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投稿日:2026年2月15日

人的資本経営を掲げても現場改善につながらない理由

はじめに:人的資本経営とは何か

近年、製造業界でも「人的資本経営」というワードが盛んに唱えられるようになっています。
従業員一人ひとりの知識やスキル、経験など“人”そのものを企業価値の根源と捉え、経営戦略の中心に据えようという考え方です。

もちろん、働く現場でも人の力は不可欠ですし、優秀な人材確保や定着、能力開発は組織の生産性向上に直結します。
しかし実務の現場、特に長年「昭和型」の体質が根強く残るアナログな製造業の現場では、「人的資本経営」に社長や経営陣が意気込んで取り組んでも、肝心の現場改善や業務革新へつなげられないという声が多く聞かれます。

この記事では、なぜ「人的資本経営」が現場改善の成果につながりにくいのか、実際の工場管理・現場マネジメント経験をもとに、その背景と本質的な課題、さらに打開するためのヒントをお伝えします。

人的資本「経営」と現場のギャップ

「人的資本経営」が経営層のスローガンに留まっている現実

そもそも人的資本経営は本来、従業員がやりがいを持って能力を高め、それが業務や現場改善の原動力となる循環が期待されています。
しかし実情はどうでしょうか。

多くの工場や生産現場では、「人的資本経営」の重要性はトップダウンで示されるものの、「従業員の自己啓発支援」や「キャリアパスの充実」といった制度を形だけ作るに留まり、現場の行動そのものには大きな変化が起きていません。

経営層の評価や見栄えを優先するあまり、「人材開発に取り組んでいるアピール」が先行してしまい、現場改善に直結するような学びや仕組みへと落とし込めないケースが目立ちます。

現場で根付く「昭和型」人材観のしがらみ

昭和・平成期からの流れを強く引きずる多くの現場では、「経験がすべて」、「職人芸でなんとかする」、「ベテランが偉い」といった価値観が、いまだ根強く存在します。

つまり「人を資本と捉える」よりも、「人は労働力」であり、単純な人数合わせやオペレーター確保という考え方が中心になりがちです。

人的資本経営を掲げても、現場管理職がその本質を理解せず、「どうせ新しい言葉遊びだろう」と冷めたムードに陥っている現場も少なくありません。
こうした土壌のままでは、“人を活かす経営”が現場改善につながるはずもありません。

なぜ現場改善につながらないのか

現実と向き合う:現場に響かない人的資本経営の「あるある」

製造現場でよく見かける、人的資本経営の“空回り”シーンには共通点があります。

– 形式的な研修やeラーニングが増えるだけで、実務への応用や改善のヒントが得られない。
– キャリアパスの導入を宣言するが「現実離れ」で、若手やオペレーターの未来イメージと乖離。
– 評価項目に「チャレンジ」「協働」「スキル向上」と掲げるものの、人事考課や処遇に十分反映されない。
– 現場の改善活動に“お題目”として「人を大切に」を掲げるが、具体的なアクションが不明確。
– バイヤーやサプライヤーとのコミュニケーションにおいても、「人的資本」をきちんと伝えきれず、取引の中で人の成長や現場力が評価につながりにくい。

こういった点が、現場で「あまり意味がない」「堅苦しいだけ」と敬遠されてしまう主因です。

「人を資本に」の落とし穴:現場課題の本質はプロセスとカルチャーにある

形だけの“人への投資”や施策を増やすことでは、製造現場が抱える改善課題の本質解決になりません。
それは、現場の日常業務や仕事の進め方そのもの(=プロセス)や、チーム・組織としての風土・カルチャーに、根本的なメスが入らないためです。

例を挙げると、現場作業や生産計画で「毎日同じ段取り」、「同じトラブルの繰り返し」、「“改善提案”が形骸化」など、属人的かつ非効率な仕事のやり方が常態化しています。
この土壌を放置したまま、いくら「人を大切に」「学びを増やそう」と叫んでも、表面的な“学び”や“意識改革”だけで現場改善につなげるのは困難です。

昭和~令和:製造現場の人的資本経営“あるある失敗例”

「教育すれば現場が変わるはず」の誤算

現場力を強化しようと、各種技能講習や資格取得支援、外部研修の投入、階層別研修などを拡充するケースは多いです。

ただし、現場では「受講すればOK」という風潮に陥り、学びを自分の行動や改善提案に結びつける機会まで作り込めていない現状が目立ちます。
また、学びを実践プロセスでフィードバックし、PDCAサイクルを回していく文化が未成熟のため、せっかくの施策も“やりっぱなし”で終わってしまうのが実情です。

「表彰・褒賞制度を整備したけど…」のジレンマ

優秀従業員の表彰、改善提案制度の拡充といった取り組みは、人への期待を形にする方法として有効です。

しかし、選考基準や評価ポイントが属人的でブラックボックスになっていたり、現場のリアルな難しさが反映されていなかったりすると、
「どうせ一部の人だけが選ばれる」「表彰よりも現場の困りごとをどうにかしてほしい」
といった冷めた反応に繋がってしまいがちです。

また褒賞によるインセンティブよりも、「日ごろの納得感」や「失敗しても挑戦できる文化」づくりのほうが、現場全体の活性化には重要だと痛感しています。

“人的資本経営で現場改善”への突破口を考える

理念よりも現場のプロセスと対話へ

製造業にこそ求められる人的資本経営の進化とは、「経営の言葉」を現場改善のための仕事の仕組みへ具体的に組み込み、目の前の課題解決へつなげることです。

そのためには、抽象的な“人材育成”“能力開発”ではなく、現場仕事の一歩ずつの“小さな見直し”と、“現場メンバーのリアルな声”にもっと目を向けるべきです。

「この改善はなぜ必要か?」
「現場メンバーはどんな困りごと・違和感を感じているか?」
「昨日までの作業手順のどこを変えてみると、一番負荷が下がるか?」

こうした問いかけと、単なる“お題目”ではない日常の対話、その積み重ねこそが、
“人を資本とする”理念と、実際の現場改善を接続する、最短の近道となります。

業界アナログ文化の「武器化」も戦略に

ITやDX推進が叫ばれる一方、製造業の多くは未だ「紙の記録管理」「経験と勘に頼ったトラブル対応」が根強い現場が多いのも事実です。

この“昭和型アナログ文化”を、単なる負の遺産と嘆くのではなく、現場の丁寧な運用・人の密なつながり・職人肌の粘り強さといった強みとして磨き上げ、
人とデジタルを組み合わせて現場改善の“武器”へ昇華できるかどうかが分かれ道です。

たとえば、生産計画や材料手配の場面で
「熟練作業者のノウハウを棚卸しし、フォーマット化して業務マニュアルを誰でも使える形へ落とし込む」
「アナログな改善提案ボードを、デジタル掲示板にも連動させる」
といった実績共有の形にすることで、“人”を活かす土壌がより強固になります。

バイヤー・サプライヤー視点から見る人的資本経営の課題と可能性

バイヤーにとっての「人的資本」の評価とは

原材料をはじめ、安定調達競争が激化する中、バイヤー視点でも取引先(サプライヤー)の現場力や組織の“人の底力”を重視する風潮が強くなっています。

– どんな教育訓練や改善活動をしているか
– 品質トラブルや異常事態が起きたとき、どのように現場で解決策を見出せるか
– 世代継承や若手育成の仕組みがあるか

こういったポイントは、価格や納期だけで差別化できない今、調達先選定の重要な評価軸になっています。
人的資本経営と現場改善がしっかり接続できている企業は、その“強さ”をモノではなく磨かれた“人”という形でもアピールできるのです。

サプライヤーが知るべき「バイヤーの期待」とは

一方でサプライヤー側も、“成長する現場文化・人材育成力”をバイヤーへアピールできれば、より深い信頼関係を築けます。

– 「OJT+市販の研修」にとどまらない、現場改善の事例やフィードバック例を見せる
– 職場風土や技能伝承の具体策、現場メンバーのチャレンジ事例をストーリーとして伝える
– イベント的な取り組み(一発表彰や研修)だけでなく、業務標準化や多能工化による現場力アップの継続性を提示する

こうした地道な積み重ねこそが、人的資本経営の実質的な成果であり、現場改善を根付かせる最大の証明になるのです。

まとめ:人を“活かす”経営こそ、現場の未来を変える起爆剤に

人的資本経営を掲げても現場改善が進まないのは、理念と実務が乖離し、本当の現場ニーズや業務プロセスに“人の力”が十分に作用していないためです。

「人を資本とする」ことは、美しい標語に自己満足するためでなく、現場の小さな悩みや非効率を拾い上げ、一歩ずつ改善し続ける意志と文化を築くための原動力でなければなりません。

昭和的な体質に課題を感じている方も、バイヤーを目指す方、サプライヤーとして現場力で差別化したい方も、今一度「人的資本」の真価を問い直し、理念と実践を結ぶ現場発のチャレンジを一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。

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