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昭和の「量産至上主義」が少量多品種時代に崩壊する理由

目次
昭和の「量産至上主義」とは何か?
昭和の日本経済は、戦後の復興、高度経済成長期の波に乗り、世界に名だたる「ものづくり大国」へと歩みを進めました。
その中心にあったのが「量産至上主義」です。
多くの工場では、同じ製品を大量に、効率良く、安定品質でつくることが現場の誇りでもあり、出荷数=企業の力である時代でした。
この「量産=正義」という発想は、トヨタ生産方式のようなカンバン方式・ジャストインタイム生産などにも応用されています。
しかし、その根底には「需要はほぼ読める」「作れば売れる」「標準品はほとんど同じ仕様」といった前提がありました。
なぜ「量産至上主義」が今、崩壊しつつあるのか?
令和の時代、消費者の嗜好や価値観は多様化し、BtoB産業でも仕様は細分化しています。
「大量に同じものを作れば大丈夫」という時代は終わりを迎え、不良在庫や機会損失を生むリスクが目立つようになりました。
顧客要望の多様化と個別対応の必要性
現代の顧客は自分の業務やライフスタイルに合ったカスタマイズや付加価値を求めます。
BtoBの受注生産でも「ほんの少しサイズを変えてほしい」「仕様AとCを組み合わせたい」といった細やかな要望が一般的です。
これまでのように「標準品の山を作る」やり方では、現実のニーズには応えきれません。
在庫リスクの増大
かつての成功体験にならい、「とりあえず大量に作ってストックする」発想を持ち続けている工場では、不良在庫が膨らみ資金繰りや倉庫スペースの問題へと発展しています。
量産=コスト低減という発想は、あくまで「全部売り切れる時代」の話です。
不確実性の高い現代では売れ残りリスクが製造コストを圧迫します。
サプライチェーンの複雑化とリードタイム短縮
グローバル化やサプライチェーンの多重構造化によって、「早く・小ロットで・多品種を流す力」が企業競争力の源泉になりました。
従来型の大量生産ラインではこれに柔軟対応できません。
また、「納期最優先」の要求もますます強まっており、段取り変えや小ロット対応に追われる現場が増えています。
量産至上主義から脱却できない企業の特徴
製造現場を見渡すと、量産至上主義から抜け出せない工場にはいくつか共通点が見られます。
管理職・現場の思考がアップデートされていない
「昔はこれでうまくいった」という過去の成功体験が、変革の足かせになることが多くあります。
ベテランほど「型」を大事にし、若手の現場提案も「リスクがある、余計なことしなくていい」とはねのけてしまいがちです。
IT導入への消極姿勢
調達・購買・生産管理・品質管理など、多くの工程でデータや情報のデジタル化が求められているにも関わらず「紙伝票が一番安心」「ITは正確性に欠ける」といった根拠乏しい抵抗が根強く残っています。
結果、手作業・Excel地獄・二重転記が続き、生産改革の芽が摘まれます。
外注・サプライヤーへの押し付け体質
従来型では自社である程度の量をまとめ、下請けに分けて処理させるピラミッド構造が典型的でした。
この文化が色濃く残る現場では、多品種小ロットオーダーをうまく仕組み化できず「外注に丸投げ」→「品質トラブル・コスト増」に直結しています。
少量多品種時代に製造業が生き残る道
では、昭和の量産至上主義から抜け出し、これからの時代に勝ち残るにはどうしたらよいのでしょうか。
段取り改革と標準時間の再設計
小ロット多品種では「段取り替え(切り替え作業)」の迅速化が鍵になります。
今まで数時間~1日かかっていた型替え・段取り作業を、GEのSMED(Single-Minute Exchange of Die)手法のように10分単位まで短縮できれば、現実的に小回りのきく生産システムが構築できます。
標準時間そのものの見直しも必須です。
多様な工程・仕様が増える現代では「昔はこれで30分だったから今も同じはず」と決めつけず、作業分析やIoTデータ活用でリアルな標準値を再設定しましょう。
デジタル化と現場情報の可視化
生産管理・購買調達・在庫管理など、すべての現場情報を「見える化」することが、変革の第一歩です。
MES(製造実行システム)、RFID、IoTカメラ、クラウド連携などデジタル技術を活用し、手書き・電話・紙伝票ベース文化から一刻も早く脱却しましょう。
現場のデータをリアルタイムで把握し、問題点や改善ポイントを的確に掴む癖付けがカギです。
少量多品種生産に最適なレイアウトと組織再設計
大量生産志向では「生産ライン方式」が主ですが、多品種小ロットには「セル生産方式」や「フレキシブルライン方式」の方が合う場合が多くなっています。
ライン設計時から「段取り替え対応」「複数工程の並列処理」など流動性を持たせ、従業員の多能工化や自律的な改善活動も並行して進めましょう。
また、調達や物流でも小回りの利くパートナーシップが必要です。
サプライヤー任せにせず自社の調達部門が現場と一体になって最適化する体制が今後の勝負のカギとなります。
顧客情報・市況変化への柔軟対応
マーケティングや商談の段階で顧客ニーズを的確に把握し、営業部門と生産部門・調達部門が一体となった「即応体制」を実現することが不可欠です。
「標準品だけでいい」「特注品は面倒だから断る」といった発想から、「小ロットでも利益を確保できる仕組み」を作りこむリーダーシップが必要です。
バイヤー目線の最新トレンドと現場での葛藤
バイヤー(調達担当者)の立場から見たとき、少量多品種時代に求められるのは「調達の柔軟力」と「共創力」です。
最適な仕入先発掘だけでなく、サプライヤーと共に細分化された需要に応じて迅速な切り替えや、新しい仕様への対応を迫られます。
従来通りの「値切り」「価格交渉力偏重」ではなく、一緒に新たな仕様づくりや開発、小口でも即納対応できる流通構築が勝敗を分けます。
一方で現場やサプライヤーサイドから見れば「そんな急なオーダーを現場はさばけない」「段取りコストが高騰する」「品質が安定しない」など抵抗や懸念が多いのが実情です。
バイヤーも現場も「Win-Winの伴走型パートナー」を志向することが、少量多品種市場に適応するための最大の武器になります。
まとめ:今こそ昭和型「量産至上主義」の壁を打ち壊せ
グローバルな需要の多様化、デジタル化の波、サプライチェーンの複雑化のなかで、昭和の成功体験にすがった「量産至上主義」はすでに賞味期限切れです。
少量多品種生産への適応力こそ、今後の日本製造業復活への道となります。
現場の段取り、組織マインド、調達・購買から生産・品質管理までを包括的に見直し、新しい時代の製造現場へとアップデートしましょう。
私自身も現場で数々の苦い経験を経て「変える勇気」を知りました。
同じ志を持つ方々と、ぜひ現場の知恵と汗を共有しながら、製造業の「新・黄金時代」をともに切り拓いていきましょう。
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