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品質保証が設計レビューに必ず参加すべき理由

目次
はじめに:製造業の未来を左右する品質保証の役割
製造業は、長らくコスト削減や短納期化、生産効率の追求という課題と向き合い続けてきました。
「モノづくり大国」と呼ばれる日本にとって、品質は企業存続の根幹でもあります。
一方、現場では「品質保証部門は製品完成後に不具合をチェックする部門だ」と認識されがちです。
しかし、実は設計段階での介入こそが真の予防策となり、製造トラブルやクレーム、手戻りを劇的に減少させるカギとなります。
本記事では、20年以上の現場経験をもとに、なぜ品質保証が設計レビューに必ず参加すべきなのかを現場目線で深掘りします。
設計レビューにおける品質保証の立ち位置とは
設計レビューの本質―「転ばぬ先の杖」
設計レビューとは、設計途中や完成時に関係部門が集まり、課題やリスクを多角的に洗い出す場です。
調達や生産管理、品質管理、生産技術、人事、経理まで、広範囲の部門が参画することも珍しくありません。
しかし昭和から続く現場文化では、設計者・技術者が主役となり、品質保証は口出ししづらい雰囲気が根強いのも事実です。
それが重大な設計漏れや品質事故を招く原因となり、結果として会社の信用失墜や損失につながります。
品質保証が「事後部門」と誤解される理由
多くの工場、特に成熟したアナログ業界では「現場を知る職人の勘」を重視し、品質保証部門が設計初期から関わる風土が弱い傾向があります。
このような職人気質文化が残る組織では、品質トラブルが「出来てから考える」ものになりがちです。
その結果、「問題が発生してから対応する」コストは増大し続けます。
なぜ設計段階で品質保証が関わる必要があるのか
1. 品質トラブルの「80%は設計起因」
多種多様な業界経験で一貫して言えるのは、「出荷後に発覚する重大な品質トラブルの80%以上が設計段階の見落とし・誤判断に起因する」という事実です。
製図上では問題ないように見えても、
– 規格変更に未対応
– サプライヤーの工程能力無視
– 製造困難な図面寸法
– 安全要求のすり合わせ不十分
など、設計段階で防げたミスが多いのです。
2. 知見のサイロ化と「声なき失敗」
製造業はサイロ化、つまり部門ごとに情報や知見が閉じこもりがちです。
現場で発生している不具合や改善事例、過去の失敗が設計に十分伝わっていないことも。
品質保証は、現場や市場の変化を把握した「失敗データベース」を持つ貴重な存在です。
この知見が設計に加わることで、同じ失敗を繰り返さず、無駄なコストを未然に防ぐことができます。
3. サプライチェーン全体の最適化に寄与
設計レビュー参加は、部品点数や構造のシンプル化、調達可能な材料・工程の採用など、サプライチェーン全体の最適化にも直結します。
購買や調達部門だけでは見抜きにくい「隠れたリスク」を、品質保証が早期に指摘できるのは大きな強みと言えるでしょう。
設計レビューに品質保証が参加する効果とは
・設計ミス早期発見=全体コスト低減
設計段階での品質保証の介入により、
– 重大ミスの手戻り工数削減
– 緊急対応・カスタマーサポート費用削減
– 市場回収・リコールリスク低減
など、全社的なコスト低減につながります。
イニシャルコストを抑えるだけでなく、設計変更や追加部品購入など、タイムリーな判断が可能となります。
・品質文化と社員教育にもプラス
現場で得た「生きた品質知識」を横断的にフィードバックできれば、組織全体の品質レベルが底上げされます。
特に若手設計者や複数部門による混成チームでは、品質保証の参加による教育的効果も期待できます。
・顧客満足度と競争力の向上
新たな製品や仕様変更を伴うプロジェクトでは、設計段階で顧客要求を正確に織り込むことが鍵を握ります。
品質保証が「顧客代理人」として設計評価を行うことで、後出しの仕様変更や追加交渉も減り、顧客満足度向上に繋がるのです。
現場目線の成功・失敗事例
成功事例:量産直前の「重要指摘」で大損失回避
ある大手メーカーでは、新製品の設計段階に品質保証担当が参加することになりました。
部品の材質表の微細な誤記載と、公差設定の不備を指摘。
調達不能部品の採用による納期遅延と、組み立てミスによる製品不良を未然に防ぎました。
結果、数千万円規模の損失回避と、顧客信頼の維持に繋がったのです。
失敗事例:品質保証排除で手戻り生産・顧客クレーム
一方、設計レビューに品質保証が未参加だった場合、新規顧客案件で「納入後すぐに全数リコール」という事態が起こった例も。
設計者自身の判断だけで寸法規格を決め、サプライヤーの加工能力・検査手順を考慮していなかったのが主因です。
多大なコスト増とエンドユーザーからの信頼失墜を招き、その後の取引継続にも影響しました。
デジタル時代の設計レビュー—アナログからの脱却
DX推進でも「人の目、現場感覚」は不可欠
デジタルツール(PLM、PDM、CAEなど)により、設計レビューもオンライン化が進みつつあります。
AIやシミュレータで自動的にチェックできる領域も増えましたが、現場実体験に基づく「ちょっとした違和感」や「経験則による提案」は、今なお人間にしかできません。
特に日本のアナログな工場では、図面情報の非共有や伝統的な意思決定など、「昭和のしきたり」が根強く残っています。
その中で品質保証の声を設計現場に繋ぎ、変革の旗手となる役割が今後ますます重要になるでしょう。
バイヤー・サプライヤー視点から見た設計レビューの意義
バイヤー(調達購買)から見たメリット
設計レビューに品質保証が関わることで、無理なスペック、供給リスク、人件費の増加などが早期発見できます。
また「品質保証がOKした」というエビデンスは、顧客対応やサプライヤーネゴシエーションでも有効な武器となります。
サプライヤーにとっての安心材料
サプライヤー側から見ても、設計段階で実現性や品質リスクに意見できる体制は大きなメリットです。
不合理な設計要求や検査項目で困ることが減り、パートナーシップ強化・納期遵守の確率が向上します。
「設計=発注=トラブル発生後に調整」ではなく、「設計=品質保証=サプライヤー意見反映」の三位一体が理想なのです。
品質保証が設計レビューに必ず参加するために
現場で始められるアクション
– 設計レビューの標準フローに「品質保証出席必須」明文化
– レビュー前に現場・品質保証の声を集約する仕組みづくり
– 不具合事例や過去の教訓を「知のデータベース」として活用
これらはどの規模の企業でも今すぐ取り組める運用です。
経営層・管理職が果たすべき役割
– 「品質は全社の責任」文化の醸成
– 部門横断での設計レビュー体制強化
– 成功・失敗事例の水平展開と継続的な改善
このような支援が、品質保証の知見を最大限活用し「企業競争力の源泉」とする近道です。
まとめ:未来のモノづくりへ—品質保証の真価を発揮せよ
設計レビューへの品質保証の参加は、目先の手間や「口うるさいチェック役」というネガティブイメージを横断し、時代遅れなアナログ思考からの脱却をも意味します。
現場のリアルな知見こそが最強の予防策となることを、製造業に携わるすべての方に再認識していただきたいです。
失敗から学び、部門を超えた知恵を結集して、共に競争力ある日本のモノづくりを次世代へ繋げていきましょう。
品質保証が設計レビューに「必ず」入り込む。
これは未来の工場における、最大の品質・コスト競争力への第一歩なのです。