタル化も手段であり、目的ではありません。
この記事をきっかけに、ご自身の会社や現場で「本当に必要な業務とは何か」を今一度見直してみてください。
製造業の現場は“人手の補充”だけでは変わりません。
カイゼンは今、この瞬間から始められるのです。