投稿日:2026年1月11日

ロールフォーミングが内製化しにくい理由

はじめに――ロールフォーミングとは何か

ロールフォーミングは、連続した金属板を回転する複数のロールで次第に成形していく、非常に高度なプレス加工技術です。

建築資材のC型鋼やドア枠部品、車両や家電のフレーム部材まで、多様な業界でこの工法が重宝されています。

長尺で複雑な断面形状を高い寸法精度で生産でき、生産効率も極めて高いことから、大量生産品を中心に広く普及しています。

一方で、いざ自社工場内でロールフォーミングの生産ラインを新設し、内製化しようとなると、現実は想像以上にハードルが高いのが実状です。

本記事では、製造現場のリアルな目線で、なぜロールフォーミングが内製化しづらいのか、根本的な理由や業界特有の課題を深掘りしながら、今後内製化を進めていくための視点を提示します。

ロールフォーミングの工程と特性

高い設備投資と専用性

ロールフォーミングラインは、成形ロールの数や形状、配置だけでなく、アンコイラー(材料繰出し)、レベラー、パンチング設備、切断装置まで、部品仕様や生産量に応じて高度にカスタマイズされています。

一つの断面形状につき1ライン、1セットの専用ロールが基本となるため、設備投資が非常に大きくなりがちです。

例えば、小ロットの多品種生産や頻繁な段取り替えが必要な業態では、初期費用や保守費用と見合わないケースが多々あります。

この「設備の専用性と固定費の重さ」は、内製化の初動を強烈に阻む壁となっています。

匠のノウハウとアナログ運用の壁

ロールフォーミング独自の難しさとして、成形伸び・座屈・皺・亀裂等、材料と形状の微妙なバランスに基づいた「段階的な成形ノウハウ」が挙げられます。

金属の塑性流動は、CAE(シミュレーション)技術が進歩してもなお、現場経験者の手で数十~百回単位の修正テストを経て最適化される部分が大きいのです。

このノウハウは“町工場のベテラン技術者の頭の中”に留まっている例が多く、デジタル化・標準化がなかなか進みません。

そのため、「とりあえずラインを導入すれば何とかなる」では済まされないのです。

品質保証体制の構築の難しさ

ロールフォーミングは、部材の長さや断面形状、寸法公差、表面キズ、曲げ方向や厚み変動など、管理すべき品質項目が大変多岐にわたります。

しかも生産速度が速いため、不良が一気に量産されてしまうリスクも大きいのが特徴です。

これらをリアルタイムで監視・保証していく体制(自動測定機器やカメラ検査、現場員の目視確認のノウハウ等)の構築は、ロールフォーミング未経験企業にとって二重三重の難所となっています。

製造業界の“昭和的”背景とサプライチェーンの現実

長年の分業慣行とサプライヤー支配構造

日本の製造業界、特に金属加工業界では、ロールフォーミングのような専門プロセスについては「専業サプライヤーへ外注」が長年の常識でした。

大手自動車メーカーや家電メーカーなど最終組立メーカー(バイヤー)は、製造原価や在庫リスクを抑えるため、こうした部品の内製化には消極的な傾向があります。

ロールフォーミングサプライヤー側も、営業エリアを絞りつつ長年の取引を武器にコスト競争と納期管理で付加価値を出してきました。

この「職人技術 × 専業サプライヤー = 鉄壁の分業体制」が一種の慣性として業界に深く根付いており、バイヤー側の“内製化”の意欲も阻害しています。

サプライヤーから見た技術流出と囲い込み意識

サプライヤー視点でも、ロールフォーミングの「ノウハウこそが存在意義」という構造が固定観念として強く根付いています。

そのため、バイヤーからの技術移転希望や試作依頼に対しては「簡単に教えるわけにいかない」「調達価格での競争激化は勘弁して欲しい」といった警戒心が非常に高いのが実状です。

従って、仮にバイヤー側が「設備も用意した、図面も描いた、御社から技術指導して欲しい」と迫っても、サプライチェーンの力学上、簡単には情報開示が進みません。

これは一見するとクローズドな社会ですが、裏を返せば、独自の生産ライン維持のため現場ノウハウを守り抜く強い意思の現われでもあります。

最新の製造業トレンドとロールフォーミング内製化の突破口

グローバル競争と大手メーカーの内製化志向の変化

最近は、グローバルサプライチェーンの分断や海外調達リスクの高まり、生産ロットの小型化・多様化を背景に、内製化への流れも強まっています。

「属人的な一社依存に頼り切るのはリスク」
「自社で工程ノウハウを持たないと、急な設計変更や小ロット対応に遅れてしまう」

こうした危機感が著しく高まり、特に大手メーカーでは新設ラインの検討やラボ的なパイロットライン開発も増えています。

デジタル技術とオートメーションの活用

CAEやIoT、AI画像検査、デジタルツインといった最新技術は、ロールフォーミングの工場立ち上げやラインの安定稼働のハードルを着実に下げています。

例えば、成形シミュレーションによるトライ&エラーの効率化や、リアルタイムでの寸法・外観測定ロボットの導入、AIを活用した異常検知の自動アラートなどは、従来の職人経験依存を徐々に代替しつつあります。

とはいえ、未だ設備選定・加工品設計・品質基準確立など現場の初期ハードルは高く、「簡単に誰でも参入OK」という段階には至っていません。

外部パートナーとのハイブリッド型内製化

近年、「すべて内製」はあくまで理想で、必要部分のみ外注する“選択と集中”のハイブリッド型モデルも拡大しています。

たとえば、初期立ち上げ・量産立ち上げ(ロール設計や最適成形条件の決定など)は、外部ベンダーやコンサルと協働してノウハウ移転を受け、それを社内に蓄積、その後は一定品種を自社直接運用――という段階的アプローチです。

または、ラインごとに委託生産と内製化ラインをコントロールし、リスク分散図る企業も増えています。

バイヤーとサプライヤーが「競争」だけでなく「共創」し、産業全体が底上げされていく土壌がようやく広がってきました。

ロールフォーミング内製化を目指すために――現場発の実践アドバイス

内製化成功に必要な5つの視点

1.設備+技術+人材育成の三位一体で進める
単にラインを購入するのではなく、ロール設計・品質検証・人材教育までトータルで計画することが重要です。

2.設計段階から「成形性」と「生産性」を意識
製品設計部門とも連携し、“ロールフォーミングに適した設計”を初期段階から追求することが不可欠です。

3.外部ベンダーやコンサルのノウハウ活用
初期トライは社外リソースを積極活用し、安定生産になった段階から自社定着を目指しましょう。

4.品質保証・検査体系構築の重要性
ラインアウト品の安定品質を守るため、IoT化や自動測定、工程データの一元管理・可視化を必ず意識しましょう。

5.“内製満足”でなく“付加価値創出”をゴールに
内製化自体が目的化せず、「設計変更への柔軟対応」「複数工程の一貫内製」「短納期対応」「新製品開発速度アップ」等、“事業価値”を冷静に棚卸しましょう。

まとめ――ロールフォーミング内製化の未来と産業の共進化

ロールフォーミングは、設備専用性と匠のノウハウの壁、サプライチェーンの慣性を背景に、内製化ハードルが極めて高い分野です。

しかし今、グローバル対応力強化やデジタル技術の飛躍的進展を背景に、大手を中心に内製化の波が確実に押し寄せつつあります。

製造業の現場力を武器に、単なるベンチマークやコストダウン施策を超え、設計、生産、品質、開発、全てのプロセスで“つながる強い現場”を構築しませんか。

本記事が、製造業に携わる皆様がロールフォーミングの内製化を現実的な視点で考える一助となれば幸いです。

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