投稿日:2025年12月28日

ロールフォーミングで深絞りができない理由

ロールフォーミングで深絞りができない理由

ロールフォーミングは、薄板や帯状金属材料を連続的に曲げて複雑な断面形状を作り出す優れた成形方法です。
建材、家電、自動車、物流機器など、その活躍範囲は日本のあらゆる製造業に及びます。
一方で「ロールフォーミングでは深絞り成形はできない」とされるのが業界の常識です。
なぜなのか、その本質と業界の現場目線に立った背景について徹底的に掘り下げていきます。

まずはロールフォーミングと深絞りの違いを理解しよう

ロールフォーミングの成形原理

ロールフォーミングは、連続した複数のローラー(金型)に材料を通すことで、徐々に材料の形を変えていく加工法です。
材料を切断して送り込む際、形状が設定された数段階のローラーによって曲げ加工が繰り返されることで、最終的な断面形状へと仕上げられます。
この工程は「曲げ」に特化しているのが特徴で、平板やコイル材を「一方向に少しずつ曲げていく」ことに最適化されています。

深絞りの成形原理

一方、深絞りとは「平板状」の金属材料を、パンチとダイ(金型)で強い圧力をかけて、立体的に「容器状」に成形する加工です。
例えばカップや缶、オイルパン、水槽部品など、底の深い器形状をつくる代表的な方法が深絞り成形です。

深絞り加工の核は、板を「引き延ばして」三次元的に形状を変化させることです。
単なる「曲げ」ではなく、「材料が横方向や垂直方向にも大きく変形し、絞り込まれ」ていきます。
材料同士が大きく引っ張られ、塑性流動(材料の流れ)をコントロールする高度な知見が求められる技術です。

両者の決定的な違い

ロールフォーミングは「連続した曲げ加工」、深絞りは「強い引き延ばしと立体的変形」です。
金型の形状、材料への応力、成形スピード、求められる材料特性など、根本的な発想が全く異なるのです。

なぜロールフォーミングでは深絞りができないのか?

材料の流動方向が決定的に異なる

ロールフォーミングはあくまで「材料断面を何段にも分けて少しずつ曲げていく」プロセスです。
材料内部への引き延ばしや大幅な流動は生じません。
材料は「送り方向(進行方向)」を主軸とし、各ローラーで少しずつ曲げが生じますが、厚み方向や横方向へ大きく膨らませる動きはありません。

対して深絞り成形は、「材料断面が大きく変化」し、主に厚みや幅方向へ材料が流動します。
無理に深く引き延ばそうとすると、材料破断や割れ、シワの発生が一気に増します。
これを回避するために、潤滑やアニール(焼きなまし)、最適な金型クリアランスといった高度なコントロールが必要となります。

ロールフォーミングの連続したローラーでは、こうした「材料の三次元的な流動」を作り出すことができないため、深絞りがそもそも理論的に不可能なのです。

曲げ加工と引き延ばし加工の限界

ロールフォーミングにおける「曲げ」は、板材(コイル)の「中立軸」を中心にして「上面は引っ張られ・下面は圧縮される」応力が発生します。
しかし板自体の「面積」を大幅に変化させたり、厚み方向に移動させる力を加えることは設計思想から外れます。
一方、深絞りは「穴の部分をパンチで押し込み、その材料が全方向に広がる」イメージです。
曲げと引き延ばしという加工の「絶対的差」による限界だといえます。

ロールフォーミング設備では三次元成形ができない

ロールフォーミング設備は直線上に金型ローラーが並び、材料を「送り込む」ことで加工を行います。
ローラー間の調整幅は「折り曲げ半径」や「板厚」に合わせた程度であり、「立体的な掴み込み」「強い押出し」には構造的に対応できません。

深絞りの場合には、パンチとメスダイで『板を挟み込み』、強い圧力で一気に成形します。
この「両側から、そして上下から、材料を挟み込む工程」がロールフォーミングには存在しないため、物理的に不可能なのです。

適した材料特性が異なる

ロールフォーミングは比較的硬い材料や、表層にコーティングが施された鋼板(ガルバリウム鋼板やカラー鋼板など)でも問題なく加工できます。
曲げにより部分的に応力がかかっても、材料が大きく引き伸ばされることがないため加工ひずみはあまり発生しません。

しかし、深絞りでは「絞り率(どれくらい深く絞れるか)」が大事な指標です。
それには材料の延性(伸びやすさ)や均一な質感、加工硬化しにくい特性が必須です。
したがって、材料選定における視点自体がまったく異なるのです。

現場が知っておくべき、「深絞り不可」が生む課題と可能性

設計段階でのリスク回避ポイント

製造業の現場では「量産前の設計段階で、どこまでロールフォーミングで対応できるか」を検討することが重要です。
なぜなら、図面に「ロールフォーミングで深いカップ状形状や袋状形状」を表現してしまうと「工程を大幅に見直す」「金型設計や素材選定からやり直す」などの大幅なロスを生みかねません。
逆に「ロールフォーミングの強み(シームレスな長尺成形や複数の部位一体成形)」を理解し、設計に反映することで量産性やコストダウンが大きく前進します。

工程分割というラテラルシンキング

昭和の手法にありがちなのが「一つの工程ですべてを済まそうとする」発想です。
ですが、現代製造では「ロールフォーミングで作れる形状+深絞りやプレスの一部工程を組み合わせる」ことで、革新的な新製品やコスト削減を実現できます。

たとえば、ロールフォーミングで作れるU字断面の部品をまず作り、端部だけはプレスや深絞りで「膨らみ」や「カエリ」をつける事例なども増えてきており、分割発想は投資・納期・歩留りの面でも大きなメリットとなります。

国内外サプライチェーンの潮流

日本の製造現場では「ロールフォーミングでどこまで複雑な形が作れるか」という挑戦と同時期に、「欧米や中国などグローバルプレイヤーとの工程競争」も激化しています。
ネットワーク系バイヤーは、徹底的に工程分解を検討し、ただ単に見積依頼を出すのではなく、「ここの部分は国内メーカー、この工程は海外の量産コスト型工場」と分散発注するケースが増えてきました。

調達担当者・バイヤーがこの工程限界を知っているかどうか、その視点が「より川上のメーカーへの正しい説明」「サプライヤーとしてどこまで対応可能かの誠実さ」にも直結します。
サプライヤーサイドとしては、理論と現場の限界を明確に伝え、付加価値の高い提案に繋げることが今後の企業間競争でポイントを握るのです。

最新動向と今後考えられる進化

ハイブリッド成形技術の登場

近年は「ロールフォーミング+プレス成形+レーザー加工」の複合工程により、今まで不可能だった形状や機能の実現事例が出てきています。
たとえば自動車部品では「部分的に突起を持った断面」や「多段階ロールによる部分膨らみ」など、独自技術を取り入れる動きが加速中です。

今後さらにAIと画像解析、CAEシミュレーションの高度化によって「従来できなかった複雑曲げ成形」と「最小限絞りの限界追求」が進展する可能性があるでしょう。

デジタルツイン/スマートファクトリーで再定義される限界

DX(デジタルトランスフォーメーション)やスマートファクトリー推進の文脈では、金型開発と量産現場のデジタル化も進んでいます。
これにより成形限界の「早期シミュレーション」と「現場実機での微調整検証」を高速化し、ロールフォーミング技術の進化速度も一気に上がっていくでしょう。

ただし、基本構造が「送り方向中心の曲げ加工」である限り、本質的に三次元深絞り加工とは根本的な差が残る点は認識しておくべきです。

まとめ:ロールフォーミングの「できること・できないこと」理解が現場とサプライヤーの競争力を決める

ロールフォーミングは製造業の現場で欠かせない高効率な連続成形技術ですが、「深絞り」のような三次元的な塑性流動には根本的に不向きです。
この限界を正しく理解し、発注側(バイヤー/設計担当)と、サプライヤー側(加工現場/技術担当)が共通言語を持ち、工程組み立ての柔軟なラテラルシンキングを行うことが、これからの製造業の持続的な進化を支えるカギとなります。

昭和の常識から一歩踏み出し、ロールフォーミング×深絞りの特性の違いを広く現場に共有し、新しいものづくりの地平線を自ら切り開いていきましょう。

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