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Web広告を始めたことで価格競争に巻き込まれる不安

目次
はじめに:Web広告がもたらす購買・調達現場の変化
近年、多くの製造業サプライヤーがWeb広告を活用しはじめています。
「新規顧客の獲得」、「見積もり依頼の獲得」、「自社技術力のPR」など、その目的は多岐にわたります。
一方で、広告出稿を始めると、思わぬ課題に直面することがあります。
特に「価格競争に巻き込まれるのではないか」という不安や懸念は、現場でリアルに感じるものです。
この記事では、製造業20年以上の現場経験をもとに、Web広告導入による価格競争リスクの本質と、それを乗り越えるための具体策を、バイヤー・サプライヤー双方に向けて実践的に解説します。
Web広告がもたらす「可視化」の功罪と業界の今
情報の透明化こそが価格競争の火種
従来、製造業の取引はクローズドな環境で進んできました。
お得意先の担当者や古くからの付き合いが重視され、一般に価格や受注実態が表に出ることはほとんどありませんでした。
しかしWeb広告は、こうした「透明化していなかった情報」を一気にオープンにします。
例えば、「精密板金」「樹脂加工」のような領域で、競合他社がどんなサービスメニューを持ち、どんな価格レンジでアピールしているのかが簡単に検索できるようになります。
サプライヤーが広告を出せば、バイヤーは一斉調査し、複数の見積もりを容易に取ることもできます。
この可視化こそが、「どこよりも安く」という心理を刺激し、価格競争を苛烈にする一因にもなっています。
昭和的な調達文化が今も根強く残る
製造業の多くの分野では、いまだにアナログな調達が色濃く残っています。
「前任から引き継いだサプライヤーから買うのが当たり前」
「昔の上司の紹介の会社なら失敗しない」
こうした”昭和流”の調達スタイルは、安心感と効率面で一定のメリットがあった半面、競争原理が十分に働きませんでした。
Web広告は、その閉鎖性を打破する武器になりますが、現場の本音として「価格以外での選ばれ方」を築く土壌が、この業界にはまだまだ形成しきれていません。
結局のところ、バイヤーの心理では「同じものなら安いほうが良い」が復権しがちなのです。
Web広告による価格競争、現場のリアルな不安
新規顧客が増えても利益率は低下?
Web広告運用を始めたサプライヤーの多くが、新規引き合いの爆増を経験します。
しかし、その喜びも束の間、現場は”低単価案件”の山に悩まされることが少なくありません。
同業大手がダンピング同然の価格を提示してくる。
広告を見て問合せしてくる企業は、最初から価格の安さだけで比較を始めている。
こうした実態に、営業や現場が疲弊するパターンは珍しくありません。
「適正価格」の下落が業界全体の体力を削る
Web広告経由で集まった複数社による入札。
受注を獲得しようと、つい値下げで勝負しがちです。
しかし、その積み重ねが「適正価格感覚」を業界全体で引き下げてしまい、利益の先細り、投資・教育・改善への投下資金の余力が減る、という悪循環に陥ります。
これは特に中小企業や地場の工場など、もともとコスト競争が激しい業態には致命傷となる場合があります。
バイヤー目線で読み解く:なぜ価格競争を持ち込むのか
購買部担当者のKPIと日本的組織事情
多くの製造業バイヤー(購買・調達担当者)は、「年間コスト○%削減」というKPIを強く求められています。
取引先数を増やし、相見積もりを基本とし、最安値を抽出すること自体が「評価」に直結します。
また、組織として「購買先の開拓能力」が問われる場面も多く、特に新しいサプライヤーを発掘できれば、担当者個人の人事評価にもつながりやすい構造です。
この環境下では、「良い資材・良い部品を適正価格で調達しよう」という長期的な視点より、「安く買えた証拠」を重視しやすい慣習が根付いているのです。
「モノ軸調達」から「トラブル防止調達」へのシフト
さらに昨今は、コストだけでなく「責任所在の明確化」や「リスク分散」も重視されています。
「不良が出たとき、どこまで対策してくれるか」
「納期が遅れたときのフォロー体制は?」
これらの観点もWEB広告経由で選定されるサプライヤーに求められますが、”見える化”の裏で「価格なら負けません」という短絡的な訴求が業界に蔓延し、それが再び価格競争を招く温床となっています。
価格競争に巻き込まれないために:サプライヤーが取るべき戦略
1. 技術力の見える化を徹底的に推進
価格表や対応範囲だけでなく、「なぜ自社が難易度の高い加工に強いのか」「量産立ち上げ時の歩留まり改善事例」など、ストーリーと根拠のある実績・技術を徹底的にWEBで発信しましょう。
特許、品質データ、3Dモデル化事例など、”同業他社が簡単に真似できない”情報を積極公開することが、価格以外で差別化する第1歩です。
2. 営業・技術・現場の三位一体で顧客課題を解決
単なる「受注・生産・納品」だけではなく、お客様の現場課題を”共に掘り下げる”パートナーとして売り込む姿勢が重要です。
例えば、「設計段階で量産性を見据えたフィードバックをする」「現場立ち合いを自分ごととしてサポートする」姿勢は、多くのバイヤーにとって大きな信頼ポイントになります。
こうした信頼と付加価値が価格以外での指名理由となっていきます。
3. ターゲット顧客像を見極め、不毛な値下げ勝負から脱却する
Web広告は「広く浅く」の集客が特徴ですが、あえて”断る勇気”を持つことも肝心です。
安ければすぐ乗り換えるバイヤーより、「高いが、この会社の品質・対応でなければ困る」と言ってくれる顧客を探し、受注前に見極めて関係構築しましょう。
自社の強みを活かせない案件は、潔く他社に任せるという戦略的撤退も重要です。
バイヤーに届けたい本音:サプライヤーの「想い」と現場の工夫
単なる値引き要求がもたらす現場負荷を知ってほしい
価格交渉のたび、製造現場・品質部門・調達各部門がどれだけ苦労し、どのような工夫で現状維持や品質改善を続けているかを理解してほしいものです。
無理な値引きが、結果として工場現場スタッフの熟練度低下や、品質トラブル増加につながったケースは枚挙に暇がありません。
未来思考型のサプライヤー連携へ
「開発段階から相談できるサプライヤー」
「突然のトラブルでも最後まで逃げずに並走するパートナー」
こうした存在が、本当にモノづくり現場を支え、日本全体の製造業価値向上につながります。
価格の数字だけでは測れないバリューを、しっかり見極めて対話していただきたいと強く感じています。
まとめ:価格競争を超えた未来へ
Web広告の普及は、製造業の調達・購買現場に大きなチャンスとリスクをもたらしています。
かつての「情報格差」に守られていた時代から、今や「全てが比較検討可能」な時代です。
この状況を前向きに捉え、「価格以外で選ばれるサプライヤー」に進化できるかどうかは、現場の意識改革と戦略次第です。
本質的な技術アピール、価値ある顧客対応、現場と共に成長する姿勢を持つことで、価格競争に陥らない健全なビジネスモデルを、業界全体で築いていきましょう。
バイヤーの皆さまも、ぜひ短期的なコストカット観点だけでなく、中長期のパートナーシップ視点で、サプライヤーと向き合い、日本の製造業がさらに価値ある産業へ発展していくための一助となってほしいと思います。