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現場で使われていない機能だらけの設備仕様が生まれる構造

目次
はじめに ― なぜ「使われない機能」が設備に増えるのか
製造業に長年携わっていると、現場で「あまり使われていない機能がたくさんある」設備に出会った経験を持つ方は少なくありません。
一見便利そうなシステムや多機能な装置も、実際の日々の生産現場では「誰も使っていない」「結局従来機能しか使う人がいない」といった状況が生まれがちです。
こうした“宝の持ち腐れ”となる設備仕様――なぜ、このような構造が生まれるのでしょうか。
本記事では、バイヤーやエンジニア、サプライヤーなど立場の違いによるギャップに着目し、現場視点で深掘りしていきます。
ラテラルシンキングを駆使し、昭和から抜け出せていないアナログな業界文化にもフォーカスしながら、新たな地平線を切り拓くヒントを共有します。
設計・調達・現場…誰のための設備仕様か
現場の“使い勝手”より重視されるものとは
設備の仕様を決めるプロセスには、設計部門や調達部門、品質管理、さらには現場オペレーターや保全担当など、さまざまな立場の人が絡んでいます。
本来なら現場の“使い勝手”や“生産活動へのインパクト”が最重要のはずです。
ですが、実際には以下のような事情が優先されがちです。
– 設計部門が自社の技術力をアピールするための先進機能
– 調達部門が見積りを有利に進めるためのスペック盛り込み
– 品質部門がリスクヘッジのために盛り込む過剰な要件
– サプライヤーが売り込みたい独自技術
結果として、本来「現場にとって本当に必要・有用か?」という視点がぼやけてしまい、使われない機能が積み上がっていくのです。
“設備投資は一大プロジェクト”という落とし穴
特に高額な生産設備の投資プロジェクトでは「この機会にできるだけ多くの要望を詰め込もう」という心理が働きやすくなります。
長年動かす装置ですから、“今後の不安・使いそうな機能”まで前倒しで発注仕様に盛り込みがちです。
しかし往々にして、機能が多くなりすぎて「現場がついていけない」「保守が複雑化してしまう」といった導入後の問題を生み出します。
なぜ現場の声が仕様に反映されにくいのか?
意思決定プロセスの“上流”で現場が置き去りに
実は仕様決定の現場に、真に現場のオペレーターや保全スタッフの声は届いていないケースが多いです。
主な理由は以下のとおりです。
– 現場担当者が仕様会議に呼ばれない、もしくは発言しづらい空気がある
– 意思決定が管理職や本社主導で進みがち
– 現場が忙しくヒアリングの時間をつくれない
– 「現場のやり方がおかしい」という“上から目線”の思考
こうして、机上で練られた発注仕様は“本来の使い手”から乖離しやすくなるのです。
「社内調整」の文化が産む“つけたし仕様”
日本の製造業・大手メーカーほど、部門間の調整(いわゆる“根回し”や“付け焼き刃的譲歩”)が重視されます。
特に昭和的な企業文化が色濃い現場では、「〇〇部門からの要望だけ外すのも角が立つ」「この機能、前回も盛り込んだ実績があるから外しづらい」など、“消極的な理由”で機能が追加され続けるケースが少なくありません。
結果、「多機能だが誰もフル活用していない」設備ができあがる構造が、強く根付いてしまっています。
プロジェクトの“成功”と“価値”のズレ
「立派な設備=成功」という勘違い
購買・調達の立場からすると、いかに「安く」「高いスペックで」「納期通りに」設備を導入するかが評価軸になりがちです。
一方で、現場のエンジニアやオペレーターにとって大切なのは、「シンプルで確実」「使いやすい」「保守・トラブル対応がしやすい」設備です。
プロジェクト完了時は華々しく表彰されたものの、現場からは「結局この新機能は誰が検証して使うんだ?」「トラブル時の責任は?」という声が多発する事態も珍しくありません。
この“価値のズレ”が、使われない機能を持つ設備を生み出す根本要因と言えます。
使われない“高機能”が将来のリスクにも
使われていない機能が多い設備は、保守・点検の難易度を高めたり、担当者の異動・退職時に「誰も扱えないブラックボックス」化したりするリスクも生みます。
“設備の陳腐化”や“部品供給終了”時に、使いこなせていない機能への投資が無駄になる可能性も高まります。
アナログ文化・属人化という“抜け出せない昭和”
「デジタル推進」が“現場の肌感”を置き去りに
近年はIoTやAI活用、DX推進など、「製造業のデジタルシフト」が日本全体で強く叫ばれています。
にもかかわらず、現場は紙の帳票・手書き記録・口頭伝承など、アナログ文化が根強く残っています。
多機能なシステムを導入しても「使う人が理解できず怖がって触らない」「結局パソコンに入力してから手で紙に転記」「現場担当が高齢化しており、誰も新操作を教えられない」など、根本的な活用が進みません。
これは仕様策定プロセスで、現場のリアルな運用イメージや、既存業務との“すり合わせ”が十分になされていない証左です。
「昔からのやり方」の根深さ
さらに、属人化されたノウハウや、「この人がやってるやり方が一番いい」といった非公式ルールが暗黙に働く組織は、ソフト・ハード両方のイノベーションの足かせになります。
新機能があっても「結局、従来法で落ち着く」流れができあがってしまい、仕様に込めた技術革新が“生きない”のです。
海外メーカー・サプライヤーの視点も考慮すべき理由
“お客様は神様”による不毛な要求増大
日本の製造業界では、“自社仕様への強いこだわり”がサプライヤーに過剰な要求(無償カスタマイズ・特注機能)を生み出しやすい傾向があります。
特に海外サプライヤーは「なぜここまで細かい仕様を求めるのか?本当に使うのか?」と疑問を感じ、結果として納期遅れやコスト高、最終的にはグローバルな技術パートナー離れにつながるケースも見受けられます。
“スタンダード”を極める欧米企業との違い
欧米企業は“標準機能”や“ベストプラクティス”を尊重し、「変更や追加は、費用対効果が明確な場合のみ」とする意思決定プロセスが一般的です。
日本特有の“みんなの要望を少しずつ盛り込む”やり方は、グローバル調達や多国籍サプライヤーとの協業で大きな障害となります。
使われない機能で複雑化した設備は、海外企業にとって“謎多きブラックボックス”となり、コスト・品質両面で不利な状況を招くリスクがあるのです。
現場で本当に使われる設備仕様を生み出すには
現場主体・ユーザー目線の徹底
設備の導入・更新プロジェクトでは、「一番の使い手」が主体的に仕様策定に関われるよう、仕組みを変えることが不可欠です。
– オペレーター・保全担当も交えたワークショップや模擬運転テストの導入
– お手本にしたい“本当に活用できている現場”を積極的にヒアリング
– 新機能・新仕様の追加要件は“実際の現場課題”から“逆算”して議論する
こうした取り組みが重要です。
「最小限の標準機能」から始めるマインドへ
求められるのは、「あれもこれも」と欲張る“スペック盛り”発想から、「最小限の標準機能」をベースに“現場の肌感に合わせて成長させていく”マインドへのシフトです。
必要以上のカスタマイズは避け、“本来の価値=シンプルで運用しやすいこと”を再認識した仕様策定が重要となります。
デジタル・自動化の前に“現場業務の見える化”を徹底
IoTやAIを活用する以前に、「今、現場でどんな作業が、だれによって、何のためにおこなわれているか」を徹底的に棚卸し・“見える化”することが、全ての起点です。
非効率や無駄、手間取っていることに現場自身が気付き、「本当に欲しい改善案」を“地に足ついた言葉”で引き出すことが、使われる設備仕様への第一歩となります。
まとめ―進化する製造業のため、現場起点で未来を切り拓く
現場で使われていない機能だらけの設備仕様が生まれる背景には、「現場の目線が反映されにくい構造」「組織内調整や文化的な慣習」「上流と下流のコミュニケーション不足」が複雑に絡んでいます。
ベテランも若手も、調達もサプライヤーも――それぞれの立場の壁を越えて、真の“現場起点”でメーカー・ものづくりの在り方を問い直す時代です。
自社だけでなく業界全体が進化していくために、アナログな伝統とデジタル革新との融合、グローバルな“標準”との対話をとおして、未来への新たな製造現場像を、一緒につくりあげていきませんか。
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