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なぜ製造業ではブルーワーカーの強みが属人化しやすいのか

目次
はじめに
日本の製造業は、世界的に見ても高い技術力と品質を誇っています。
その根底には、現場で黙々と働くブルーワーカーの存在が欠かせません。
しかし近年、この“ブルーワーカーの強み”が属人化しやすいという課題がますます顕在化しています。
なぜ、製造業では属人化が根深いのでしょうか。
本記事では、現場の実感や業界の歴史的背景を交えて、実践的な視点からその原因と対策を考察します。
ブルーワーカーとは?属人化とは?
ブルーワーカーの定義
ブルーワーカーとは、主に工場や建設現場などで現場作業を担う労働者を指します。
機械オペレーター、溶接工、組立工、検査員などが代表例です。
彼らは直接“モノ”に触れ、製造の質と効率を支える重要なポジションです。
属人化とは
属人化とは、スキルやノウハウが特定個人に依存し、組織内で共有・標準化されていない状態を指します。
その人がいなければ業務が成り立たない、または大きく効率や品質が低下するリスクが高い状況です。
製造業では、この属人化が顕著です。
属人化しやすい背景
アナログ文化と現場主義の伝統
日本の製造業の現場では、「現場こそすべて」という精神が今も根強く残っています。
業務は口頭伝承やOJT(On the Job Training)で進められることが多く、マニュアルや標準作業手順書があっても、それ以上に“現場のコツ”や“職人技”が重視されます。
この“空気”がノウハウの言語化、共有化を難しくしています。
設備や工程の多様化・個別性
工場ごと、工程ごとに使われている設備や作業手順が微妙に異なるケースが多く、マニュアル化が追いつかない現実があります。
また、古くから稼働している機械は、熟練工しかコントロールできない場合も珍しくありません。
設備の更新や自動化が遅れている現場ほど、属人化は深刻です。
昭和的な現場力の過信
「目で見て、音で感じて異常を察知する」「手の感触で微妙な差を読み取る」といった職人技が、いまだに重要視されがちです。
こうしたスキルはデジタル化やAIに置き換えにくく、人に頼るしか選択肢がありません。
イレギュラーなトラブルや復旧の際、“あの人じゃないとできない”状況が発生します。
人事制度や評価の側面
属人化していると、その人の存在価値が高まり、昇給や昇格がしやすい傾向が業界的に染み付いています。
逆に、ノウハウを“ばらまく”ことに対するインセンティブが少ない。
また経営層も短期的な生産性や品質指標に追われがちで、組織的な知恵の共有や人材多能化への投資が後回しになりやすいです。
属人化によるリスク
・退職・異動で“技”が消える
熟練工が退職または異動すると、そのノウハウが喪失します。
引き継ぎ期間が十分に取れない場合、生産効率や品質が著しく低下する恐れがあります。
・人材育成・多能工化が進まない
若手従業員や新入社員が育ちにくく、後継者不足が慢性的になります。
属人化が進むほど、特定作業者にしかできない工程が増え、現場の柔軟性が奪われます。
・サプライヤー/バイヤー間のコミュニケーション障壁
サプライヤーが部品や半製品を納入する際、「あそこの“○○さん”じゃないと話が通じない」ケースもあります。
バイヤーから見ても、個人依存はサプライチェーンリスクになります。
・イノベーション阻害
新技術への移行やプロセス改善の妨げとなり、同業他社やグローバル市場への競争力低下にもつながります。
なぜ解消が難しいのか
属人化を解消したい、標準化したいという声は経営層からもよく出ます。
しかし、現実には簡単には解消できません。
理由には以下が挙げられます。
伝統文化・慣性の壁
“手取り足取り仕事を教える”“見て覚えろ”の信仰が現場に根付いており、個人ノウハウの暗黙知化が常態化しています。
「これまでもこうやってきたから」という意識が強く、変革への心理的障壁となっています。
マニュアルや標準作業化の難しさ
全てをテキストや図解で共有することは困難です。
現場特有の細かな勘所やニュアンスは、紙面化・デジタル化だけでは伝わりきりません。
自動化に踏み切りたくても初期投資やROIの問題が立ちはだかります。
現場負荷への懸念
標準化プロジェクトやデジタル化は、現場に追加負荷を強います。
「忙しいのに余計な仕事を増やすな」という現場の声も根強いです。
属人化とどう向き合うか
では、この構造的な属人化にどう取り組むべきでしょうか。
管理職や工場長、バイヤー、サプライヤーの現場目線で具体策を考えます。
1. 暗黙知の形式知化に挑む
インタビュー、動画撮影、現場作業の逐次記録など、形式知化への工夫が重要です。
“この作業のここが一番難しい”“ここはわかりにくかった”など、現場のリアルな声を拾い上げ、できるだけ共有します。
動画やチャット、写真付きトーク、マイクロラーニングの活用も効果的です。
2. “なぜなぜ分析”の徹底
現象やトラブルが起きたら、属人技術が介入したポイントも「なぜ?」を深掘りし、その背景・コツをドキュメント化します。
単なる標準作業書だけでなく、“落とし穴”や“職人の工夫”も併記しましょう。
3. シャドーイング・伝承の仕組み化
新人・若手・転職者がベテランの“横”につき、リアルタイムで作業を見て学ぶ仕組みを制度的に設けます。
その際、「なぜ今この動きを取ったのか」を口に出してもらい、経験値を明示化させるのが重要です。
4. インセンティブ設計の見直し
ノウハウの共有や多能工化に積極的に貢献した人を評価する制度へシフトします。
個人の“職人技”自慢より、チーム貢献や知識循環を評価する仕組みが不可欠です。
5. 自動化・デジタル化への着実な投資
IoT、センサー、AI画像認識、ロボットなど最新技術の導入で、“人の勘”に依存しない工程を増やします。
完全自動化は難しくとも、部分的な支援や“気づき”の強化をコツコツ進めていくべきです。
6. サプライヤーとも連携を強化
サプライヤーとしては、「この現場特有のルールやコツは何か?」「なぜその工程が必要なのか?」を能動的にヒアリングし、理解を深める努力が重要です。
一方でバイヤー側も、工程やノウハウを見える化、共有化し、属人リスクを下げていく努力が信頼関係の構築につながります。
まとめ
製造業でブルーワーカーの強みが属人化しやすいのは、長い年月をかけて積み上げてきた現場主義、アナログ文化、多様な工程や装置に起因しています。
一方で、現場に根ざした“現場感覚”や“臨機応変さ”は、今後も完全になくなることはないでしょう。
肝心なのは、属人化を“敵”とするのではなく、それがもたらすリスクを最小化しつつ、現場の強みを組織全体の強みに昇華していく視点です。
今こそ、ブルーワーカー個人の知恵や工夫をオープンにし、属人技から組織知へのアップデートを始めるタイミングです。
製造業で働く皆さん、バイヤーやサプライヤーの皆さん――それぞれの立場から“脱・属人化”へ一歩踏み出し、持続可能な現場力の強化を目指しましょう。