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売上構成比を聞かれるたびに黙ってしまう経営者の本音

目次
はじめに:なぜ売上構成比の話になると経営者は口を閉ざすのか
経営会議や資金調達の場、あるいは新規顧客との面談。
このようなタイミングで必ずと言っていいほど「御社の売上構成比は?」という質問が投げかけられます。
しかし、長年製造業の現場に身を置いてきた私の経験則では、その瞬間に顔を曇らせる経営者が少なくありません。
なぜ多くの製造業経営者は売上構成比を聞かれると黙り込むのか。
そこにはアナログな業界体質、過去から引きずる取引慣行、そして現場ならではの本音が複雑に絡み合っています。
この記事では、なぜこの質問が経営者にとって「ほろ苦い瞬間」になりがちな理由を現場目線で解き明かしつつ、バイヤー・サプライヤーそれぞれの立場にとって現実的なヒントを示します。
売上構成比とは何か? 経営上の重要性を再認識する
売上構成比とは、企業の各取引先や製品サービスごとの売上額を全体売上高で割った割合のことを指します。
業績把握、事業リスク分析、経営戦略の検討に不可欠なKPIです。
なぜ売上構成比が問われるのか?
– 大口顧客依存や特定事業への片寄りなど、リスクの「見える化」ができる
– サプライヤー選定では、将来の安定供給や相互成長性を判断できる
– 調達購買部門が「自社の購買力」「交渉ポジション」を冷静に把握できる
バイヤーがサプライヤーとの契約更改や新規選定を行う際、売上構成比は非常に重視される指標です。
経営者が売上構成比の開示に慎重になる理由
1. 特定顧客依存リスクの露呈
昭和から続く長期安定取引が多い製造業界では、大口顧客に売上の大半を依存することが珍しくありません。
例えば、売上高の7割を1社の自動車部品メーカーが占めているとしましょう。
この数字を外部に知られることで、「事業継続リスクが高い」「他顧客への価格説明が困難になる」といった心配が生まれます。
2. 選択と集中・新規事業化のジレンマ
最近ではDX(デジタルトランスフォーメーション)やIoT活用で新分野進出を狙うメーカーが多いです。
しかし、既存主力での構成比が95%と圧倒的ならば「新規開拓はうまくいっていないのでは?」という評価を招きかねません。
そのため、経営者は「新事業の芽をどう評価されるか」を憂慮し、売上構成比開示を悩みます。
3. 価格決定力や交渉力の低下を恐れる
サプライヤー側として「売上構成比が高い」=「バイヤーへの依存度が高い」と認識されれば、今後の値上げ交渉や取引継続にマイナスです。
一方で、バイヤーとしては「買い叩けるサプライヤー」と見なしたくなるのも現実です。
この「情報対称性のズレ」が、経営者の本音を複雑にしています。
売上構成比をめぐる現在の業界動向
1. アナログ体質と情報非対称性の残存
製造業では、日本的な長期安定取引や“なあなあ”の慣習が色濃く残っています。
多くのサプライヤーが「売上構成比は秘中の秘」と考え、正確な数字を現場担当者さえ把握していないケースも珍しくありません。
一方、外資系大手バイヤーや新興企業がグローバル購買手法を導入し、サプライヤーデータベースの高度化(SCMシステムなど)を急速に進めています。
これにより「曖昧な情報開示」が通じない時代に突入しつつあります。
2. 選択と集中、そしてリスク分散の潮流
コロナ禍や半導体不足を経て、あらゆる企業が「サプライチェーンのリスク分散」を意識しています。
バイヤー側はサプライヤーの売上構成比を“客観数値”で管理し、どの取引先が“依存リスク高”なのか把握、そのうえで調達先のポートフォリオを最適化します。
一方、サプライヤー側も「脱・大口依存」による新規開拓や収益柱の多角化を重要課題と認識しています。
3. ガラス張り社会への抵抗と適応のはざま
SDGs、ESG経営、コンプライアンス重視といった透明性要求の高まりから、大手取引先を中心に「売上構成比の開示」を強く求められる場面も増えました。
一方、属人的な商習慣を重んじる中小サプライヤーにとって、数字のガラス張りは“恐怖”そのもの。
アナログとデジタル、新旧世代の間で摩擦が生まれやすいのが今の業界動向です。
売上構成比を「見せる/隠す」――現場が知る攻防のリアル
バイヤー視点:「知りたい理由」と「使い方」
バイヤーとして売上構成比を精査する理由は明快です。
– 購買条件見直し(価格改定等)の材料にしたい
– 仕入先リスク分析の一環
– サプライヤーの経営戦略・成長性を客観評価したい
特に大手バイヤーでは、サプライヤー審査資料や信用調査レポートの提出をルール化していることもあります。
「一社依存」のサプライヤーについては“リスクあり”とフラグを立て、新たな調達計画を立てるケースも珍しくありません。
サプライヤー視点:「明かせない事情」と「賢い対応」
一方、サプライヤーは売上構成比をどこまで開示すべきか、毎回頭を悩ませています。
– メイン顧客との力関係・契約条件に悪影響を及ぼす
– 競合他社や業界内の“噂”が広まるリスク
– 本音ではポジションの弱さ(価格決定力のなさ)が露呈するのが怖い
そのため、「自信のある数値のみ抽出して開示」「全体売上高は非公開」「構成比は“過去3年間平均”で丸める」などのテクニックが現場では横行しがちです。
経営者の本音:「数字」以上に苦しいもの
私自身、工場長時代に「売上構成比の開示をどうするか」で幾度も会議が紛糾しました。
特に印象的だったのは「頭では必要だと分かっているが、“数字”が本当は変えられていない」――そんな経営者の戸惑いです。
具体的には、
– 数年前から新規開拓を進めてきたが、結果的に大きな変化がない
– 時代遅れの体質を見抜かれそうで恐ろしい
– 他社と比較されてしまうこと自体がプレッシャー
これが、経営者が売上構成比を聞かれるたびに黙ってしまう、最も根深い悩みです。
ラテラルシンキングのすすめ:売上構成比「その先」を考える
現実には、売上構成比をすぐに理想的な状態へと変えることは容易ではありません。
ですが、今このアナログ業界にとって重要なのは「数字への過剰な防御反応」から一歩踏み出すラテラルシンキングです。
「売上構成比はネガティブな数字」からの脱却
多くのサプライヤーは、構成比が特定顧客に偏っていることを「弱さ」とみなします。
しかし、長年その取引先で磨き上げた技術・ノウハウ・品質保証の蓄積は“競争力の証”であることも事実です。
大口顧客の信頼、その実績自体をブランディング要素として生かせる場面も多くあります。
「依存度の高い取引先」×「新規展開」のストーリー化
経営者は「同じ状態が続く」ことの説明責任を感じやすいですが、実はバイヤーの目線も千差万別です。
長く安定供給できているサプライヤーを高く評価するバイヤーも少なくありません。
むしろ透明性やチャレンジの姿勢を正直に見せることで、新たな調達先として前向きに受け止められることも増えてきました。
従来の数字重視から、未来の“価値提案”重視へ
今後は、売上構成比という「静的なデータ」だけでなく、品質改善プロジェクトやDXへの投資、SDGs対応など“将来への布石”を積極的に情報発信することがますます重要です。
「いまはこの構成比だが、どんな成長シナリオに向かっているか」をきちんと整理し、現場の「できること」「やってきたこと」も数字とセットで語りましょう。
まとめ:売上構成比とどう向き合うべきか――現場のための処方箋
売上構成比の話になるとなぜか黙り込んでしまう。
それは単なる経営者個人の性格や説明下手が原因なのではなく、製造業界が抱える古くて新しい構造的課題だからです。
これからの時代、売上構成比は「隠す」べき数字ではありません。
情報をどう見せ、どう生かし、どんなビジョンに結び付けていくか――。
それこそが、アナログな業界にこそ求められている新しい対話力です。
現場をよく知るものとして断言します。
売上構成比の攻防の場面では、数字を語る勇気と、数字の向こうにあるストーリーを示す力が、着実に信頼を生み出していきます。
「売上構成比をどう答えるか?」悩むなら、まず自社の強みと進化をじっくり現場から再発見すること。
きっと、その積み重ねが「次の商談の成功」を引き寄せてくれるはずです。
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