投稿日:2025年12月14日

品質保証がデータより“現場の声”を重視する理由

はじめに

製造業の現場では、品質保証という言葉が日常的に使われています。

品質保証(Quality Assurance:QA)は製品の信頼性や安全性を確保するための仕組みであり、多くのメーカーがデータ分析や統計的手法を駆使して品質の維持・向上に努めています。

一方で、現実の現場では「データ」よりも「現場の声」を重視する傾向が強く見られるシーンが少なくありません。

なぜ多くの工場が、膨大なデータやシステマチックな管理よりも、現場従業員の経験則や肌感覚を優先するのでしょうか。

本記事では、私自身が20年以上にわたり大手製造業の現場で培った経験や知見をもとに、「品質保証がデータより現場の声を重視する理由」を実践的な視点から掘り下げて解説します。

バイヤー、サプライヤー、そしてものづくりに関わるすべての方へ役立つ内容を目指しています。

現場の声とは何か

現場の声とは?

現場の声とは、工場の従業員や作業者が日々の業務の中で感じた違和感、ヒヤリハット、手順上の微妙な変化、小さな不安や気づきを指します。

製品の組み立てラインに立つ作業者、検査担当、設備保全員、現場管理者など直接モノに触れる人々が発する「ちょっとおかしいな」「いつもと違う」「違和感あるね」といった発言や所感です。

データだけではつかめない“異常”や“予兆”

近年ではIoTやDXの進展により、ライン稼働率、不良率、異常検知などを詳細なデータとして収集することが可能です。

しかしながら、現実には数値化できない違和感や、定量データに表れない「微妙な変化」に品質問題の予兆が潜んでいることがあります。

たとえば、組み付け時の「いつもより工具がやや入りにくい」「ネジの締まり方が少し違う」「音やにおいが微妙に異なる」といった感覚的な情報は、現場の経験者だからこそ察知できるものです。

なぜ現場の声が重要なのか

現場の声は“危険信号”の最前線

製造現場では工程ごとに異なる条件や、現場固有の癖が多く存在します。

データ化・数値化できる項目には限界があり、機械のわずかな振動や作業環境の空気感、熟練作業者の手の感覚などは数値として捉えにくいのが現実です。

現場の声は、こうした「サイン」をいち早く察知し、工程の変化を警告する役割を果たします。

過去に私が工場長として携わった現場でも、「なにか音がおかしい」と保全員が一言つぶやいたことで、重大な設備故障を未然に防げたケースが何度もありました。

昭和から変わらぬ“肌感覚”の知恵

特に昭和生まれのベテラン勢は、自身の感覚と経験則に絶大な自信を持っています。

それもそのはず、設備や管理手法が今ほど高度化していなかった時代、工場の安全や品質は“現場勘”に支えられてきました。

現代のデジタルツールだけでは補えない熟練技術や五感の知恵が、依然として強く根づいているのです。

品質保証部門も“現場主義”

品質保証部門は往々にして現場を歩き回り、「現物」「現場」「現実」(いわゆる“三現主義”)を徹底します。

机上分析やパソコン画面のデータだけで判断することはほとんどなく、実際にラインに立ち、現場従業員と対話を重ねて“生の声”を吸い上げます。

こうした地道な取り組みが、現場力や品質力の土台となっています。

現場の声を活かした品質保証の具体的プロセス

定例ミーティングで声を収集

多くの工場では、「朝礼」「工程会議」「ヒヤリハット報告」などミーティングを通じて、作業者の気づきを集める仕組みが根付いています。

品質保証担当者はこの場で従業員一人ひとりから直接気になる点を聞き取ります。

データに顕在化していない“やばそうな予兆”も拾い上げ、現場巡回や工程監査に反映させます。

ライン診断と現場ラウンド

現場保全や品質部門が定期的に行う「ライン診断」は、じつは“現場の声”を聞くための大切な活動です。

設備の状態だけでなく、オペレーター・保全員のその時々の“表情”や“しぐさ”が、実際の異常を感じ取るヒントになります。

こうした「五感による観察」と「ヒューマンインタフェース」が密接に品質につながっています。

現場の声に基づいた即時アクション

「A工程のこの段取り、やりにくい」という声が出た場合、即座に不具合発生防止策やトライアルを実施します。

現場をよく知る作業者のフィードバックから改善案が生まれ、大きな不良流出を未然に防ぐ事例は枚挙にいとまがありません。

現場の声が改善サイクルの始動点となるのです。

現場の声とデータの“バランス”

デジタルシフトが進む時代の葛藤

近年、IoTセンサーやAI分析などを用いた製造現場のデジタルシフトが加速しています。

多品種小ロット化や生産変動の増加により、「現場の勘」だけでカバーしきれない分野も増えてきました。

とはいえ、数字やグラフには表れない“あれっ?”という違和感をデータは完全には捉えきれません。

「データ+現場の声」が品質を守る

理想は、両者の“いいとこ取り”です。

データが示す傾向や異常値に現場の声を重ね合わせることで、機械的な判断ミスや過剰反応を防ぎながら、真の品質問題を迅速につかむことができます。

たとえば、不良率が突発的に上昇した場合、現場の声から“なぜそうなったか”の背景情報を得て、再発防止や改善措置へとつなげていくのです。

昭和の現場文化と現代の技術革新

アナログな現場文化の価値

高度成長期から続く昭和の現場文化は、「人」の感性を大事にするものです。

QCサークル活動や小集団改善、カイゼン提案など、現場発信の仕組みは、いまなお多くの工場で当たり前のように機能しています。

昔ながらのやり方に固執しすぎるのは危険ではありますが、“現場が主役”という姿勢は不変の価値と言えます。

現代はITと現場力の融合を

DX推進やAI化の波のなか、いかに「現場力」と「デジタル」を融合させられるかが、今後の品質保証の成否を左右します。

「現場はデジタルに負ける」と悲観する必要はありません。

むしろ、現場作業者の知見や勘をデータ化し、AIと掛け合わせることで新しい品質マネジメントの地平が開けます。

人財育成がカギ

現場の声をいかに次世代へ引き継ぐか。

これも今後の課題です。

熟練者のノウハウを形式知化し、若手や新人が「違和感」を察知できるようなOJTや現場巡回を重ねていく文化を育てることが、DX時代でも求められています。

サプライヤー・バイヤー視点での“現場の声”活用

サプライヤーに求められる現場情報の共有

部品や素材を納入するサプライヤーは、バイヤー(購買担当)が求める「品質保証」にどう関わっていくべきでしょうか。

一つのポイントは、「現場で起きていること」を正直かつタイムリーに共有することです。

たとえば納入部品に対し「ここ最近、寸法測定の微細なばらつきが多い」「素材の肌感覚がやや変わったようだ」といった生の現場情報を、バイヤーや顧客へ事前に報告します。

これが品質トラブルの未然防止や、信頼関係強化につながるのです。

バイヤーの“現場目線”要求

バイヤー自身も、単に帳票やデータだけでなく、サプライヤー現場がどんな状況かに“感度”を持つことが重要です。

現地監査や生産現場の定期訪問では、作業者の声や困りごとをヒアリングし、サプライヤーの問題意識や現場文化を理解する。

こうした現場密着型の購買スタイルが、強いサプライチェーンを育てる基盤となります。

まとめ:現場の声を未来につなぐ

製造業における品質保証は、データやシステム化の進展がいくら進んでも、最終的には“ひと”の感性や気づきを無視することはできません。

現場の声を“雑音”や“空気感”として一蹴せず、経営や品質保証の中心に据えるべき理由は、そこに本質的なリスク予兆や改善ヒントが山積しているからです。

バイヤーもサプライヤーも、モノづくりの現場で起きている“リアル”な声に耳を傾け、デジタルの力と組み合わせていくことが、これからの製造業の発展に不可欠です。

現場の声をみんなの財産として、ぜひ未来へと受け継いでいきましょう。

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