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投稿日:2026年1月26日

人的資本経営が現場管理職の言葉にならない理由

はじめに:人的資本経営が「現場」に落ちない理由とは

製造業でも近年、「人的資本経営」というキーワードが強く叫ばれるようになりました。
政府主導のガイドラインやメディアによる啓発も進み、一見すると現場にもその波が押し寄せてきているかのように思えます。
しかし、実際のところ多くの現場管理職やリーダー層にとって、「人的資本経営」はまだまだ“遠い存在”なのが実情です。

なぜなのでしょうか。
私自身も長年メーカーの現場で生産管理や調達購買、品質管理などの部門を歩んできました。
その中で感じてきた「昭和のものづくりDNA」や、アナログが根深く残る工場カルチャーを知る視点から、この課題をラテラルシンキング(水平思考)で深堀りして考察していきます。

人的資本経営とは何か?工場現場での“ギャップ”

人的資本経営とは、単なるコストセンターとしてヒトを扱うのではなく、会社の「資本」として従業員を捉え、価値創造の源泉として意識的に投資しようという考え方です。
経営方針やリーダーシップ、育成、多様性・ダイバーシティ推進など、人的リソースを最大活用することが競争優位の鍵になる、とトップマネジメント層が言い始めています。

ところが、現場の管理職や工場長クラスにこの話題を振っても、多くはどこかピンと来ていない、もしくは「どうせキレイごとだろう」と冷ややかに受け取られる場面が少なくありません。

このギャップの背景には何があるのでしょうか。

属人的スキルの蓄積=人的資本 の捉え違い

従来、製造業の現場において「人的資本」とは、職人気質の職長やベテランリーダーが持つ熟練ノウハウや『腕の良さ』を指すものでした。
いわば、現場で“身体で覚える”ことが人的資本そのものだったのです。

しかし、経営が言う「人的資本経営」は、育てるべき人材像が必ずしも従来の『匠』ではなく、多様な価値観やスキルを持ちデジタル化・自動化の波も乗りこなす人が求められるという指向に変わっています。
そのため、現場の管理職が自身の経験則から想像する“ヒトへの投資”と、トップが意図する人材ポートフォリオ経営のビジョンがいまひとつ重ならないのが現実です。

工場現場特有の「数字でしか評価されない」構造

工場や生産現場の管理職は、数字に縛られる局面が極めて多いです。
歩留り改善、不良率低減、コストダウン、納期遵守…これらはすべて数値で結果が出る指標です。
そうしたKPIが“管理職の存在意義”である以上、「人的資本を高めたい」と叫んでも、結局は作業効率が上がったか、離職率が下がったか、現場の士気が数値向上に結びついたか…など、可視化される面ばかりが求められます。

人的資本の本質である「従業員の自律性やエンゲージメント」が数字に即反映されることは稀であり、目先の業績数値にはなかなか表れません。
管理職が自発的に取り組みの旗を振るモチベーションが持てないのも、“現場論理”としては不思議ではないのです。

昭和の製造業文化とアナログ重視の呪縛

報連相とムダ取りが正義だった時代

日本の製造業現場では「報連相」や「5S」に代表される、アナログな仕組みの徹底と属人的オペレーションが今も色濃く残っています。
管理職は部下の顔色や作業手順をひたすら観察し、「職場がうまく回っていれば良し」と目に見える管理が求められてきました。

また、QC活動やカイゼン大会など、全員参加の活動を通じて「チームワークの強化」がはかられてきましたが、この仕組み自体が“みんな同じことをやって当たり前”という同質性文化を温存してきた一因でもあります。

こうした価値観の下で鍛えられた管理職にとって、「多様性を認めてイノベーションを生む」や「一人ひとりの自己成長が持続的競争力」などというアプローチに実感が持てないのも無理はありません。

ペーパーレス化・DX化の形骸化に見る現場の保守性

「デジタル活用で人時生産性を高めよう」「紙による作業日報を電子化しよう」といったムーブメントも、多くの現場では上から降りてきた指示どまりで終わってしまいがちです。
現場管理職は、「伝票が紙じゃないと実感が湧かん」「個々の判断材料を並べてこそ現場が回る」といった“昭和流”の価値観に根強く縛られています。

このように、何十年もかけて育まれたアナログカルチャーの中では、人的資本経営が謳うNEW STANDARDな人事施策や現場主導の改革は、“日常会話”にまで浸透しにくいのです。

現場目線での「人的資本経営」再定義への道しるべ

人的資本経営が「現場管理職の言葉」にならず、単なるお題目にとどまってしまう現状を打開するには、どのようなアプローチが有効なのでしょうか。
自動化やデジタル化が進む今こそ、現場感覚を生かした「現実論」として再定義する道筋を提案します。

“職場の成長物語”を見える化することから始めよう

現場で働く一人ひとりが、どのように成長し、難局を乗り越えてきたのかという“軌跡”をストーリー化し、組織全体で共有することはエンゲージメント向上に極めて有効です。

日々の小さなカイゼン事例やトラブル対応の成功談を「見える化」し、同僚同士が称賛し合う文化を意識的に育みましょう。

たとえば月次の朝会や昼礼、社内報などで「○○さんのチャレンジが工場に与えた好影響」といった現場の生の声を取り上げれば、人的資本経営という“抽象論”が具体的な意味を持ち始めます。

現場の“カンとコツ”を形式知化する独自の教育プログラム

熟練者の“カンとコツ”が暗黙知のまま属人的に閉じてしまうのは、多くのアナログ現場で共通する課題です。
この“職人技”を若手や中堅まで広げること自体が、まさに「人的資本経営」そのものですが、日々のOJT任せでは進みません。

現場管理職自らが“伝承する責任”を持ち、教育コンテンツや動画マニュアルの作成に協力したり、月1回のワークショップを設けたり、半ば強制的に知識共有を仕組みに落とし込むことが重要です。

こうした草の根の取り組みが、結果的に「現場目線の人的資本経営」を真に根付かせる礎になります。

製造現場にも多様性の追い風を

現場は昭和の“THE現場”ワークスタイルが根強く残る一方、少しずつ女性や外国人スタッフが増えているのも最近の特徴です。
人的資本経営の文脈では「多様な人材の活用」が重視されます。

具体的には、工程異動や柔軟な勤務形態、外国人技能実習生のメンター制度など、現場管理職の目線から一歩踏み込んだ多様性マネジメントの仕組み化が大切です。

現場から声を拾い上げ、「○○さんの経験・文化があってこそ、この品質が守られている」と具体的に言語化できることが、現場管理職自身の自信とモチベーション向上にもつながります。

サプライヤー、バイヤーも必読。現場視点での人的資本経営がサプライチェーンを強くする

人的資本経営は、決して自社だけの話ではありません。
調達・購買、サプライチェーン全体に目を向けたとき、現場の人的資本の状態がそのまま取引先との信頼や品質担保力につながります。

たとえば、バイヤーがサプライヤーの現場を訪問した際、「どれだけスキル・ノウハウが見える形で共有されているのか」「新人教育に力を入れているか」などを現場管理職の目線で確認することが大変重要です。

逆にサプライヤー側も、現場でどれだけ“人が育ち、文化が変わりつつあるか”を数字や説明だけでなく、実際の現場の雰囲気や成果物で伝えられることが、選ばれる企業のイメージアップにつながります。

まとめ:現場管理職こそ、人的資本経営の語り手へ

人的資本経営がなぜ現場管理職の言葉になりにくいのか。
その理由は、長年に渡る現場文化や数値による厳しい評価主義、アナログを重んじる組織風土など複合的な要素が絡み合っているからです。

しかし、本当の意味で“現場から湧き上がる”人的資本経営を実現するためには、現場独自の文脈を読み解き、今ある価値観をアップデートしながら小さな実践を積み重ねていくことが不可欠です。

現場管理職が率先して、部下の成長やチームの進化を語り、他部署や取引先とも“ヒトの力でここまでやれた”体験を言葉にすることで、人的資本経営が単なる経営戦略を超えて、製造業の現場にとっての“推進エンジン”となることでしょう。

今こそ、現場発の人的資本経営、始めてみませんか。

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