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予兆保全を導入したのに突発停止が減らない理由

目次
はじめに:予兆保全導入の現場トラブル
予兆保全という言葉が製造業の世界で盛んに語られるようになって久しいです。
機械の故障や設備トラブルを未然に防ぐ――これこそが現場の永遠の命題であり、経営層からも強い関心を寄せられてきました。
IoTやセンサ技術の進化を追い風に、予兆保全の導入事例は右肩上がりに増加しています。
しかし「システムは入れたのになぜか突発停止が減らない」「現場の負担感はあまり変わらない」。
そんな声が私のもとにも数多く届きます。
本記事では、なぜ予兆保全を導入しても突発停止が劇的に減らないのか、その背景や原因、そして現場目線の課題解決のヒントを解説します。
これから予兆保全を検討中の方や、すでに導入したものの課題を感じている方に、実践的な知見をお届けします。
なぜ設備は突発停止を起こすのか:現場の本音
まず、設備が突発停止する主な要因には以下があります。
- 機械部品の摩耗や劣化
- センサや電装部品の不良
- オペレーターの操作ミスや予期せぬ使い方
- 外部環境(温湿度・電源トラブル)
- 上位システムや隣接工程からの影響
予兆保全は「機械そのものの健康状態」をセンサやデータから予測するものです。
つまり、主に部品や装置内部の摩耗を中心に対策します。
しかし突発停止の原因を棚卸ししてみると、実は上記のように“人為的なもの”や“外部要因”が意外なほど多いのです。
これが「予兆保全システムだけでは防げない突発停止」が残り続ける最大の理由です。
アナログ業界の「思い込み」とギャップ
昭和の時代から続くアナログな現場では、「新しいシステムを入れればすべてが解決する」という“システム依存型”の幻想が根強いです。
しかし、現場のトレースやヒヤリングを進めると、システムがカバーできる予兆には限界があることが明らかになります。
そのギャップに気づかずに運用を始めてしまうと、「導入したのに効果が体感できない」というジレンマに陥りやすいのです。
予兆保全だけでは防げない突発停止の現実
予兆保全には得意分野と苦手分野があります。
得意:繰り返し発生する典型的な摩耗・劣化
ベアリングやモーター、ポンプなど“劣化パターンが明確で再現性のある箇所”に、予兆保全は真価を発揮します。
たとえば異音や振動、温度上昇を監視することで、「一定の数値を超える前にメンテナンス」という判断がしやすくなります。
不得意:突発的な操作ミスやヒューマンエラー
突発停止の中には、全く予測のつかない操作ミスや、ツールの誤投入、段取り替え時の手順抜けなど、人が起点となるものが一部存在します。
また、工事やメンテナンス作業後の「うっかりミス」も突発トラブルの主因です。
システムで全て監視・記録できるわけではありません。
現場の作業観察や、なぜミスが発生したかの本質的な検証がなければ、同じトラブルを繰り返してしまいます。
現場に蔓延する「導入したら終わり」意識
予兆保全の導入は、つい「システムを設置し、使い始めたらゴール」と思われがちです。
しかし、導入した後こそが、現場の知見やナレッジとの“すり合わせ”の本番です。
機械と現場の生きたデータを紐付ける
センサが異常値を示しても、現実の設備不具合とは結びつかないことも多々あります。
設備設計者や保全担当者が日々の変化や違和感を感じて記録し、その内容とセンサログを突き合わせ、パターン化することが極めて重要です。
また、オペレーターの「いつもと違う」「音が普段と違う」などの現場感覚を無視せず、それをデータに反映させる仕組みづくりも欠かせません。
昭和的な「勘・コツ」も、今こそデータと融合することで、システム活用の幅が広がります。
なぜ「フィードバックループ」が必要か
導入後も現場からのフィードバック無しに放置されると、「システムアラートは鳴っているが現場作業には役立っていない」「結果的に現場は今まで通り」になりやすいです。
逆に、アラート発令時の現場対応を評価し、どう判断したか、実際の異常や停止に結びついたかを必ず振り返り、判定ロジックの見直しにつなげていく必要があります。
この手順こそが、突発停止件数を半減させる“現場力”です。
ノウハウ移管と人材育成のギャップ
予兆保全が機能しない裏側には、ノウハウの属人化とコミュニケーションロスが潜んでいます。
技術継承の停滞がもたらす弱点
たとえばベテラン保全員の「音を聞いただけで何が悪いかわかった」「振動の変化に気づける」といったスキルも、世代交代の中で伝わりづらくなっています。
予兆保全システムは、こうした経験知や暗黙知を「見える化」していく役割も期待されています。
一方、「データを集めても使える人がいない」「現場で活用されていない」という声も絶えません。
DXは魔法の杖ではない
多くの工場でDXへの過度な期待を感じますが、ITリテラシーや現場の“問題意識”が追いつかなければ、せっかくのシステムも絵に描いた餅です。
現場リーダーや保全担当が、定例ミーティングでセンサの変化や異常傾向を解説し、異常の初期パターンを共有するなど、
「人を育てるマネジメント」があってこそ技術が定着し、突発停止の本質的な削減につながります。
サプライヤー・バイヤー・現場の連携強化が命運を分ける
予兆保全は設備単体の問題ではなく、サプライヤー・バイヤー・ユーザー現場三位一体で運用ルールや意思決定軸を磨いていくことが大切です。
サプライヤーが知っておきたいこと
バイヤー側が「予兆保全を入れればパーツ供給数が下がる」と思っている場合、顧客満足優先だけでなく納入部品の「品質保証範囲」「設計寿命との整合」「アフターサポート」など、メーカー側としての責任意識が求められます。
現場に密着して「どこが本当に故障しやすいか」「アラートしきれていない箇所」が何かを理解し、カスタマイズや技術対応力で付加価値を提供し続ける姿勢が、選ばれるサプライヤーの条件です。
バイヤーが考えていること
バイヤーは「可用性とコストのバランス」「現場負担」「設備全体の継続的な最適化」に関心が強いです。
新しいシステムを入れても「効果の見える化」がされなければ、投資対効果(ROI)が問われます。
実際に突発停止がどの程度減ったのか、どの工場・班で実効性が高かったのかを、KPIやレポートで検証し、次の施策に活かせる運用力が信頼構築の決め手となります。
結論:予兆保全活用の新たな地平線へ
突発停止を「ゼロ」にすることは現実的には難しいです。
しかし「何が原因でどこまで防げて、どこが現場改善や教育の領域なのか」を分解し、明確に分担することで、突発停止を着実に減らす道筋が見えます。
現場力とITの両方をバランスよく磨くことが、これからのアナログ業界に必要です。
導入した予兆保全システムを最大限に活かせるのは、やはり“人”であり、現場文化の成熟度です。
昭和的な経験と、令和的な技術トレンドを橋渡しするラテラルシンキングこそ、製造業DX成功のカギといえるでしょう。
突発停止が減らない現状に悩む方も、本記事をヒントに“現場起点・三現主義”をさらに進化させ、業界の未来を切り拓いていっていただきたいと思います。