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“偶発不良”が最も解決しにくい理由

目次
はじめに:製造業を悩ます“偶発不良”とは何か
製造業の現場では、日々さまざまな不良が発生します。
その中でも特に厄介で、多くの現場担当者や管理者、バイヤーを悩ませ続けているのが“偶発不良”です。
偶発不良とは、大量生産する中で、ごく一部の製品だけに偶然発生する再現性の低い不良のことを指します。
同じように作っているはずなのに、なぜか“たまに”しか出現せず、発見も原因究明も困難です。
この記事では、なぜ偶発不良が解決しにくいのか。そして、現場ではどのように立ち向かうべきか。
長年工場現場と向き合ってきた立場から、バイヤーやサプライヤーの双方へ向けて、実践的なヒントと業界動向も交えながら解説します。
偶発不良の特徴:再現性のなさ・発生頻度の低さが生む“闇”
なぜ“偶発”なのか?原因の特定が困難
偶発不良の最大の特徴は、その言葉どおり“たまたま起こる”ことです。
生産ラインを流れる1万個に1個だけ、検査や納品後に顧客から“これだけ変だ”と指摘されるケースも珍しくありません。
この希少性こそが解決を難しくしています。
例えば、連続して多発する不良であれば、要因分析(設備・材料・手順など)を一つずつ潰していけば一定の方向性が見えます。
しかし偶発不良は、その“発見プロセスそのものが偶然”で構成されているため、再現試験も困難なのです。
“再現実験”が成立しづらい現場
現場でトラブルが発生した際、「もう一度やってみて再現できるかどうか」をよく試みます。
しかし偶発不良では、その方法がほとんど通用しません。
1万個流して1個出るかどうか、場合によっては数十万個に1回しか起きない例もあり、検査や実験による原因追及が極めて非効率です。
そのため、偶発不良には「試験のためのロット製造」「再現まで長期間の待機」「シミュレーションや統計的手法の限界」など、コストや人手に限界を感じる場面が多くなります。
業界に根付く課題:昭和的な職人頼みの罠
“勘と経験”が通じない領域
日本の製造業、特に中小工場や老舗の現場には長く「職人芸」と呼ばれる目利きや勘、経験に頼る風土が根づいています。
たしかに量産初期の品質づくりやトラブル対処において、ベテランの知見が活きる場面は少なくありません。
しかし“偶発不良”においては、このアナログなやり方が大きな壁になります。
頻度も原因も読めず、今までの経験や“お作法”だけで対応しきれない。
しかも、現場担当者の入れ替わりや高齢化により、「根本的ノウハウの継承も困難」という問題とも隣り合わせです。
アナログ文化が“再発防止策”を遅らせる
偶発不良が発生した場合、多くの現場では“とりあえずの再発防止策”を立てがちです。
例えば「出荷前検査を強化しよう」「一時的に外観検査員を増やそう」「要所要所でサンプリング頻度を上げよう」といった具合です。
これらは一時しのぎにはなりますが、根本原因が特定できていないまま運用を強化しても、根絶には至りません。
またアナログ作業でのチェック体制では、人為的な見落としや作業者依存の幅も大きく、真の解決とはほど遠いのが実情です。
偶発不良の解決が難航する3つの本質的な理由
1. 原因が“重層的”かつ“複雑”である
偶発不良は、単純な“○○が悪かった”という顕在化しやすい問題ではありません。
むしろ、“複数の要因が微妙なバランスで同時に絡みあったとき”にだけ発現するケースが多いのが特徴です。
たとえば、「温度の微妙な変動×特定のロット材料の性質×加工機の消耗×作業員のちょっとした手順変更」――このようにいくつものファクターが偶然同時に揃ったときだけ不良が発生します。
そのため、“表面的なチェック”だけでは見抜けません。
2. 検出・報告のタイミングが遅くなりがち
偶発不良はしばしば、納品後・市場流通後など「社内検査をすり抜けた後」に顧客から指摘されることが多いものです。
発生時点と報告時点が大きくズレ、材料ロットや作業記録もすでに廃棄・消失しているなど、追跡調査が非常に困難になるのも大きな問題です。
また、加工現場と品質管理、バイヤーやサプライヤー間での情報共有が滞ると、根本原因の情報が分断されてしまいやすいのです。
3. “ゼロリスク”を求める顧客要求とのギャップ
特に近年は、自動車や電子部品などの分野で「不良ゼロ」「トレーサビリティ完全保証」が強く求められるようになりました。
しかし偶発不良は性質上、“どんなに投資をしても完全ゼロは理論上困難”です。
この現場事情と顧客サイドの理想とのギャップが、お互いのコミュニケーションや品質対策そのものを難しくしている要因でもあります。
現場とバイヤーに求められる“ラテラル”な発想と行動
定量データ×現場ナレッジのブレンド
偶発不良に対する一番の対策は、アナログとデジタルの“いいとこどり”をすることです。
センサーデータやIoTによる微細なデータ収集、RPAやAIによる異常値検知など、状況証拠を積み重ねて傾向や予兆をつかむ努力が必要です。
しかし同時に、現場目線での些細な“気づき”(たとえば臭いや手応えの違和感、材料の微妙な艶感の変化など)をナレッジ化し、記録と共有をルール化しておくことも重要です。
両者のアプローチを“ラテラルシンキング”的に組み合わせることで、糸口が見えてきます。
“横の連携”――サプライヤー・バイヤー間のオープンな対話
偶発不良の最大のリスクは、サプライヤー側が“本当の事情”を隠し、顧客側も“とにかく叩けば治る”と誤解して責めることです。
これでは真の解決にはなりません。
バイヤー側からは「現場の困りごとやリスクについて、普段から小出しに共有してほしい」と声をかけ、サプライヤー側も「報告しづらいことを信頼して受け止めてもらえる風土づくり」に努める。
双方に開かれた情報連携が、実は偶発不良低減のスタートラインとなります。
不良発見時の“リアルタイムエビデンス”の重要性
偶発不良が発生した際には、「その時点の温度・湿度」「材料ロット」「機械アラーム履歴」「作業者の体調など、些細なことまで」リアルタイムに記録し、社内外と早期に共有する習慣をつけましょう。
これによって、一見関係ない“現象”が後々重要な手がかりになることもあります。
また、記録精度が高まれば再現実験やデジタル解析(AI解析など)の有効性も高まり、現場発のブレイクスルーにつながります。
今、取り組むべき新たな“地平線”
アナログ現場を“グレーゾーン観察力”で強化
現代の製造現場は「全自動化」や「完全見える化」を目指していますが、偶発不良の本当の源に迫るには、最前線の作業者が持つ“違和感探知力”、暗黙知(アンラーニングされていない知見)にも改めて注目する必要があります。
たとえば、「どの工程のどんな時が、なぜか不自然に感じるのか」「今までの製品と触感や音がほんの少し違う」といった何気ない情報を拾いながら、“小さな差異を記録する文化”を育てていきましょう。
多視点での“事象の目撃者”を現場に増やす
従来は「設備班」「品質管理」「作業者」など縦割りで動きがちだった情報収集も、今一度“全員が品質意識を持つ”方向へシフトする時代です。
意図的にローテーションを回したり、他工程を回覧させたりして、いろんな目線での“気づき記録”を増やす仕組みが効果を発揮するでしょう。
これはバイヤーや開発担当者にも言えることで、「現場見学」「工程会話」から一緒に不良リスクを見極め、共に考える姿勢を持つことが重要です。
“ノー完璧”時代の新・品質保証の考え方
偶発不良“ゼロ”は、理論上ほとんど不可能です。
重要なのは、“発生時の早期キャッチと、被害最小化の仕組み”です。
封入検査やAI画像検査、データトレーサビリティなどを積極活用しつつ、「どんなトラブルでも誤魔化さない」「隠さない」「保留をつくらない」文化への転換が、これからの工場運営に欠かせません。
おわりに:バイヤー・サプライヤー・現場、三位一体で新時代の品質管理へ
偶発不良が最も解決しにくい理由は、複数の要素が複雑に絡み合う“ブラックボックス”であるためです。
“たまたま”に見える一個一個の発生事象も、実は現場の“ちょっとした違和感”“断片的なデータ”“現場への信頼”の積み上げが突破口となります。
この難題に挑むには、“昭和的なアナログ職人頼み”と“ハイテク万能主義”の中間で、ラテラルに両者をつなぐ力。
そして“隠さず、恐れず、小出しで共有”できる三位一体のものづくり体制がもっとも重要です。
現場で働く皆さん、サプライヤー、バイヤー――。
今こそ“新たな地平線”を共に切り拓いて、高度な品質保証と働きやすい風土の両立を目指していきましょう。
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