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抄紙機部材管理が属人化しやすい理由

目次
抄紙機部材管理が属人化しやすい理由
製造業、とりわけ抄紙現場の長年の課題として、「部材管理の属人化」が挙げられます。
バイヤーや調達担当者はもちろん、サプライヤーの方にもこの現実は身近かもしれません。
なぜ、抄紙機部材管理という工程はこれほどまでに属人化リスクを抱えやすいのでしょうか。
現場で20年以上を過ごした私の経験から、現場目線のリアルな課題と業界動向を交えつつ、考察します。
属人化の根本要因 – 技術伝承と“無言の暗黙知”
膨大な部材点数と仕様の複雑性
抄紙機とは、何百、何千という部品・部材の集合体であり、消耗品や交換部品を頻繁に入れ替える必要があります。
各部材の寸法、材質、特殊な加工指示まで、仕様のバリエーションは想像以上です。
加えて、長年同じ機種を使い続けて細かなカスタマイズやローカル修正が加わるため、カタログ上の品番だけでは一致しない「現物合わせ」も珍しくありません。
このような個別最適化が積み重なると、部材仕様は紙上のマニュアルやERPだけでは網羅できず、どうしても現場の担当者の「肌感覚」や「職人の勘」に依存しがちです。
ベテランが持つ“現場ノウハウ”の壁
部材管理歴10年、20年クラスのベテランは、単に部品番号や発注タイミングを知っているだけでなく、「紙質に応じた微細な調整」「緊急時の代替策」「不良発生時の対応パターン」など、膨大なノウハウを無意識レベルで把握しています。
彼らの知識は業務マニュアルに起こしにくい、いわゆる“暗黙知”であり、定型化が極めて難しい。
このため、ベテランの退職と同時に属人化されたノウハウも失われ、現場はまた一から積み上げ直しを求められるケースが後を絶ちません。
なぜデジタル管理が進みにくいのか
「なぜ属人」から「なぜDXできない」へ
近年はDX(デジタルトランスフォーメーション)が日本のあらゆる製造現場で叫ばれていますが、抄紙機の部材管理が一筋縄でいかない理由は何でしょうか。
標準化の壁 – 旧式機械と独自カスタマイズ
昭和時代から続く抄紙現場には、何十年も前の機械が現役で稼働していることが少なくありません。
現行モデルや最新のシステムに基づく部材台帳では捕捉できない“裏品番(社内用語や独自ラベル)”が多用され、管理システムの標準化が機能しにくいのです。
ERPやSCMなどを導入しても最後は「現場のXXさんに訊かないと分からない」状態が根強く残りがちです。
現場とシステム部門のすれ違い
上層部は「デジタル化で生産性アップ」と言いますが、現場は必ずしもシステム化に前向きとは限りません。
細かい現場事情を反映してくれないシステムでは結局「エクセルでなんとかする」「ノートにメモ」の繰り返しで、デジタルツールが“二重管理”の原因にすらなっています。
システム開発側も、現場が求める柔軟性やアナログの良さを理解しきれず、使われないシステムが量産されてきました。
属人管理が招く現場の課題とリスク
慢性的なヒューマンエラーとブラックボックス化
特定の担当者しか知り得ない情報(例:隣接する別機の予備部材を代用した履歴等)は、時に重大なヒューマンエラーや事故に直結します。
また、在庫管理や部材調達がブラックボックス化し、原価や納期、在庫適正化といった経営判断も曖昧になります。
ベテラン退職ショックと継続的な組織知の消失
大手メーカーほど明確ですが、団塊世代の引退や若年層の採用難により、暗黙知の承継が途絶えています。
「OJTで何とかする」「背中を見て盗め」式では、今日の即応力・品質要求に応えきれなくなっています。
アナログとデジタルの共存による解決策
“現場起点DX”で属人化を脱却せよ
必ずしも「全部デジタル」「全自動」だけが正解ではありません。
属人化の背景に「現場のリアリティ」があるなら、その知見をどう組織知化(≒ナレッジベース化)するか、そのプロセスづくりこそが重要です。
現場の“声”を可視化するヒント
– 熟練担当者の定期聞き取りと作業動画のアーカイブ
– 失敗事例を集約する「部材対応Q&A」データベース
– 手書きノートや現物写真のデジタル保存とタグ化
– 予備部品の“なぜこの判断に至ったか”のストーリー記録
どれも小さな変化ですが、ボトムアップ型のDXは現場の自主性を損なわず、属人化から組織知への“橋渡し”となります。
サプライヤーとの“情報連携”もキーに
属人管理が進むほど、サプライヤーにも現場担当者から非公式チャネルで「急ぎでこれだけ手配できない?」といった依頼が入りやすくなります。
標準品とカスタム品の違い、細かな仕様意図をサプライヤーと共有することで、調達効率や品質トラブルの予防につながります。
見積依頼時には「なぜこの仕様が必要なのか」「現場でどう使われているのか」を明示して、共通理解を促すと、生産現場の柔軟性アップおよびトータルコスト低減に繋がっていきます。
抄紙機部材管理の“未来”と求められる人材像
今後の抄紙機部材管理には、ベテランのノウハウを吸収・整理できる「編集者型人材」、「現場に根ざしたエンジニアリング能力」、「システムと現場を繋ぐ統合力」が不可欠です。
買う側も売る側も「なぜこの管理が必要なのか?」を問い直し、属人化がもたらすリスクを、現場・経営・サプライヤーの三位一体で解消していくことが、競争力ある現場づくりの大きな鍵です。
また、アナログが根付く業界だからこそ、現場発のナレッジの蓄積とデジタルとの協調が、令和の製造現場を強くしなやかに進化させると考えます。
まとめ
抄紙機部材管理の属人化は、単なる「管理能力不足」ではなく、現場独自の知恵や工夫、“無形資産”が積み上げられた必然の産物です。
ベテラン頼みから脱却し、現場とデジタルの良いとこ取りを志向することで、一人ひとりが活かせる安全で合理的な工場運営が可能になります。
バイヤー、サプライヤー双方が情報をオープンに連携し、属人化のリスクを組織の競争力に変えていくチャンスだと考えます。
製造業の現場発展のため、地道かつ効果的な改善アクションをぜひ現場で実践してください。