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“この材料で本当に量産できるのか”と最後まで不安が消えない開発者の本音

“この材料で本当に量産できるのか”と最後まで不安が消えない開発者の本音
製造開発現場に根強く残る「量産リスク」
ものづくりの現場では、新製品開発のたびに「この材料で量産までちゃんと走り切れるのか?」という不安やプレッシャーが根強く発生します。
特に日本の製造業は、昭和から続く現場主義・アナログ管理・人間系ネットワークが色濃く残るため、設計と生産技術、材料購買が一枚岩になりきれず、開発現場での“量産リスク”は今も解消されていません。
この背景には、市場や顧客の厳しい要求、調達先の多様化、サプライチェーンのグローバル化が影響しています。
設計の段階では軽さや強さ、コスト、加工のしやすさなど素材に多角的な要求が乗せられますが、現場には「机上の空論では量産なんてできない」という経験則が根付いています。
試作と量産の間に横たわる“見えない壁”
試作段階では、ハンドリングしやすい材料で丁寧に小ロットを製作し、「試作品は形になった」という安心感が得られます。
しかし、本当の勝負は量産移行時です。
想定した材料が「本当に歩留まり高く」「品質を安定させて」「コストを守って」出てくるかどうかは、量産本番まで完全に見抜くことができません。
化学的なロット差、サプライヤーの管理レベル、生産ラインのミクロな調整……現場目線で見ると、試作と量産の間には“目に見えない壁”が確かに存在します。
設計担当者や開発技術者は、「この材料で本当に大丈夫か」「あとで歩留まり低下や重大なクレームに発展しないか」という不安を最後まで拭い去ることができません。
私自身、数え切れないほどの新規開発プロジェクトに関わりましたが、量産初回ロット立上げまで心から安堵したことは一度もありません。
“安価・特殊・短納期”素材の調達バイヤー視点
近年はコスト競争が激化し、「同等品でより安価な材料を採用したい」「供給リスクを回避するため多重調達したい」「納期に遅れず安定供給を実現したい」という要望がバイヤーに強く課せられています。
一方、メーカーの開発サイドからすると「軽く、強く、加工しやすく、美観もよく」しかも「コストは必ず下げる」など多くの条件を同時に満たす素材などほとんど存在しません。
サプライヤーにとっても「この材料はきちんと量産でき、大量ロット供給にも耐えられる」という裏付けがなければ、自信を持って提案できません。
特に化学材料や樹脂、複合材などは、ロット間での物性変動や生産条件の違いが歩留まり低下や品質不良の要因となりやすく、現場経験の浅いバイヤーや設計者ほどリスクを低く見積もりがちです。
バイヤーの狙いは “最高のコストパフォーマンス”と同時に“最小リスクでの安定供給”ですが、その両立が難しい理由がここにあります。
昭和的アナログ現場が抱える「見えないリスク」
多くの製造業現場では、「昔からこの材料でうまくいっている」という経験知に頼りがちです。
アナログな「ベテラン勘」や「仕入先担当者との長年の信頼関係」が、図面や仕様書以上の大きな影響力を持っています。
しかし、これらアナログ的な要素こそが新材料採用やプロセス刷新の大きなブレーキにもなっています。
そもそも、ベテラン技術者が“材料の特徴”や“加工作法のクセ”を体感的に理解してくれている場合は、問題が起きても柔軟に対応できます。
ところが、突発的な人員異動や担当者交代、世界的な人材流動化が進む中、誰もが同じ品質レベルを再現できる“標準化・見える化”が急務となっています。
昭和的現場の“場当たり管理”では、市場で信頼を勝ち抜くことが難しい時代に突入しました。
サプライヤー・バイヤー双方が押さえるべき「現場のリアル」
多くのバイヤーは、原材料メーカーやサプライヤーから提供される「スペックシート」や「品質保証書」に目を通します。
しかし、実際には“カタログ値”と“現場値”は必ずしも一致しません。
これは半導体材料でも自動車用樹脂でも同様です。
サプライヤー視点なら、「本当に現場評価が済んでいるのか」「打錠計画や評価データをバイヤーが現場と正確に連携しているのか」を確認することが不可欠です。
また、「もし“いつもの材料”が急に手配できなくなった場合、現場はどう対応するのか」まで事前に煮詰めることが重要です。
昨今の災害リスク、世界的な供給ひっ迫、円安・原材料高騰の波は想定以上に早く、深く、現場を直撃しています。
プロジェクト成功のカギは「現場同士の徹底したすり合わせ」
私が長年現場で実感すること。
それは設計・技術・購買だけでなく、サプライヤーの製造現場担当者やパートナー企業のオペレーターを巻き込んだ「物理的なすり合わせ」がホンモノの“量産安心”を生む、ということです。
たとえば、組立ラインの実機で実際に新材料を連続投入してみる。
その場で発生した「小さな引っかかり」や「微細な加工くず」「ごくまれな厚みバラつき」などを見逃さず、設計現場・生産現場・調達担当が一堂に議論し、修正案を詰める。
この現場的トライ&エラーこそが、机上のリスク評価を超えて真の量産安定化につながります。
新材料の導入は、トラブルが“いつ起きるか”ではなく“どこまで事前に想定外を減らせるか”が勝負です。
「現場のプロが協力し合い、逐一情報をアップデートし、バイヤーも現場感覚を養う」という地道な積み重ねが、リスク回避の最大の武器になります。
「攻めの購買」が生む経営インパクトと現場の変革
日本の製造業は伝統的な“守りの購買”だけでは、いずれ世界市場で生き残れなくなる可能性が高いです。
開発・技術・購買が本気で組み、サプライヤー現場と密に情報交換を進める「攻めの購買」。
言い換えれば、現場目線に立ったプロジェクト推進が、これからの競争力の源泉となります。
原材料サプライヤーのネットワークを活かし、類似材料の安定性や過去トラブル例を集めて自社にフィードバックする。
調達先を1社に依存せず、複線化と標準化を同時に推進してBCP(事業継続計画)を常に見直す。
従来なら「この材料しか使えない」の思い込みにメスを入れ、柔軟な材料代替や外部パートナーとのオープンイノベーションを仕掛ける。
このダイナミズムは、確実に製造現場の底力に直結します。
まとめ:現場力とラテラルシンキングで“量産不安”を超える
材料選定から量産移行の不安は、ものづくり現場に普遍的なテーマです。
その不安を「水面下リスク」として放置するのではなく、
・現場の経験値の見える化
・設計・購買・生産・サプライヤーの超連携
・トライ&エラー型の徹底現場検証
・攻めの購買による情報網の拡大
これらを積極的に仕掛けていくことが、真の“量産安心・競争力強化”を実現します。
バイヤーを志す方には、スペック翻訳スキルだけでなく、“現場流のトライ&エラー”思考をおすすめします。
また、サプライヤーの皆さんには、バイヤー・現場のリアルな葛藤への共感と、リスク情報のオープン化が、今後の長期信頼につながることを知ってほしいです。
昭和アナログ現場の知恵を生かしつつ、デジタル化と現場発のラテラルシンキングで新しいものづくりの地平線を、ともに切り拓いていきましょう。
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