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投稿日:2026年1月31日

健康経営が製造業の安全対策と連動しない理由

はじめに:健康経営と工場の安全対策は本当に連動しているか?

製造業という現場で長年働いてきた方なら、会社の「健康経営」がここ数年で注目されてきたことをご存じだと思います。
従業員の健康保持や増進を経営課題として推進し、モチベーションや生産性向上、企業価値向上につなげるこの考え方。
しかし、現場レベルで安全対策に従事してきた管理職やスタッフの多くは、「健康経営と自分の工場の安全対策は本当に連動しているのか?」と違和感を覚えているはずです。

なぜ健康経営が、現場の安全対策と強く結びつかないのでしょうか。
この記事では、昭和の時代から続く現場の空気、アナログな慣習、人間関係も踏まえ、実践の現場目線でその理由をひも解いていきます。

健康経営とは何か〜製造業での受け止め方

現場にいる私たちが「健康経営」と聞くと、どこか遠い存在に感じがちなものです。
そもそも健康経営は、経産省や協会けんぽなどが旗振り役となり始まった取り組みです。
主な内容は、禁煙・健康診断受診率の向上・運動不足解消・メンタルヘルス対策・食習慣の改善など。
毎年の健康診断の受診率アップや、ウォーキングチャレンジ、社食のヘルシーメニュー推進、ハラスメント相談窓口の整備など、情報発信や啓発活動が目立ちます。

一方、製造現場の労働安全衛生は、法律で厳しく義務付けられています。
安全教育、危険予知活動(KY)、5S、ヒヤリ・ハット報告、設備の定期点検、保護具着用、災害ゼロ達成への取組みなど、きわめて実践的かつ具体的。
「ケガをしない、安全に家に帰る」が最大の目標です。
現場の声からすれば、“健康経営”はどこかオフィスワーカー向けの印象を持たれている場合も多く、「うちの現場とは世界が違う」と感じる要因の一つとなっています。

健康経営が現場の安全対策に馴染みにくい理由

1. 目的・成果指標の違い

健康経営は、数値で成果を測ることが重視されます。
「健康診断受診率99%達成」「肥満率〇%減」「歩数チャレンジ参加者数」など、管理しやすい目標が立てやすいです。

これに対し、製造現場の安全対策は「事故ゼロ」「労災なし」が絶対目標です。
“未然防止”が最大の意味を持ち、「ゼロ災運動」や「ヒヤリハット100件収集」など、とにかくリスクを徹底除去して実際の災害・事故発生数を抑えることが使命です。

両者の目標やKPIが性質的に違い、現場の安全担当者から「健康経営は手応えが薄い」と言われてしまうのが現実です。

2. 安全はルール徹底・健康は自律型推進

安全対策の現場では、「守るべきルール」「やってはいけない作業」「必ず確認するポイント」など、とにかく規律やマニュアル遂行が重要です。
違反があれば指摘され注意。
無意識の油断による災害リスクを徹底的に排除する文化が根付いています。

一方、健康経営の多くは「個人の自覚と自律」を土台とします。
健康診断や保健指導、運動推進は、強制ではなく『自分のためにやりましょう』という呼びかけが一般的です。
企業は“支援”の形をとりますが、最終的な行動主体はあくまで従業員本人。
この自由度こそが、現場リーダーや管理者には「事故防止のような厳格さが伴わない」=「現場安全と肌ざわりが違う」と映ってしまう要因です。

3. 健康経営は「ゆるやか」、安全対策は「瞬間・即結果」を求める

健康経営の取り組みは長期的です。
「3年後の肥満率減」といった中長期ビジョンの色合いが強いのが特徴です。
一方で製造の安全は「今」「今日」「この瞬間」事故ゼロを厳守する即効性が求められます。
現場にとって、効果がすぐ現れない健康経営は「どこか他人事」「成果が把握しづらい」と敬遠されがちです。

4. 現場に根付く“昭和的”価値観とアナログ志向

製造業の現場には今も“根性論”や“作業は身体で覚えろ”“多少の無理は当たり前”という昭和的な価値観が生き続けています。
「ちょっと風邪くらいで休むな」「腹が減ったら早飯で!」「健康管理とは自己責任」が染み付いており、これこそが健康経営とのギャップを生みます。

また、紙記録&口頭伝達、経験則重視というアナログな情報伝達も壁です。
安全日報・KY記録・朝礼などの現場活動は、紙やホワイトボード文化が主流。
会社が健康経営のためにタブレット管理やアプリ通知を導入しても、「現場ではなかなか定着しない」「逆にストレスが溜まる」という現実が生じています。

現場目線で考える、健康経営と安全対策の“架け橋”とは?

それでも今後、健康経営の概念と現場の安全対策は「地続き」で考えていく必要があります。
現場マネジメントに携わる立場として、“両者をいかに結びつけるか”を提案したいと思います。

1. 現場用語で「健康×安全」を再定義する

安全ミーティングや朝礼の中で、「健康状態の良し悪しがヒューマンエラーや体調不良事故に直結する」ことを繰り返し伝えるべきです。
たとえば
・「寝不足のまま機械のスイッチを入れることがどれほど危ないか」
・「持病や血圧管理が不十分だと、重作業時のリスクが格段に高まる」
という事実を、現場の事故事例に結び付けてストーリー化しましょう。
健康経営の「抽象的な目標」を、目の前のリスク管理・安全活動へと組み込む視点です。

2. 現場特化型の健康改善施策を導入する

製造業には他業種にない“体を張る現場”ならではの健康課題があります。
暑熱現場での熱中症対策や、夜勤者の生活リズム、自動化シフト時の単調作業による注意力低下など、工場現場の実情に即した健康経営プログラムが必要です。
運動不足対策なら、ライン切り替え待機時間のストレッチ指導、安全帯使用チェックと合わせた「一声体操」など、“現場仕様”の細やかさが重要です。

3. 現場リーダーを「健康経営リーダー」に昇格させる

現場リーダーや班長こそ、健康経営の旗振り役に任命すべきです。
例えば
・部下の体調を日々気遣いながら声を掛ける
・異変を感じたら無理をさせず休憩やフォロー班でカバーする
こうした「小さな管理」を徹底することで、安全対策と健康増進が一体のものとして現場文化に組み込まれます。
リーダー教育の中に“ヒューマンエラー対策”としての健康チェックも盛り込みましょう。

サプライヤー・バイヤーの立場で考える健康経営の波及効果

調達購買やサプライヤー評価でも、今後「健康経営の取り組み」は大きなアピールポイントになります。
大手メーカーでは、CSR調達やSDGs対応の一環として、サプライヤー側に健康経営の取り組み状況を確認するケースが増えています。

バイヤーは、単なる品質・価格・納期だけでなく、サプライヤー企業の働き方や従業員の健康・安全管理にも目を向けます。
「現場レベルで健康と安全の両立」というソフト力を持つサプライヤーは、リスクマネジメントや安定供給で高く評価される時代に突入しています。

サプライヤーの方は、バイヤーの新しい評価軸に目を配り、「健康経営と現場安全との橋渡し」ができているか、今一度自社の仕組みを見直してみましょう。

まとめ:健康経営と現場安全を分断させないために

健康経営と現場の安全対策。
この二つを、別物として考えるのではなく「一人ひとりが安全で健康に働き、事故なく職場人生を全うするための一体的な文化」と再定義しましょう。

現場が受け入れやすい具体策を現場発で考え、健康経営の数値目標を安全管理・ヒューマンエラー防止の文脈で語る――。
昭和から令和へ、現場の意識改革の波は着実に起き始めています。

これからの製造業の発展には、「現場目線」の健康経営が不可欠です。
現場と経営目線をつなげる実践力を身に付け、強い、安全で、誇れるものづくり現場を一緒につくっていきましょう。

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