投稿日:2025年9月24日

大声で威張る上司ほど陰で小馬鹿にされる理由

はじめに:なぜ大声で威張る上司が存在するのか

製造業の現場に身を置いていると、どうしても「声が大きく威圧的な上司」に遭遇する機会が少なくありません。
昭和の時代から続くアナログ文化や、現場至上主義の名残が色濃く残っていることもあり、今なおこのような「大声上司」は一定数存在します。
しかし実際、彼らはしばしば部下から陰で小馬鹿にされ、信頼を失っているのが現実です。
一体なぜ、大声で威張ることでリーダーシップを取ろうとする上司ほど、部下から軽んじられるのでしょうか。
本記事ではその実態を、現場目線の実践的な視点で紐解くとともに、現代の製造業に求められる上司像についても考えていきたいと思います。

大声で威張る上司の特徴

1. 表面的な支配欲と不安の裏返し

威張る上司に共通するのは、自分を大きく見せようとするあまり、権威を声量や態度で誇示しようとする姿勢です。
これはしばしば、自信のなさや不安の裏返しだったりします。
的確な指示や納得感ある説明ではなく、「威圧」で人や状況をコントロールしようとします。

たとえば調達・購買部門で、市場価格の高騰など柔軟な対応が求められる時に、「うるさい!俺の言う通りやれ!」と怒鳴ることでしか指示できない上司がいます。
しかし現場スタッフはその背景の不勉強やリスク回避能力の低さを敏感に感じ取ります。

2. アナログな価値観の呪縛

この手の上司は、過去の成功体験―「俺たちの時代はこうだった」「現場は黙って動けばいい」―に固執しがちです。
しかも製造業界には「音量は熱意」と混同する悪習も根強く残ります。
現場で声が大きい=頼もしい、などという錯覚です。
しかし情報化やDX(デジタルトランスフォーメーション)が求められる現代の製造業では、その価値観は完全に時代遅れとなっています。

なぜ大声で威張る上司は陰で小馬鹿にされるのか

1. 「権威の空洞化」が露呈する

今や現場もサプライチェーンも複雑化し、知識やデータ駆動型の意思決定がスタンダードになっています。
部下はしっかりと分析・根拠を持った指示や説明を期待しています。
そこに「声が大きいだけ」「論点のすり替え」しかできない上司が来ると、「言ってる内容が薄い」「実は何も知らない」と見透かされてしまいます。
権威が空洞であることが明らかになるため、小馬鹿にされる対象になっていきます。

2. 感情的な支配はモチベーションを下げる

大声と威圧は短期的にはある種の力を発揮しますが、長期的には逆効果です。
部下の創意工夫や自律性、さらに現場改善提案などポジティブな要素をすべて潰してしまいます。
「ミスしたら怒鳴られるから言わないでおこう」といった萎縮効果が働き、報・連・相すら機能しなくなります。

製造現場での「報告・連絡・相談」の不徹底は、品質トラブルや納期遅延など致命的なリスクを招きます。
にもかかわらず、「あの人にはバカ正直に相談しても怒鳴られるだけ」「どうせ分かってくれない」と部下が思い込むため、陰で小馬鹿にされるようになるのです。

3. 「見える化」社会で化けの皮がはがれる

生産管理や品質管理のデジタル化・見える化が急速に進む現代では、数字やデータによる公平な評価が当然となっています。
たとえばKPI(重要業績評価指標)や不良率削減、工程改善の実績など、リーダーに必要な実力が可視化されています。
大声で自分の立場だけを誇示しても、本当のパフォーマンスが伴っていなければ、部下はSNSやグループチャット、あるいはサプライヤーとの裏コミュニケーションで本音を共有し合います。
「○○部長、また現場のこと分かってないのに怒鳴ってるよ」「データ見て話してくれればいいのに」といった具合です。
一度その評価が固まると、組織内での信頼回復は非常に難しくなります。

昭和のリーダー像から脱却するには

1. ファクトベース×現場目線が不可欠

今、製造業が求める上司像は「現場感覚+データリテラシー」に他なりません。
現場の声と実データによる分析を組み合わせ、課題を論理的に把握し、解決への道筋をオープンに示せること。
これがバイヤー・サプライヤーどちらの立場でも、信頼される重要な資質です。

2. 「共感的傾聴」で現場力を引き出す

部下や現場スタッフは、現実の課題や困難を知り尽くしています。
彼らの意見や提案を「聞く力」、そして共感的に受け止める姿勢が現場を変えます。
トップダウンの命令だけでは、柔軟性もスピードも得られません。
特に生産現場においては、コミュニケーションの良し悪しが、そのまま品質や納期、コスト競争力に直結します。

3. 「心理的安全性」の担保が組織を伸ばす

怒鳴られたり小馬鹿にされたりしない、どんな質問や報告も歓迎される「心理的安全性」が、今の製造業の現場づくりに不可欠です。
KPT(Keep, Problem, Try)や現場改善活動も、意見や挑戦がしやすい土壌無くしては定着しません。

上司が大声や威圧で支配しようとする組織は、重大な失敗を隠されてしまったり、現場力が萎縮してしまったりすることで、中長期的に競争力を大きく損なうことになります。

バイヤーやサプライヤー視点で見える本音

バイヤーから見える「威張る上司」の問題

購買・調達のバイヤーの立場からすると、サプライヤーとの交渉でも大声を出して威張る上司は信用できません。
「強く当たれば安く仕入れられる」という幻想を持つ上司ほど、応用力や調整力に欠け、いざというときにサプライヤーから協力を得られません。

本質的には「ウィンウィン」に基づいたパートナーシップを目指すのが、現代購買業務の王道です。
大声上司の下では、自社にとって不利な情報をサプライヤーがあえて隠すことだってよくあります。

サプライヤーが知っておきたい「バイヤーの本音」

サプライヤー側から見ても、大声で威張る上司が支配する購買部門は危険です。
無理な要求や、現場事情を全く顧みない発注が横行しがちです。
結果として、納期遅延・品質問題・不公平なコストダウン…といった不健全な関係しか築けません。

逆に「現場とデータをしっかり見る、相手の事情も理解する」バイヤーであれば、サプライヤーとしても長期的な信頼関係や共創の余地が広がります。

まとめ:これからの製造業リーダー像へ

製造業の現場にも、購買・調達・品質管理、生産管理のどの領域にも、未だに古い昭和的リーダーシップが根を張っています。
しかし、これからの時代は、現場の声を尊重し、データとファクトに基づいて対話し、部下の成長と主体性を引き出す上司でなければなりません。

大声で威張るだけのリーダーは、現場からもサプライヤーからも信用されず、小馬鹿にされて終わります。
若い世代や現場の最前線から実践力を引き出し、組織が持つ潜在力を最大限に生かすためには、「共感×ファクト×対話」を基軸とする新しいリーダー像こそ求められています。

時代の変化に合わせて、自分自身や組織のあり方を問い直し、明日のものづくり現場をより強く・賢く変えていきましょう。

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