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マーケティングDXを誰が主導するのか決まらない組織

目次
はじめに:製造業におけるマーケティングDXの現状と課題
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、今やあらゆる産業で不可避の課題となっています。
特に、長年アナログな運用が根強く残る製造業では、DX推進は「言うは易く行うは難し」となりがちです。
中でもマーケティング分野のDXは、調達・開発・生産管理部門が優先視される企業文化の中で後回しにされてきました。
では、その最も大きな理由は何でしょうか。
それは、「マーケティングDXを誰が主導するか」が明確に決まっていない組織体制にあります。
この記事では、その背景にある根本的な問題と、時代を切りひらくための実行力・変革力について、製造現場の視点から迫ります。
製造業に根付く“部門サイロ化”の壁
歴史と実績が生んだ部門間の壁
大手メーカーの多くは、戦後の復興期から続く分業体制の中で、調達・製造・品質・営業といった機能別の縦割り構造が深く根付いています。
各部門は自分たちの守備範囲で高い専門性を発揮してきました。
しかしその結果、「自分たちの業務が最優先」「部門をまたぐ取り組みは二の次」となりがちです。
この文化は一見、安定した生産や品質維持に寄与しているものの、時代の変化に応じた新たな付加価値創出の障害となります。
マーケティングDXの推進体制についても、旧態然とした「俺の仕事じゃない」「あっちの部の責任だ」という発想から抜け出せません。
昭和・平成型リーダーシップの限界
かつて工場長や部長といった管理職には、職人気質と強いトップダウン型のリーダーシップが求められてきました。
その結果、現場は「上意下達」の習慣に染まり、部署外のプロジェクトやDX推進は「自分ごと」として捉えにくくなっています。
経営サイドが「DX推進!」と号令をかけても、現場には「誰か進めてくれるだろう」「うちの部門は関係ない」という空気が蔓延します。
真に脱アナログ・脱サイロ化できるのは、部門横断で機能融合できる新しいリーダーシップが確立できた組織のみです。
なぜ「マーケティングDXの推進役」が決まらないのか?
マーケティングへの誤解と軽視
製造業では、しばしばマーケティング業務が「営業支援」や「販促物制作」の延長線上と見なされがちです。
調達や開発、生産と比べて直接的な成果が見えにくく、KPI化もしにくいため、重要度が低くなります。
このため、DX時代におけるデータ活用・顧客体験の革新・デジタル分析の必要性を理解している人材が少なく、そもそも「誰が主導するべきか」という議題が組織内で上がりません。
「DXはIT部門の仕事」への思い込み
多くの組織でDX推進と聞くと、真っ先に情報システム部門が矢面に立たされます。
しかし、IT部門の役割は「仕組みを整える」ことであり、ビジネスをどう変えるか、社内の業務プロセスや顧客体験をどうDXで革新するかまではカバーしきれません。
特にマーケティング分野のDXには、現場の「顧客起点で考える力」と複数部門を巻き込む「調整・実行力」が必要となります。
どの部門にも当てはまらず、責任の押しつけ合いが起こりやすいのが実情です。
意思決定までのスロードリフト現象
サプライチェーンの効率化や工場自動化のプロジェクトと異なり、「マーケティングDX」は予算や評価体制もあいまいです。
推進役を作っても「予算化の根拠が曖昧」「ROI(投資対効果)を証明しきれない」といった理由から経営層の決裁を得るまでに長期間を要します。
そのあいだに、社内の熱量が冷めてしまうことも少なくありません。
DXを加速できる現場リーダーの条件
属人的リーダーから“橋渡し型”リーダーへ
昭和型の“何でも自分で解決する現場主任”では、部門横断型プロジェクトは前進しません。
マーケティングDX推進には、「各部門の役割・専門性を尊重しながら、目指す姿に共感を持たせ、橋渡しできるリーダー」が不可欠です。
例えば、生産管理システムのデータを基に市場動向を予測し、その情報を開発や販売部門とリアルタイムで共有・意思決定につなげる。
こうした「情報の行き来を円滑にできる調整力」と「全体最適を考える目線」が新時代リーダーには求められます。
現場起点のリアルな課題感が推進力になる
調達、購買、生産管理、品質管理で実務経験のあるメンバーがDX推進役に入ることで、「現場のやりにくさ」や「ムダの多さ」をリアルに説明できます。
「なぜ今この仕組みを変えなければならないのか」「どのプロセスを優先してデジタル化すべきか」といった現実志向の議論が進むでしょう。
一方、現場を知らないDX担当が旗を振っても、「現実離れした理想論」「また経営層の雑音」と受け流されてしまいます。
現場目線で語れる推進役が間に入ると、「現場に負荷がかかりすぎず、持続可能な改善策」へと落とし込めるのです。
バイヤー・サプライヤー視点で見るDX推進役の変遷
調達部門が主導権を握るケース
今までは調達部門が、サプライヤーとの取引条件や納期管理をアナログな表計算や電話・FAXで行ってきました。
最近は、バイヤーが調達情報のデジタル管理やサプライヤーポータル導入など、「部分的なDX」を牽引するケースが出てきています。
ただし、この「現場目線の改善」と「全社最適なマーケティングDX推進」は、近くて遠い関係にあります。
今後は、調達管理と販売データを組み合わせて「最適サプライチェーンを構築する」など、部門横断で価値を創出するイノベーションが必須です。
サプライヤーから見たバイヤーの本音とは
サプライヤーは「このバイヤーはどこまでデジタル化を進めたいのか」「一時的なコストダウンだけが目的なのか」を常に探っています。
もしバイヤー自身が社内横断でDX推進の旗を振る役割を担えば、サプライヤーもより主体的に新技術やデータ連携の提案ができるようになります。
「共通のKPIを目指せるパートナーシップ」こそが、DX時代の新しいバイヤー像となっていくでしょう。
製造業DXの成功事例に学ぶ―組織変革の突破口
現場と経営が一体となったプロジェクトマネジメント
ある大手自動車部品メーカーでは、調達・開発・生産管理・品質・営業の中堅層による“部門横断タスクフォース”が組成されました。
現場リーダーたちがそれぞれの部門で抱える課題点を持ち寄り、「導入が早く効果も見える工程」から小さくDXを始めました。
成功体験を積み重ねつつ、経営層も定期的なプロジェクトレビューに参加して支援体制を整えました。
このような「仮説→実行→成果確認」の短いサイクルが、組織カルチャーを徐々に変えていったのです。
DXを社内“共通語”にしたメーカーの事例
メーカーA社では、調達や生産の現場向けに「デジタル化の基本」と「業務効率化の意義」をセットで伝えるワークショップを開催しました。
「IT=専門部隊ではなく、“みんなの業務をもっと楽にする手段”」という共通認識を社員全体に浸透させたのです。
これにより、各部門で「あの工程をシステム化できないか?」といった現場発の提案が生まれ、ボトムアップでDXが進みました。
こうした社内“意識改革”が、主導者不在の状態を突破する大きな力となりました。
まとめ:マーケティングDX推進に必要な“新しいバイヤー思考”
製造業の現場で、長年アナログなやり方が主流だった背景には、「自分の部門以外は他人事」という体質がありました。
これからの時代、マーケティングDXを成功させるためには、「境界を越えて動くバイヤー」の存在が何より重要です。
部門の垣根を超えて、現場に根差したリアルな問題意識と各部門との橋渡し役を担う。
かつ、経営を動かすためにデジタル化の効果と必然性を根気強く伝え続ける。
こうした姿勢が、いま製造現場で求められる“新しい主導者像”です。
バイヤーになりたい方、サプライヤーとしてバイヤーの考えを深く知りたい方も、皆さんが主役となって製造業DXの新時代を切り拓けるはずです。
与えられた役割を超えて、「組織変革の中心」を志すべき瞬間が、いまここにあります。