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オリジナル商品を作る前に考えるべき「誰が使い、どこで売るのか」の設計思考

目次
はじめに 〜製造業でオリジナル商品を作る本当の意味〜
オリジナル商品づくりは製造業にとって永遠のテーマです。
市場での差別化や利益率の向上、新たな取引先の開拓、企業ブランドの再構築など、期待される効果は大きいですが、実際に「やってみよう」と決断し、理想通りの成果を得られるケースは決して多くありません。
その原因の多くは、作る前に「誰が使うのか」「どこで売るのか」という設計思考が不足している点です。
昭和〜平成に名を残してきた製造業は、“良いものを作れば売れる”という信念に根差しています。
しかし、令和の今、情報過多・成熟市場の中において、それだけでは通用しなくなりました。
本記事では、20年以上の現場経験と管理職視点、そしてバイヤー・サプライヤー両面の立場を踏まえ、「オリジナル商品を作る前に再考すべき設計思考」について、実践的かつ現場のリアルな目線でお伝えします。
良い商品とは何か?“使う人”と“売る場所”の視点
現場の常識は市場の非常識になる
私たち製造業の現場では、「品質が高い=売れる」「コストが安い=競争力がある」「機能が多い=優れている」と考えがちです。
ところが実際に市場に出すと、ユーザーから「宝の持ち腐れ」「ちょっと高すぎる」「使いこなせない」といった声が寄せられることも少なくありません。
これは、“良い商品”の定義が供給者目線(作る側の理屈)と需要者目線(使う側の価値観)で食い違っているためです。
製品設計の初期段階で“自分たちの強み”だけを起点にせず、「誰が何のためにどう使うか?」を徹底的に深掘りする設計思考が不可欠です。
「売りたい」より「選ばれたい」へシフト
オリジナル商品は自社の技術・ノウハウを活かせるチャンスですが、重要なのは“作る”ことではなく“選ばれて使われ続ける”ことです。
そのためには大きく二つの視点が必要です。
- エンドユーザー(最終的に使う人や企業)の日常と課題の理解。
- どんな流通チャネルやプラットフォーム(販売場所)で出会い、比較し、購買されるかのシナリオ設計。
「なぜ今、ユーザーはこの商品を欲しがるのか?」
「Amazon、ECサイト、専門商社…どの『場』で見つけてもらうべきか?」
これらを設計フェーズで明確にしないままでは、“作って終わり”の商品を量産してしまう危険があります。
バイヤー経験から学ぶ「買う側の本音」
バイヤーは単なる価格交渉者ではない
私自身、製造業の現場で調達・購買部門も経験してきました。
多くの製造業では「バイヤー=コスト交渉」と捉えがちですが、現代のバイヤーは調達先の信用やサステナビリティ、安定供給力、製品の差異化要素も重視し、購買戦略を描いています。
バイヤーが求めているのは、単に「安くて良いもの」だけではありません。
「現場ニーズをどれだけ解像度高く捉え、的確なタイミング・数量・スペックで提案できているか」
「トラブルや市場変動時に柔軟な対応が可能か」
ここを冷静に見極めているため、単なる“技術の塊”ではなく、“課題解決に直結する製品”や“運用を安心にするサポート力”があるかどうかで評価が大きく変わります。
サプライヤーは「何を」ではなく「なぜ」提供するのかを明確に
サプライヤーとして「他社製品でも代用できる」ような汎用品では限界があります。
バイヤーから本当に信頼されるための設計思考は、「自社製品がなぜ今、それを必要とする顧客層に唯一無二なのか?」を裏付けるストーリーを持つことです。
具体的には以下の3点が不可欠です。
- 使い手(バイヤーやエンドユーザー)の業務・課題シチュエーションを精緻に把握し、改善策とセットで提案する。
- 「どこで」使われるか、「どんな管理体制・運用条件」に左右されない安定稼働があることを示す。
- 製造元ゆえの品質や仕様変更・カスタマイズへの柔軟さ、トラブルへの即応力があること。
製品単体としての競合優位性はもちろん、使われる現場・売られる場面・調達先として選ばれる根拠を自問自答し、バイヤーの側から見た「No.1の理由」を作る必要があります。
昭和の成功体験を引きずらないための“設計思考”
なぜ「とりあえずで作った商品」は棚に並び続けるのか
製造業の多くは、これまで部品メーカーやTier2としての細やかな対応力、長年のお付き合い、信頼の積み重ねで生き残ってきた業界です。
しかし、デジタルシフトやグローバル競争が進むにつれ、
「とりあえず持ってる商品があるから」「昔から付き合いがあるから」といった“惰性の棚おき”は、急速にリスクとなっています。
新商品が思うように売れない理由の多くは「誰のために、どこで、どう使われるものか」が設計段階で曖昧なため、バイヤーから“どの棚にも置き場がない”と言われてしまうのです。
中小メーカーこそ設計思考の徹底を
特に中堅・中小メーカーにとって、今後は「ユーザーインサイト→流通チャネル設計→商品仕様」の全工程に設計思考を徹底的に組み込むプロジェクトマネジメント力が鍵を握ります。
具体的には
- 開発初期からマーケティング部門や流通パートナー、時には実際のエンドユーザーとワークショップや現場ヒアリングを実施する。
- 機能や仕様への“現場評価(PoC)”を段階的に挟み込み、「欲しい理由」と「使いやすい現場」が論理的につながる検証を行う。
- “この商品はどんな現場で感動(Wow)を起こすか”というストーリーづくりまで落とし込む。
この双方向・実証型PDCAを繰り返すことで、初めて「作ったのに売れない」から脱却できます。
製造現場目線で「売れる商品設計」を実現するためのヒント
1. ユーザー体験の“スクリプト”を描く
単なるスペックや価格だけでなく、「現場でどう使われ、どんな課題や心理的不安を解消するのか」をシナリオ化しましょう。
調達購買担当・現場オペレーター・現場監督・品質保証…それぞれ異なるユーザー層のニーズと行動を分解し、ペルソナ毎に“使い方の物語”を共有することが大切です。
これが出来ていない設計だと、「とにかく全部入り」「どれも中途半端」のようなプロダクトになりがちです。
2. 売る場所・流通チャネルを“設計”する
メーカー=カタログや商社で売る時代は終わり、今やD2CやSNS、卸EC、専門プラットフォームなど販路は格段に広がっています。
“どこに置かれたら買ってもらいやすいか?”
“どんな説明やストーリーが添えられていれば選ばれるのか?”
販路・販売方法も含めた設計思考が不可欠です。
逆に「このチャネルで強みを発揮できない商品」は開発時点で迷いを断ち切り、棄却する勇気も重要となります。
3. 設計者だけでなくフロント部門の巻き込み
オリジナル商品設計の現場では、どうしても設計開発部門の論理が色濃く反映されがちです。
仕様書中心ではなく、「営業がどう提案しやすいか」「カスタマーサポートや現場からどんな声が想定されるか」まで、部門横断の目線を組み入れることが、売れる商品づくりの近道となります。
まとめ:設計思考こそ製造業のイノベーションの起点
オリジナル商品を作る——その決断の先には、“設計思考”による深いリサーチと現場目線のユーザー理解、売る場所・働く人・使う人すべてを巻き込んだシナリオ設計が必要です。
昭和型モデルを脱却し、使われ、選ばれ、繰り返しリピートされる商品を生み出すには、ラテラルシンキングとオープンイノベーションの発想が欠かせません。
「誰が使い、どこで売るのか」を徹底して自問自答し、現場の知見と“使い手の声”を融合させることこそ、製造業に求められる新たな競争力となります。
一人ひとりの“設計思考”が、日本のものづくりの未来を切り開いていく——
その一歩を、今日からぜひ自社でも始めてはいかがでしょうか。
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