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販促強化のためにMAを入れた製造業が成果を感じられない背景

目次
はじめに:MA(マーケティングオートメーション)導入による期待と現実
製造業界では、販促活動の強化や業務効率化を目的にMA(マーケティングオートメーション)ツールの導入が進んでいます。
しかし、「導入したけど成果が見えない」「想像していた効果が出ない」といった声も多く聞こえてきます。
その背景には、製造業特有の現場事情や従来からの慣習、そしてバイヤー・サプライヤー双方の意識ギャップが複雑に絡み合っているのです。
本記事では、現場での実体験と20年以上のノウハウを元に、なぜMAが思うように活用できないのか、その課題を深掘りし、解決の糸口を探っていきます。
製造業とMA:そもそものすれ違い
MAの役割と製造業の販促現場のギャップ
MAは主に潜在顧客の獲得・育成や、既存顧客への情報発信の自動化とパーソナライズ化を担います。
一方で、製造業の現場では「顔を合わせて信頼を積み上げる営業」、「FAXや紙での長年の取引履歴管理」、「人間関係を重視した受発注」といった昭和から続くアナログ文化が依然として根強く残っています。
このアナログの強さが単なる“ITリテラシーの低さ”ではなく、商慣習や顧客都合、取引規模やリスクの大小が背景にあることを現場で実感してきました。
マーケティングオートメーション=販促が自動で進む、リードがどんどん獲得できる――という単純な構図には、どうしてもならないのが製造業のリアリティです。
なぜ現場の商談現場ではMAが馴染まないのか
製造業における販促活動の主戦場は、展示会、紹介、定期訪問、電話やFAXによるダイレクトなアプローチが大半です。
現場に求められる対応速度、ヒューマンタッチ、積み重ねてきた取引の履歴――これらはデータ化し、MAで一元管理するには非常に困難です。
多くの営業マンや工場長は「入力の手間ばかり増える」「毎月数字や活動量だけが評価され、成果に結びつかない」と感じています。
MAを運用するためには、データの整備、社内ルールの明確化、継続的な教育が不可欠になりますが、現場目線ではそこに大きなハードルを感じているのです。
成果が出ない背景:3つの根本的課題
1. ターゲティングと育成戦略の不在
営業現場からは「顧客リストがまとまらない」「どの顧客に、どんなタイミングで、何をアプローチすればいいかを自動化してほしい」という声が多く聞かれます。
しかし、これは言い換えると「自社として、どのような顧客層を主ターゲットとし、どんな価値を提案したいのか」が言語化・可視化できていないということです。
MAはあくまで「設計したシナリオ」を自動運用するツールです。
つまり、ターゲット選定やペルソナ設計、顧客の購買行動に沿った育成プロセスの明示が曖昧なままでは、どれだけ高機能なMAを入れても「やった感」だけが先行し、実際の成果につながらないのです。
2. インプット(データ整備)が圧倒的に不足している
製造業現場あるあるですが、「データ化されていない情報」「属人的な商談情報」「Excelや紙に分散した管理」は依然として根強く残っています。
取引履歴や見積もり情報、技術提案内容など、バイヤーとの関わりの本質的な記録はなかなかMAツールのインターフェースでは入力しにくい現実もあります。
また、社内では営業・技術・調達・生産管理など部門間で情報が分断されがちです。
これでは見込み顧客の動線も分析できず、データドリブンな販促には遠い状態になってしまいます。
MAが宝の持ち腐れになる最大の要因の一つです。
3. アウトプット(コンテンツ)力の不足
「うちの強みをうまく伝えられない」「営業が言う内容とWebやメルマガがバラバラ」「結局メールも一斉送信止まり」といった悩みは尽きません。
MAの世界では、ダイナミックコンテンツやパーソナライズによるOne to Oneマーケティングが重視されますが、製造業の現場では「提案書・営業メールの文面設計」「ノウハウや技術の見える化」「顧客が知りたい情報の事前発信」など、発信するコンテンツ自体が大幅に不足しています。
製造業のバイヤー層は非常に“目利き”で、単なる製品スペックや値段情報だけでは動きません。
顧客ニーズに刺さるコンテンツ設計がなされていなければ、MAの自動配信も空回りし、開封率・反応率も伸び悩むのです。
昭和的な「現場の勘」信仰からの脱却——しかし“完全デジタル”にはできない理由
なぜ「勘と経験」だけに頼れない時代なのか
最近のバイヤーは、ネットで情報収集し、複数のサプライヤーを比較検討した上で、価格交渉や提案依頼をかけてきます。
また、新規取引窓口も、現場担当者レベルのみならず、購買本部や経営層、DX推進部門の関与も増え、これまでの「現場感覚一発勝負」だけでは通用しなくなってきています。
サプライヤー側としては“偶然訪問したら案件になった”“昔から付き合いがあるから自然と取引が続く”といった手法から、より計画的・科学的な販促に舵を切る必要があります。
「完全デジタル化」が現場に合わない根本的な理由
とはいえ、製造業の多くが“アナログ”から抜け出せないのには明確な理由もあります。
一つ目は、「取引リスクの大きさ」です。
受注一件あたりの金額規模や生産計画変更のインパクトが他業種と比べて格段に大きいため、「本当に信頼できる会社か」「長期的に安定供給できるか」といった現場現物現実の三現主義が重要視されています。
二つ目は、「ものづくり=現物ありき」の文化。
データやシナリオだけでは語れない現場の知見と、それを担保する人間関係が今も色濃く残ります。
こうした背景を理解せずに単にMAを「効率化の魔法の杖」として導入しても、現場の信頼や受注には結びつきにくいのです。
バイヤー視点で考える:MA導入サプライヤーに求めること
発注側(バイヤー)のニーズは「提案力」と「安心感」
バイヤーがサプライヤーに求めるのは、単なるスペックや納期だけではありません。
「うちの課題にどう寄り添ってくれるか」「提案力はあるか」「万が一の時にきちんとフォローしてくれる現場力があるか」——こういったニーズは、デジタル施策だけでは掴みきれない部分です。
MAで単純に一斉配信された案内や、ありきたりな商品の紹介メールでは、忙しいバイヤーの目には止まりません。
データ×人間味——「ハイブリッド販促」へ移行する発想
製造業の販促は、“出会い”と“信頼の証明”が極めて重要です。
MAツールでリードナーチャリングを行いつつも、「Web展示会で興味を示した担当者へは現場技術者との面談招待」「過去に相談があった企業には個別提案書送付」といった、人間味あるハイブリッドなフォローが効果的です。
また、MAを通じて得られるデータ(開封履歴・関心領域)の解析結果を活用して、対面営業時の会話の質を上げる、提案内容の精度を高めるといった使い方が、現場では最も納得感が得られるはずです。
成果を出す製造業MAの“正しい運用”アプローチ
1. 組織を巻き込む“現場起点”のMA設計から始める
製造業におけるMA導入は、まず「現場がどこに困っているのか」「どの情報を可視化・共有したいのか」から逆算して設計することが重要です。
例えば、営業・技術・生産管理・品質管理部門まで幅広く巻き込んだペルソナ設計や、コンテンツのテーマ決定、顧客との接触ポイントの棚卸しを実施することです。
導入ありきではなく、現場に寄り添った全体設計が鍵となります。
2. 増やすべきは「顧客に使える具体的情報」
MAで成果が出ているメーカーに共通するのは、「課題・失敗例・FAQ・活用事例」など顧客が“本当に知りたい”情報を体系的にコンテンツ化し、継続的に発信していることです。
社内報や現場のナレッジを記事化、動画化し、技術コラムや生産プロセスの裏側等もドキュメントします。
単なる商品カタログではなく、“顧客目線でのメリットの明文化”を意識することが重要です。
3. 試行錯誤を繰り返せる文化醸成
最初から完璧を目指さず、少量の顧客・プロダクトでABテストを重ねながら、PDCAを高速で回すこと。
月次で改善し、現場での成功事例や失敗経験を共有し合うことで、部署間・世代間の心理的な壁を取り払っていく工夫も求められます。
「失敗してもOK」「小さな成功体験をチームで称賛する」など、昭和的な“失敗NG文化”からの脱却も成果創出には重要です。
まとめ:製造業MAは「人間力×デジタル力」の融合から生まれる
MAは製造業の営業・販促活動を大きく変え得る一方で、「成果が感じられない」と諦めがちな企業が多いのもまた現実です。
その本質的な理由は、
・ターゲティング設計やデータ整備の未成熟
・現場文化や取引リスクへの過度なアナログ信仰
・バイヤー視点の発信ノウハウやコンテンツ不足
など、業界特有の構造に由来します。
一方で、現場起点の発想で、最小限始めてみる勇気、部門を越えた知見の共有、「人の想い」と「データ活用」を融合する姿勢があれば、絶対に製造業でもMAは機能します。
“デジタル化するからこそ現場の知恵が活きる”—そんなMA活用の新しい地平を、皆さんの現場から切り開いていただきたいと思います。