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製造業で人事DXを進めようとした瞬間に現場が戸惑う理由

目次
はじめに:製造業で進む人事DX、その必要性と課題
近年、製造業界では「人事DX(デジタルトランスフォーメーション)」の波が急速に押し寄せています。
人材不足、高齢化、働き方改革、そしてグローバル競争の激化。
あらゆる課題をクリアするため、採用・評価・教育・労務管理などにITやデジタルシステムを導入し、より戦略的人事へと進化することが求められています。
しかし、工場や現場でいざ人事DXを推進しようとすると、「なんだか面倒そう」「現場がわかっていない」などと戸惑いや反発が少なくありません。
本記事では、20年以上の現場経験に基づき、その背景と製造業特有の人事DX推進に立ちはだかる“昭和的カルチャー”、業界動向、現場目線での実践的な乗り越え方を詳しく解説します。
現場が人事DXに戸惑う主な理由
1. 紙・Excel文化が根強く残る理由
製造業の現場では、未だに紙の勤務表や手書きの日報、Excelで作った独自のチェックリストが根強く使われています。
これらの仕組みは一見非効率に思えますが、長年の運用実績と属人化されたノウハウが詰まっており、現場担当者にとっては「これが一番やりやすい」。
サインや押印文化も昭和から続く信頼の証であり、やめられない理由となっています。
DX化は「今まで通りができない」ことへの不安や、「新しいシステムに仕事を教えられる」ことへ無意識の抵抗感を生み、「現場のことを知らない本社がまた余計なことを……」という心理的ハードルとなって表面化するのです。
2. ITリテラシー格差と学習意欲の壁
現場にはベテラン作業員や熟練技能者が多く、「IT」と名の付く研修や新システムに消極的な層がいることも特徴です。
新しいWebシステム、クラウドサービス、スマホアプリ……、聞いただけで構える人が少なくありません。
加えて、労務が忙しい現場では「どうせまたうやむやになるだろう」と身構える人も多いため、教育や定着活動への参加意欲をどう喚起するかが課題となっています。
3. デジタル導入の意義が現場に伝わっていない
経営層は「人件費削減」「生産性向上」「データの可視化」といった目的でDX化を推進しますが、現場はその意義や、実際に自分たちの業務がどう良くなるのかを具体的にイメージできません。
「デジタル化すれば楽になる」と聞いて導入したものの、入力作業が増え、本来の作業時間が削られている……。
そうした「名ばかりDX」の苦い経験が積み重なり、「また余計な仕事が増える」と誤解が定着してしまっています。
昭和的なアナログ組織文化と人事DXの衝突
“人を見る目”と“紙ベース”評価への信仰
「現場は見てナンボ」「あの人が言うなら間違いない」――製造業の人事評価になくてはならないものとして、長年育まれてきた“人を見る目”と経験則があります。
評価基準や労務管理をシステムに任せることで、「わかっていないAIやシステムに自分の仕事を判断されたくない」と感じる方も多いものです。
書類ベース、逐一のサインや押印という形骸化しながらも根付いた運用も、いまだ現場では「唯一無二の正解」となっているケースは多々あります。
また、製造業の多くの現場のリーダーや中間管理職(班長、係長クラス)は自分自身がこの昭和的価値観で評価され、成長し、“現場の人”として認められて昇進してきた歴史があり、その基準の見直し=自己否定のように感じることすらあります。
現場への「見える化」過信と、“ITツール=監視”の誤解
「IoTや勤怠の見える化でサボりがバレる」「現場が何もかも監視される」「自由度が奪われる」――
こうした漠然とした“デジタル不信”が、現場の人間関係やコミュニケーションの妨げになることもよく見られます。
本部や本社主導のDX推進と、現場を守ってきた経験豊富な管理職が衝突することで、現場の本音が埋もれてしまい、導入効果が半減してしまう――これも「昭和アナログ組織」ならではの落とし穴といえるでしょう。
今、現場で起きている“DX幻滅”の具体例
新たなシステム導入で現場の負担がむしろ増大
・給与・勤怠システムが最新クラウドへ移行したはずなのに、紙のタイムカードも残り「二重管理が生まれた」
・人事データベース構築のための初期情報入力が膨大で、他の仕事が後回しに
・英語ベースや横文字の多いUIが使いにくく、マニュアル作成や現場教育に想定以上の手間がかかった
こうした“現場とフォーマットが合わない”、“入力を強いられる”などの「導入すればするほど不便」現象は、推進担当者が現場ヒアリング・業務棚卸しを飛ばして進めたケースで多発しています。
人員分析やスキル管理、ベテラン技能の「見える化」への戸惑い
・細分化されたスキルセットの登録によって「自分の経験が過小評価される」「マルチタスクの強みが見えない」と不満に
・技能認定の定量化で、本来の“現場仕事ぶり”や“目利き力”がスコア化されない
・経験年数や資格が数字で横並びになり、長年の現場信頼や小集団活動でのリーダーシップなどが評価されなくなった
人事評価の“数値化”はフェアのようで細やかな現場状況をすくいきれず、「自分たち現場のことが見えていない」と受け取られがちです。
現場で人事DXが根付き始めるためのポイント
現場の“あるある”や成功体験に共感し、システム導入へ繋げる
デジタル化の目的は「現場作業を楽にすること」「本質的な付加価値業務に時間を割く」ことです。
そのためには、現場目線での“困りごと”や“ちょっとした不便さ”を拾い上げ、「この作業、本来はやらなくて良いんだよ」と伝えながら進める姿勢が欠かせません。
例えば、
・「紙提出ばかりで休暇申請が遅れる」
・「班長が手作業で勤怠を集計している」
・「作業台帳や資格管理がバラバラ」 …など、現場でよく起きている無駄を“あるある”エピソードとして共有し、身近なところからDX化の効果を実感してもらうことが大切です。
小さな“時短”や“面倒解消”を継続的に体験してもらう
「うちの現場でも、ペーパーレス化でこの業務が30分短縮できた」
「スマホ申請で管理職の集計作業が半分で済んだ」
「資格更新漏れが通知されるようになって、手戻り作業がなくなった」
このように“小さな成功体験”を積み重ね、現場の声や気づきをシステム運用にフィードバックすることで、自分たちの手間やストレスが減ることのありがたさ=人事DXの価値だと納得してもらえます。
現場リーダー・中間管理職と二人三脚で企画する
人事DXは、現場リーダー層の協力が不可欠です。
「システム化ありき」ではなく、その部門で長年続いている運用の工夫や“現場ルール”にも耳を傾け、現リーダーの体験や知見を拾い上げながら進めることで、現場に受け入れられる施策となります。
リーダー層を「現場改革推進役」と位置付けて成功事例を発信し、現場で“デジタルの強み”を伝道する存在となってもらうと、協力体制も生まれやすくなります。
昭和から抜け出せない業界動向と、バイヤー/サプライヤーへの示唆
“アナログ依存”がサプライチェーン全体に及ぼす影響
製造現場の人事DXの遅れは、しばしば全体のサプライチェーンにも波及します。
例えば、受発注システムや教育履歴管理、人員配置や技能者派遣など、調達購買・人材派遣・OEM先などサプライヤーとの連携にもアナログ工程が残ることで、データの不整合やリードタイムの延長、コスト増につながります。
サプライヤー側から見れば、「この工場はどこまでDX対応しているのか」「スキル管理はどんな基準か」が明確に見えないと、取引リスク評価や品質・納期保証をする際にも判断材料が不足します。
また、現場が紙やエクセルでしか管理していない技能情報・人員配置では、外部人材調達や急な増産への対応力が低下し、バイヤーの要望に柔軟に応えることも難しくなります。
バイヤーの目線で考える競争力と“現場共創型DX”
一方、調達購買などのバイヤーの立場で見ると、サプライヤーやアウトソーシング先の“現場DX成熟度”は選定基準にもなりつつあります。
「人手不足時代に、どの程度まで人事・技能を見える化し、生産性向上や労務コンプライアンスに取り組んでいるか」-
デジタル導入がにわかに企業価値や、優良サプライヤー認定の指標になり始めています。
バイヤーからの“現場を知った提案目線”としては、サプライヤーと二人三脚でDX化を進め、教育支援やデータ連携を可能にすることで、全体最適・取引拡大・品質安定に繋がるwin-winの関係が築けるのです。
まとめ:現場ならではの壁を超えて、真の人事DXを実現しよう
人事DXを現場に根付かせるには、「昭和的現場文化の良さ」「現場目線の知恵」を尊重しつつ、小さな成功体験の積み上げ、そして現場リーダーと並走する姿勢が重要です。
一方で、調達・生産・品質・自動化の全体最適を見据え、アナログに安住せず“現場共創型DX”を仕立てることが、今後の製造業のサステナブルな発展、競争力維持への第一歩となります。
「人事DX=現場改革」、そのスタート地点は、日々現場で働く一人ひとりの小さな気づきと前向きな変化から始まります。
自社・自部門の現状を見つめ直し、ぜひ“現場から発信し、現場で根付く人事DX”の道を一緒に切り拓いていきましょう。
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