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「俺についてこい」型リーダーシップが若手に敬遠される現実

「俺についてこい」型リーダーシップが若手に敬遠される現実
製造業の現場に根強い「俺についてこい」型リーダーシップ
製造業の現場では、長らく「俺についてこい」型のリーダーシップが主流でした。
現場で培った経験と勘、周囲を強く牽引するカリスマ性、背中で語る指導法。
これらが、製造現場の一体感や生産性向上の原動力となったのは事実です。
実際に私自身も、昭和・平成と時代をまたぎながら「黙って俺の背を見ろ」と言う上司のもとで、必死に現場力を磨いてきました。
現場では暗黙知や阿吽の呼吸が重視され、「まずやってみろ」「何事も現場で覚えろ」といったメッセージが定番でした。
こうしたリーダー像に憧れ、自分も現場で結果を出せば、自然と後輩がついてくると信じて疑いませんでした。
しかし、時代は変わりました。
なぜ若手は「俺についてこい」型を敬遠するのか
令和の現場では、従来型のリーダーシップを受け入れづらい若手が増えています。
要因はいくつかありますが、最も大きいのは社会や価値観の変化です。
まず、情報がオープンになり、知識やノウハウもネットで容易に取得できる時代となりました。
現場でのみ通じる「職人技」に頼るより、形式知化されたマニュアルや共有ノウハウを好む傾向にあります。
また、若手は「対話」や「納得」を重視します。
理由や背景、目的が説明されずに「やれ」と言われることに抵抗感を覚えるのが当たり前の世代です。
多様な価値観が認められる現代では、上司が「背中で語る」だけでは、後輩は動きません。
指示命令スタイルやワンマンな進め方は、自分の意見や挑戦が封じられていると感じ、若手のモチベーションを下げます。
実際、私たち管理職の間でも「なぜ若手がついてこないのか」「なぜ分かり合えないのか」という悩みは尽きません。
製造業に根付いた背景を理解する
製造業には、「現場主義」「現地現物」が深く根付いています。
5S活動やカイゼン活動など、現場の徹底は日本のものづくりの強みとされてきました。
状況変化や突発対応能力も現場リーダーの勘と度胸によって守られてきました。
しかし、この文化は、時に個人の属人性に依存しすぎる傾向も併せ持っています。
OJT(On the Job Training)が機能した時代は良かったのですが、今のように世代間ギャップや価値観の多様化が進む中では通用しなくなりつつあります。
ある意味、現場のリーダーシップも「昭和モデル」から脱却する必要が迫られているのです。
現場目線で考える「敬遠されるリーダー」とは
経験上、若手に敬遠されがちなリーダーの特長は下記の通りです。
・自分の価値観や手法だけを押し付ける
・失敗を許容せず、チャレンジの芽を摘む
・指示・命令型で、理由や意味を説明しない
・作業以外の会話が少なく、信頼関係構築を軽視する
・自分ができることを基準に、部下の成長段階に目を向けない
結果として、現場からはこんな声が聞こえてきます。
「言われたことしかやるなと言われて、やる気が出ない」
「どう動けば評価されるのか不透明」
「知識を教えてほしいが、感覚的な指示しかされない」
「相談しづらい」
こうした状況は、現場の生産性だけでなく、若手の離職率や組織の活性化にも大きな影響を与えます。
ラテラルシンキングで捉える「これからの現場リーダー像」
従来型リーダーシップを「肩書きの強制力」と捉えるなら、ラテラルシンキングでは「相互補完・協働型のリーダーシップ」への転換が必要だと考えます。
現場リーダーは「求心力」でなく「共感力」を重視すべきです。
たとえば
・目的やゴールを丁寧に説明し、現場の意見を取り入れて一緒に進める
・「失敗」を「学び」として共有し合う文化をつくる
・若手が先輩のやり方ではなく、自分なりの方法を考える余地をつくる
・多様な意見・背景を活かし、チームで最適解を模索する
このようにリーダーの「教える」「指示する」から「一緒に考える」「対話する」へ、役割が変わりつつあるのです。
昭和の武勇伝ばかりを語り、「昔はこうだった」と押し付けるのではなく、「なぜ今それが必要なのか」を一緒に考え、若手の視点に共感する力を持つことが、現場リーダーの新たな役割です。
サプライチェーンや調達購買の現場にも変化が
これは生産現場に限った話ではありません。
調達・購買部門でも同じ現象が起きています。
従来の「鉄のバイヤー」「価格交渉の切れ者」的な上司像は、確かに強かった側面もありますが、現代のバイヤーはサプライヤーとの協業やサステナビリティ、関係構築が求められる時代です。
若手は「交渉力」だけでなく、「なぜこのサプライヤーと組むのか」「どんな付加価値が生まれるのか」といった全体像への納得を大切にします。
また、IT化やデジタルツールの普及で購買業務の中身そのものも高度化・多様化しています。
バイヤー候補者やサプライヤー側は「この会社はチームワークで課題解決できるのか」「古い指示命令型組織ではないか」と敏感に感じ取っています。
プロフェッショナルであることに加え、「人を活かす」「組織で成果を上げる」という新たな要素がますます求められているのです。
アナログ業界だからこそ「人を活かす」へ舵を切ろう
製造業は変化の遅いアナログ業界と揶揄されることも多いです。
しかし、逆にいえば「今が抜本的な改革のチャンス」であり、「他社との差別化ポイント」にもなりえます。
現場リーダーは
・やるべきこと(What)と、なぜやるのか(Why)をセットで語る
・できていない点は叱るだけでなく、できるまで寄り添う
・自分の失敗談や葛藤もオープンに共有し、若手にもチャレンジを促す
・意見が合わない時こそ、「なぜその意見なのか」よく聞き対話する
ことで若手の自発性・創造性を最大限引き出すような組織風土を作れます。
日本の製造業はモノづくりだけでなく、人づくりも大切にしてきました。
この根っこにある「共育(ともに育つ)」という考え方が、今こそ時代にフィットし始めています。
現場で実践するためのヒント
現実問題として、すぐに組織改革ができるとは限りません。
それでも現場リーダーが明日からでもできることはあります。
・毎日の小さな「ありがとう」や「助かったよ」といった声掛けを増やす
・自分のやり方を一方的に押し付けるのではなく、「どうすれば良いと思う?」と問いかける
・問題や課題があれば、一人で抱え込まず、若手と一緒に解決方法を考える
・リーダー自身が成長を止めず、新しい知識(デジタルツール、SDGsなど)も積極的に学ぶ姿勢を見せる
ほんの少しの意識変化が、現場の空気を大きく変えます。
まとめ:製造業の発展のため、新たなリーダー像へ
「俺についてこい」型リーダーシップは、かつての現場には不可欠でした。
しかし、今の若手にとっては「指示待ち人間」を生み出し、自発性や多様性を殺しかねない落とし穴を持っています。
日本の製造業が今後も世界で戦い続けるためには
・共感と対話
・理由や背景の丁寧な説明
・意見の尊重と多様なチャレンジの受容
・経験とデータを活かすバランス感覚
これらを備えた新しいリーダー像が必要です。
現場で培った知識や経験に慢心せず、若手と共に、現場を進化させていきましょう。
それが、アナログからデジタルへの変革期において、製造業の現場とサプライチェーン全体の成長を支える、真の「現場力」だと私は信じています。
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