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投稿日:2026年1月21日

人的資本経営が製造業の採用ブランディングに活かせない背景

人的資本経営とは何か?製造業での現状を読み解く

人的資本経営とは、従業員を単なる労働力やコストではなく、「価値を創造する資産(資本)」として捉え、その成長や活躍、定着を経営戦略の鍵として真剣に向き合う経営手法です。
海外では「ヒューマンキャピタルマネジメント」という言葉ですでに定着し、企業価値の評価にも人的資本投資が大きなファクターとして重視されています。

昨今は日本でも人的資本経営の重要性が高まっており、
・人的資本の情報開示の義務化
・人的資本経営ガイドラインの発行
といった動きが急ピッチで進んでいます。

ところが、実際に製造業の現場を見ると、
「人的資本経営が重要とは聞くが、自社の実態にはなかなか合わない」
「採用活動や会社の魅力発信(ブランディング)とどう関連づければ良いか分からない」
という悩みに直面するケースが少なくありません。

その背景には、日本の製造業に特有の歴史的文化・業界慣行・アナログな価値観が色濃く影響しています。

昭和の成功体験に縛られる製造業の「人材観」

日本の製造業、とりわけ自動車や機械、家電などの大手メーカーでは、「ものづくり現場の熟練工をいかに確保し、定着させるか」が長らく最大の経営テーマでした。
その結果、熟練者ほど強く評価され、年功序列と終身雇用の仕組みが堅牢に根付きました。

過去には日本の製造業は世界を席巻し、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称賛された歴史があります。
この成功体験が、現場の人材育成・配置・評価の全てを支配しています。

「人は会社についてくる」「新卒一括採用・現場で鍛える・途中離脱はまずない」ーーこれは、経営者も人事担当も従業員自身も無意識に信じている思い込みです。

この“昭和脳”とも呼ばれる発想では、人的資本=福利厚生や年功的な手当、場当たり的なOJTで十分と見なされ、「個人の生きがい・挑戦志向・多様性」はなおざりにされがちです。

なぜ人的資本経営が採用ブランディングに直結しないのか

形式的な施策に終始している

最近の人的資本経営ブームで、
・資格手当の拡充
・研修プログラムの新設
・サーベイ(従業員意識調査)の定期化
などの取り組みが増えました。

しかし、これらは「やってる感」を醸し出すための形式的な対応にとどまるものが多く、採用活動の現場には本質的な変化が波及していません。

たとえば会社説明会や採用サイトでも、「研修が充実」「資格取得サポート」といった文言は多く見かけますが、実際の現場では配属後に放置されてしまう、主体的なキャリア形成を意識した支援がほとんどないというケースが散見されます。

トップや現場層の価値観が変わっていない

人的資本経営を本気で推進するには、会社の強い意思と現場レベルの“納得感”が不可欠です。
しかし、経営層や管理職が
「ウチはいざとなれば現場力でどうにかできる」
「理想論は分かるが、現実には即戦力がほしい」
「若手や女性の登用は“働き方改革”としか考えていない」
という根深い固定観念から抜け出せていません。

採用ブランディングの本質は、「この会社でなら自分が成長できそう」「自己実現につながる仕事に出会えそう」と求職者が心から感じられるような企業像を打ち出すことです。
しかし、実情は「とりあえず採用パンフに福利厚生や制度を並べておけば十分」という安易な広報施策が溢れているのです。

アナログ業界文化がブレーキとなっている現実

「人事は雑務」から脱却できていない

多くの製造業では、人事部はまだ“花形”部門とは言えません。
生産技術や設備管理の「現場感覚」が重宝され、人に関わる施策は“人事部の雑用”との意識が根強く残っています。

また、現場リーダーと人事担当者の距離も遠く、採用ターゲット像や人材活用方針が明確に共有されている例は決して多くありません。
「現場の声=昔からの慣習」が正しいという前提があるため、人的資本経営のような先進的な人材戦略が浸透しにくい構造です。

IT・デジタル人材の価値を認知できていない

生産現場では今でも「現場を知らない奴」「工場を歩いたことがない新卒」「デジタルだけが強い若手」は評価されません。
「現場に溶け込めない奴は、いくらポテンシャルがあっても戦力にならない」という声が根強い一方で、DXや自動化推進のためにはむしろIT/AI/データ解析に強い人材の採用・育成が必須となっています。

にもかかわらず、採用ブランディングの現場では「最初から現場に馴染める従順な若手」を優先する傾向が残っており、「現場×デジタル」で自己実現したい高度人材や、多様なバックグラウンドを持った求職者の獲得機会を大きく逸しているというのが現実です。

調達購買部門の視点:なぜバイヤーの採用も人的資本経営に紐づかないのか

「仕入れの仕事」=担当者依存・属人化の文化

調達購買の世界では、長年にわたり「現場を知ること=強み」とされてきました。
特に資材バイヤーは、職人気質のベテラン担当者が取引先(サプライヤー)に強く影響を持ち、人脈や過去の経験則に多くを頼っています。

そのため、バイヤー人材の採用や育成も「現場叩き上げ」「長い目」で考えられ、幅広いバックグラウンドや新しいスキルの持ち主を積極的に採ろうという人的資本経営の視点が浸透していません。

サプライヤーとの関係性に新しい風を入れられない

サプライヤー側の立場から見ると、「バイヤーは従来型の現場主義者」「決定権は一部のベテランのみ」という印象が色濃いものとなっています。
公正取引・サステナブル調達が求められる今の時代、本来は多様な価値観や新しい手法をもつバイヤー人材を積極登用することで、調達購買戦略をレベルアップしなければなりません。

ところが実際の採用活動では、「昔ながらのバイヤー像」を無自覚に求めてしまい、人的資本経営の発想がブランディングや人材獲得に生かされてこないのです。

どうすれば人的資本経営を採用ブランディングに活用できるのか

経営メッセージと現場感覚のギャップを可視化しよう

まず大切なのは、経営陣と現場リーダーの間にある「人材に対する認識」のズレを正直に洗い出すことです。
経営ビジョンとして掲げる「成長機会の提供」「ダイバーシティ推進」が、どこでどのように現場の慣習や評価制度と衝突しているのかを定量・定性の両面で可視化しましょう。

現場ヒアリングやクロス部門座談会も効果的です。
この「見えない溝」を認識することが、人的資本経営を採用ブランディングに生かす最初の一歩となります。

キャリア採用やプロジェクト型採用を積極展開する

従来の「年功序列・新卒一本槍」から脱却し、
– プロジェクト型での中途採用
– 社内外のタレントリストの再構築
– 異業界や多様なバックグラウンド人材への積極的な情報発信
に方針転換しましょう。

具体的な人材像を採用ホームページやリクルーターに明示し、「将来こんな人財が主役になる」「業務にこんな変化を起こしたい」というメッセージを実感できる形で伝えていくことが重要です。

現場×デジタルの自己実現ストーリーを発信する

ものづくりの根幹は現場にありますが、「現場経験×デジタル技術」で価値創造に挑む人の成功事例を積極的に発信しましょう。
IT/AI/サプライチェーン・データ分析…そうしたスキルを会社で生かし、自己成長できる環境があることを、具体的にストーリーで伝えることが今後ますます重要になります。

まとめ:「人的資本経営の本気度」が採用競争力の分岐点に

人的資本経営は、決して“新しい人事制度”や“流行のワード”ではありません。
将来のものづくり戦略や企業存続の観点で、会社全体の在り方を根底から問われる哲学です。

昭和的価値観をアップデートできないままでは、採用ブランディングも昨今の価値観とは大きくズレ、現場の負担が増えるばかりになります。
経営陣・現場リーダー・現場社員が「自分ごと化」し、「自社で働く意味」の再定義を進めていく——。
今ここから、人的資本経営を本質的な採用力強化につなげるための第一歩が始まります。

製造業の皆さん、サプライヤーやバイヤーの皆さん、今こそ、現場目線で未来の常識をつくり直しましょう。

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