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採用広報を変えても製造人材が集まらない理由

目次
はじめに:製造現場の人材不足は「採用広報」だけで解決できない
近年、製造業界では人材不足が大きな課題となっています。
多くの企業が、「採用広報」の見直しや強化によって若い人材や優秀な人材の獲得を図ってきました。
しかしながら、それでも期待したほど効果が現れず、「募集しても応募がゼロ」「入社してもすぐに辞めてしまう」といった悩みは、昭和の時代から続く多くのメーカーにいまだ根強く残っています。
では、なぜ「採用広報」をいくら変えても人材が集まらないのでしょうか?
本記事では、現場目線で実際に工場管理や購買などを経験した筆者が、製造業界の“根本的な課題と本質的な改善ポイント”について、ラテラルシンキング(水平思考)で深掘りします。
採用広報の「進化」と現場の「停滞」、なぜズレが生まれるのか?
トレンド広報の落とし穴:メッセージだけが先走る
SNSの活用、ダイバーシティ推進のアピール、華やかな企業サイトや動画コンテンツ…。
今、製造メーカー各社は、これまでにないほど多彩な採用広報手法を駆使しています。
もちろん、企業イメージをよく見せることは重要です。
ですが、実際に応募者が工場見学や面接で訪れた際、「アナログな現場」「旧態依然のコミュニケーション」「デジタル化が遅れた設備・労働環境」「昭和を引きずる年功序列文化」に直面した途端に、イメージと現実のギャップを感じてしまうことが多いのです。
広報がいかにオシャレで魅力的でも、“現場の本質”がアップデートされていなければ、採用活動の根本的効果は得られません。
現場の「昭和スピリット」:悪い意味での“伝統”の重さ
筆者は20年以上製造現場で働き、繁忙期のワンマン体制や、ベテラン作業員の高度な「暗黙知」に支えられた現場を数多く経験しました。
「このやり方じゃないとウチの製品はできない」「効率化より現場の肌感覚が大事だよ」
このように、現場ベテランの“経験則”や“こだわり”は、時にものづくりの誇りや強みとなります。
その一方、デジタル化や新しい働き方に強い“抵抗勢力”にもなりがちです。
特に、多様な働き方やダイバーシティ理解が重要視される時代において、「新しい人材が働きにくい空気」は、組織全体から滲み出ています。
そもそも「今の製造現場」に働きたがる若者はなぜ少ないのか
現場が抱える“3つの根源的ハードル”
1. 「稼げる」「成長できる」イメージの希薄さ
工場=単調・ルーチン作業という認識が根強いです。
キャリアアップや給与面でIT業界、コンサル業界などと比較して魅力が感じにくい現実があります。
2. 柔軟な働き方やデジタル化の遅れ
工場の多くは「定時・出勤厳守・現場主義」。リモートワークや副業など、現代の若者が重視する働き方から大きく取り残されています。
3. 昭和型マネジメントの残存
黙ってやれ、見て覚えろ、先輩が絶対——こうしたマネジメントは、今の若手が最も嫌う組織風土です。
バイヤー目線・サプライヤー目線でも「現場観」は重要
多品種・少量生産、短納期化が進む中、バイヤーやサプライヤーも現場の「ムダ」や「属人化」、「紙・電話頼みの情報伝達」を敏感に感じています。
「この会社はデジタル化が遅れていて納期が不安」「社内調整が遅いため見積もり回答もTIME LAGが大きい」など、実際の現場力がそのまま商談の信頼にも直結します。
つまり、現場の変化こそが、会社の“市場価値”そのものを決定づけているのです。
表面ではなく“裏側を変える”意識改革が必要
①現場管理職・工場長の意識と現場のトップダウン刷新
採用広報を強化しても、人が定着し・輝ける環境が現場にない限り、本当の意味での人材獲得には繋がりません。
現場のキーパーソン(ライン長・班長・工場長)こそが、「デジタル・多様化・キャリア志向」を認めるマインドセットに変わる必要があります。
昭和脳から脱却できるか。
暗黙知のマニュアル化や教育制度づくりができるか。
現場発・現場任せから、組織的・開かれた業務改善へのシフトチェンジが重要です。
②現場での「体験デザイン」=リアルな魅力を伝える仕組みづくり
会社説明会やインターンシップ・工場見学の質向上も急務です。
数字やITツールだけでは伝わらない、現場・人・働き方の“リアル”な一日を再設計し、「自分が成長できる実感」「仕事のやりがい」「誇れる仲間」を体験させる必要があります。
現場のリーダーが、自分の体験談(失敗談やキャリアアップの道筋など)を熱意を持って伝えることが、最も説得力を持ちます。
③「ニッチな強み」「ユニークキャリア」を丁寧に発信する
誰もが知る大手企業でなくとも、オンリーワン技術・自動化への挑戦・職人たちの連携プレイなど、他社にない魅力を持つ中小工場は多いものです。
人口減少社会では、「柔軟な働き方ができる町工場」「若手でも現場改善にガンガン挑戦できる会社」など、“中の人しか知らない魅力”が、求職者・取引先の心を打ちます。
変に「大企業風」に作りすぎず、自社のリアルな強みを言語化し、社内外へ発信する努力が今後ますます重要になります。
バイヤー・サプライヤーの立場から考える「現場改革」と人材力
バイヤー(買い手)は、コストや納期だけでなく、現場の“作り込み力”や“トラブル対応力”“現場改善のスピード”も大きく評価します。
何かイレギュラーが起きた時、現場が組織的に動いて問題解決できるか。
社内の情報共有や連携がスムーズにできているか。
デジタル・アナログを問わず、「人が育ち、人が辞めず、現場のノウハウが会社の強みに還元される」体制があるか——。
こうした現場の“実態”が、サプライヤーとして取引先から評価され・選ばれる最大の鍵です。
まとめ:採用広報の呪縛から抜け出し、現場をアップデートせよ
採用広報の工夫や工場見学の演出だけでは、もはや新しい人材・優秀な人材は定着しません。
昭和型の現場文化・アナログな意思決定プロセスを変え、リーダー層自身の意識改革、柔軟な働き方やキャリア支援、リアルな現場の強みの発信がますます重要になります。
日本の製造業が発展を続ける鍵は、「現場が変わる」「現場で人が育つ」「現場の魅力を開かれた言葉で伝える」ことにあります。
採用広報を変えるだけでなく、現場そのものを“変革”するあくなき挑戦こそが、真の人材獲得と企業価値向上に繋がるのです。
現場を愛し、変化を恐れず、共に新しい製造業の未来を創造していきましょう。