タイダイTシャツ印刷で地色干渉を防ぐための白ベース厚と露光設定

はじめに：製造業×アパレルプリントの実践知 ― タイダイTシャツへの深いまなざし

タイダイTシャツ――鮮やかで自由な発色、多様な表現が世界中のトレンドとして復権しています。
ビジネスとしてもアパレルプリントの分野は大きな成長を見せており、OEM生産、D2Cブランド、小ロット多品種生産などの現場で技術的な相談が絶えません。

そんな中、「地色干渉で思い通りに柄が浮かび上がらない」「白ベースの配分や露光設定がよくわからない」といった声が多く聞かれます。
昭和時代から続くアナログ業界ならではの“職人の勘”に頼る現場もまだ少なくないですが、データと理論を融合した知見を持てば、失敗を最小限にしながら生産性・品質・効率が大きく向上します。

今回は、製造業の現場で使えるラテラルシンキングを駆使し、「タイダイTシャツ印刷で地色干渉を防ぐための白ベース厚と露光設定」について、バイヤーにもサプライヤーにも役立つ実用記事をお届けします。

タイダイTシャツの地色干渉とは ― 色鮮やかな発色を妨げる見えない罠

タイダイTシャツは、商品自体にランダムな地色（布地自体の染色）が入っています。
この地色の上からスクリーン印刷を行う場合、インクの乗りや発色が大きく影響を受けます。
特にホワイト（白）ベースはいわゆる「下地」として使われることが多く、ベースとなる下地の印刷が不十分だと、思い通りの発色が得られません。

実務でよく起こるのが“色干渉”です。
これは「地色が濃い部分では印刷カラーが沈む」「白インクの乗りが悪くムラになる」など、仕上がりに不満が残る現象です。

昭和時代の職人ノウハウなら「勘と経験」、でも令和の現場では再現性と効率と高品質が求められます。
製造現場で地色干渉と戦うには、「下地＝白ベース」の厚みや品質を徹底的に見直すことから始めるべきです。

白ベースの意義：なぜ厚みが重要なのか

なぜ白ベースが必要なのか？

白ベース（ホワイト下地）は、プリントするインク本来の色を発色させるための「キャンバス」的な役割を持っています。
特にタイダイのような濃淡・ムラの強い地色生地では、白の下地が無いとデザインが地色に負けてしまうことも多々あります。

白ベースが薄い→地色の影響が強くなり、仕上がりが沈む・ムラになる
白ベースが厚い→発色は良くなるが、ゴワつきや割れなどの別トラブル

そういった葛藤の中で、「最適な白ベース厚」を掴むことが大きなポイントになります。

厚み設定の勘所 ― 実際の現場ノウハウ

実際に大手アパレルOEMや自社ブランドの工房など現場で相談を受けるポイントをリストアップします。

• 白インクは必ず2回刷りを推奨（1回ではほとんどの場合ムラが出る）
• 薄手のタイダイTシャツの場合、1回目＋フラッシュ乾燥→2回目で均一に厚みを稼ぐ
• 厚盛りしすぎるとパキパキに割れる・プリント面が固くなるので要注意
• スクリーンのメッシュ（目の粗さ）は80～120（白インクの場合）を使い分ける
• インク粘度やリターダー調整も細かく確認
• 乾燥プロセス（フラッシュユニットなど）でベースの沈み・膨張抑止

ベテラン現場ほど“職人の勘”がものを言いますが、データで記録・検証することが今の時代では重要です。

露光設定の罠 ― 「いい版」を得るための基礎知識と実践ポイント

スクリーン印刷のキモは「露光＝版づくり」にあります。
露光が甘いと、白ベースで使用する粒子が大きいインク（隠蔽力の高いタイプ）は目詰まりや版破れ、ぼやけたプリントになりやすいです。
逆に露光しすぎると、インク通過性が悪く、インクがしっかりと抜けません。

製造現場での露光設定の定石

• 白ベース用の乳剤は「厚盛りタイプ」「硬膜・中膜タイプ」を選定
• タイダイTシャツの地色ムラに負けないよう、露光テストは3パターンほど推奨
• 露光時間は
  基準値（乳剤メーカー推奨値の80%）
  基準値＋10%
  基準値＋20%
  で比較し「固さ／抜け」で最適値を洗い出す
• 版は「刷りテスト→洗浄→再刷り」で細かく状態チェック

現場に馴染みの深い“焼き込み”も、メーカー規格値に忠実にデータを記録しておくことが再現性・時短のコツです。

地色干渉を最小化するための実用フロー【段階別整理】

昭和時代はどうしても人海戦術と勘・根性の世界でした。
現在はデータと経験則が融合する現場も増え始めています。
実用フローとして段階別に見直しましょう。

1. 生地のプレ処理／プレス処理の最適化

タイダイTシャツは素材自体が“個体差だらけ”です。
プリント環境を揃えるため、可能な範囲で静電気防止やホコリ除去、プレプレス（加熱圧着）など、可変要素を均一化しておきましょう。

2. 白ベース厚みテストの実施

Aパターン：標準2回刷り＋フラッシュ（推奨）
Bパターン：1回＋厚盛り高密度（要割れ注意）
Cパターン：極薄1回刷り（ダメな例も記録）

少し面倒でも、ロットごとにサンプル検証してデータを蓄積。
これを積むことでどんなタイダイTシャツにも“再現性ある品質”を出せるようになります。

3. 露光テスト＆版管理の徹底

「今回はどの乳剤でどの露光時間・どのメッシュで刷ったか」は、工場・現場で必ず記録しましょう。
露光ムラが出た際のリカバリーに直結します。

4. 印刷工程での品質ガイド化

品質トラブル（沈み・ムラ・割れなど）が発生したら、必ず現品・版ともに詳細を記録し「どの厚み・露光でどうなったか」を社内データ化します。
これが“昭和ノウハウ脱却”の近道です。

サプライヤー／バイヤー／現場担当者、それぞれの考えるべきこと

サプライヤー（プリント工場・加工業者）への提言

• 顧客から支給されるタイダイTシャツの「個体ごとの濃度」「ロットばらつき」を必ず確認・報告
• 最初のロットで必ずベース厚み・露光・刷り見本をバイヤー側と共有する
• プリント仕様書やデータベース化によって再現性を高める

バイヤー（発注担当・デザイナー）への提言

• サプライヤー側で地色が干渉するリスクを正直に伝えてもらうこと
• 過去実績やサンプルで“最適な白ベース厚・露光”のパターンを開示してもらい、仕様可視化する
• 高発色重視なら、なるべく淡色タイダイ／下地移染が少ないボディも視野に

現場担当（プリント職人・品質管理）への提言

• 露光・ベース厚みを変えたサンプルプリントを必ず現物で比較テスト
• スクラップ・ミス品も必ず記録・写真保存してナレッジ管理
• 自分の「勘」もデータとして残すことで後進にノウハウ継承

まとめ：タイダイTシャツ印刷品質の真実――昭和から令和へ、製造業の責任と未来

タイダイTシャツは一見“ラフ”なファッションでも、印刷現場では高度な白ベース・露光・版管理が仕上がりを大きく左右します。

「職人の勘」と「データ＆ロジック」「サプライヤーとバイヤーの情報共有」。
この3点を実践的に結びつけることが、タイダイTシャツプリントにおける品質革命のカギです。

地道なサンプルテスト、細やかな記録、徹底した情報共有が、地色干渉という“目に見えぬ壁”を突破し、ビジネスとしても現場としても成功につながります。

どんな仕事も原理原則はシンプルです。
昭和時代から続くアナログな知恵・経験に、現代のデータ管理とオープンマインドな価値観を掛け合わせれば、サプライチェーン全体を強くできるのです。

最後までご覧いただきありがとうございました。
今日から白ベース厚と露光設定が、現場を未来型に進化させる“鍵”になります。