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品質保証が現場から「また来た」と思われる理由

目次
はじめに:品質保証部門への現場の本音
製造業の現場で20年以上の経験を持つ私が、最前線でよく耳にしてきたワードがあります。
それは、「また品質保証部門がきた」「どうせ重箱の隅をつついてくるんだろう」という現場の溜息です。
なぜ、品質保証が現場から歓迎されず、時に煙たがられてしまうのでしょうか。
この現象は、昭和の時代から続く製造業独自の文化や意識に根ざしています。
この記事では、現場目線でその理由を紐解きながら、業界の今後に向けたラテラルな視点と解決策を提案します。
品質保証が現場で嫌われる5つの理由
1. 「監査」=「揚げ足取り」と感じられてしまう風土
品質保証部門は、製品や工程の安全性・信頼性を確保する責任があります。
一方で、現場からは「また書類チェックか」「ミス探しご苦労さん」と取られがちです。
この根本には、「品質保証=トラブルの種を探してくる役目」という役割認識のズレがあります。
特にアナログ文化が根深い現場ほど、「問題点を指摘される」のは個人や組織への否定だと捉えられやすいのです。
2. 生産現場の「やらされ感」と時間的プレッシャー
納期が逼迫する生産現場では、工程を止めてまで品質保証の指摘事項をやる余裕はありません。
多忙な中での突発的な監査や急な是正要求には、「本業を邪魔された」と反発も生まれがちです。
「それが本当に顧客価値に直結するのか?」という疑問も、現場の声としてよく挙がります。
3. 報連相・記録重視の形式主義化
ISO・IATF・JISなどの規格が進化し、品質保証の業務は年々形式化・文書主義化が進んでいます。
現場には「書類を作るための仕事が増えた」という実感しか残らず、「書類のための品質保証なら意味がない」という不信感が蓄積されています。
4. 現場との温度差・コミュニケーションギャップ
理想的な品質保証は現場との密な連携ですが、現実は「お客様目線」と「現場目線」が乖離しがちです。
品質保証部門は規格や標準を基に判断し、一方現場は「日々の達成」「生産ノルマ」が行動原理となります。
この温度差がコミュニケーションの断絶を生み、「現場の苦労を知らないで口を出すな」と感じられてしまいます。
5. 改善や提案力の弱さ、現場変革に結びつかない悩み
「問題点を指摘するだけで終わり」「具体的な改善策は現場任せ」といった品質保証部門の在り方は、信頼を損なう最大の要因です。
現場から見ると、「指摘するなら改善も一緒にやってほしい」「連携して一緒に工場をよくする姿勢が見えない」と不満が溜まります。
現場を知るバイヤー・サプライヤーの視点
先述のような現場の空気を、バイヤーを目指す方やサプライヤーも無視できません。
なぜなら、大手メーカーの調達購買に携わる立場では、品質保証の審査やQMS(品質マネジメントシステム)の監査が、実際の受注やパートナー関係の鍵を握ることが多いからです。
バイヤーの立場としては、「現場の協力体制」や「トラブル対応の速さ」が重視されます。
一方で、サプライヤーは品質保証部門の要求に応えるために自社現場に負担を強いてしまい、同じような「反発」や「負担感」が社内で再現されます。
つまり、この歪みはサプライチェーンにも波及する「業界病」なのです。
昭和的アナログ体質のなごり
日本の製造業は「現場力」「カイゼン」で世界に冠たる地位を築きましたが、その裏側には、古き良き「現場主導主義」と、属人化・経験重視の文化が頑強に根付いてきました。
この文化が、品質保証の重要な役割を「現場の邪魔者」「お役所仕事」とみなす土壌を育ててきたのです。
デジタル化・自動化が進んだ現代でも、「現場重視」の名のもとに、品質保証との対立構造は変わりにくい現状があります。
業界動向:変革への兆しとIT化の波
一方で、近年の品質保証業務にはDX化(デジタルトランスフォーメーション)の波が押し寄せています。
IoTセンサーによる変数管理や、クラウドによる工程履歴自動保存、AIによるデータ解析によって、監査や是正指示がより迅速・効率的に行えるようになりました。
さらにデジタルデータの共有で、現場も品質保証部門も「感覚」ではなく「事実」をベースに協議・改善できる環境づくりが進んでいます。
これにより、「品質保証=邪魔者」という固定観念も、ゆるやかに変わり始めています。
ラテラルシンキングで考える本質的な解決策
品質保証が現場に「また来た」と思われず、お互いが何のための品質保証かを腹落ちできる関係を築くには、どうしたら良いでしょうか。
従来の延長線上ではなく、抜本的なラテラルシンキングで考える必要があります。
1. 現場と品質保証、両部門の「WHY」への共感
品質保証は「お客様に約束した品質を守る最後の砦」、現場は「最高の製品をもっと早く、安く、確実に作りたい」。
お互いの「WHY=なぜやるのか」を継続的に話し合い、納得できるまで説明しあう場づくりが不可欠です。
2. プロセスの見える化と共同モニタリング
例えば、工程データをダッシュボード化してリアルタイムで共有するだけでも、「事前に品質異常が分かる」「みんなで問題に向き合える」土壌が生まれます。
品質保証が現場の「監視役」から「伴走役」になることで、現場は「来るならむしろ助けてほしい」と受け止め方が大きく変わります。
3. 品質文化を「人」から「仕組み」へシフト
ベテランの経験値に依存しない、AIや標準作業・自動チェックシートの採用により、個々人の心理的バイアスを減らしましょう。
「誰が言ったか」ではなく「仕組みが語る」環境にすることで、個人攻撃感や責任転嫁が減少します。
4. 相互ジョブローテーションと現場体験
品質保証と現場のジョブローテーション、もしくは現場研修制度を定期的に実施すれば、お互いの業務の大変さや工夫に気付けます。
「現場も品質保証も大変だね」と認め合えば、信頼関係が生まれます。
まとめ:変わりゆく品質保証の立ち位置
昭和から続く現場の「品質保証への警戒感」は、業界の慣習や価値観の表れでもあります。
しかし、時代は変わっています。
品質保証が「来るたびに現場を助けてくれる、頼れる存在」と認識される会社ほど、品質・納期・コストのバランスも向上しています。
バイヤー候補やサプライヤーの皆様も、「現場と品質保証の協働」をきちんと評価基準に盛り込むことが、真に強いサプライチェーンづくりへの近道となります。
技術やシステムの進化、そして何より「人の意識改革」が進めば、「また来た」ではなく「また来てほしい」と思われる品質保証に近づけるはずです。
現場を知る者として、これからの製造業のために、共に新たな品質文化を築いていきましょう。