投稿日:2025年11月27日

OEMパーカーで品質を高めるための“糸と針”の選定知識

はじめに:OEMパーカーの品質は“糸と針”に宿る

製造業に従事している皆さん、またはこれからバイヤーを目指す方、サプライヤーの事業拡大を真剣に考えている方、自社のOEMパーカー製造で問題を抱えていませんか。

「パーカーのオーダーをOEM先に任せたが、クオリティに不満が残る」
「バイヤーとして品質向上策を提案したいが、具体的な糸や縫製の知識が浅い」
「サプライヤーとして競争力ある提案をしたいが、現場の品質指標があいまい」
こういった悩みを工場で“当たり前”のようにスルーしていませんか。

実はOEMパーカーの品質を語る上で、“最適な糸と針の選定”こそが大きな分岐点となります。
本記事では、現場経験20年を超えた筆者の視点から、糸と針の選定がいかにパーカーの品質・価値を左右するか、現場の悩みを“ラテラルシンキング”で突破する具体策を解説します。

OEMパーカーに求められる“本質的な品質”とは

「アナログ思考」からの脱却

昭和から続く日本のアパレルOEM、特にパーカーなどカジュアルウェア分野では、「価格」「数量」「納期」が品質より優先されがちです。

しかしグローバル競争が深化する現代、製造業として強固なブランド価値を背景に取引したいなら、“見えない部分で他社と差別化する”ことが一層重要になっています。

パーカー1枚でも「糸」「針」の違いで縫製強度や着心地・風合いに大きな影響が出ます。
消費者、特にバイヤーやアパレルブランド担当は、こうした細部を敏感に察知します。

OEMパーカーの“現場的”本質

よくある現場の思い込みに、「糸は同じ太さなら問題ない」「針は標準サイズであれば安心」といった声があります。
しかしこのアナログな“決めつけ”が生産ロスや再工程、苦情リスクを招いていることに、できるだけ早く気付く必要があります。

パーカーの品質は
・着用中にほつれ・糸切れしない縫製強度
・縫い目の美しさや均一性
・肌触りやストレッチ性などの着心地
・洗濯変化に対する耐久性
こういった「現場で測れる、試せる」要素に支えられています。

その中枢を担うのが“糸と針”なのです。

糸の選定:本当に“適材適所”で選んでいますか?

糸は「材質」と「太さ」で全く性格が違う

パーカーは主に裏毛スウェットやポリエステル混紡など、厚手で柔らかい生地が中心です。
生地の厚み・伸縮性・縫い難さを考慮しない糸選びは、100%トラブルのもとです。

例えば
・コットン100%の裏毛 →撚りがしっかりしたポリエステル芯糸
・ポリエステル高混率 →伸縮追従性あるスパン糸あるいはテクスチャードヤーン
・ライトオンス生地(薄地) →細番手の綿糸・ポリエステル糸
このように、材質と糸番手の選定基準を明確に示すオーダー設計が重要です。

また、海外生産拠点では日本とは異なる糸の規格や品質基準があり、図面・仕様書を日本独自の感覚で作ると「現地では調達不可能」といった混乱も起こります。

耐久性・コスト・加工性の“三点バランス”

OEMパーカーのバイヤーとしては、ただ安価な糸を選ぶのではなく、生産工場のミシン環境・作業者の熟練度・製品の目指す価値(ラグジュアリー向け/普及帯/スポーツ向け等)に合わせた糸を現地工場の担当者ともすり合わせましょう。

一例ですが
・高価系高強度糸は、工場のミシン調整や日々の保守に熟練が必要
・安価な汎用糸は、生地とのミスマッチで縫い目幅が崩れたりほつれる
・生地と糸の色差が大きい場合、メーカー側で染色ブリードリスクも発生
こうしたリスクと生産者の「ヒト・モノ・カネ」を組み合わせて最適解を探る――
ここが“買う側”としてOEMパーカー品質を高める真骨頂です。

針の選定:知られざる“縫製現場のキモ”

「標準針」で済ませていませんか

すべてのラインで同じ番号・種類のミシン針を使わせていませんか。
パーカー生産の現場では、以下のような点で針の選定が求められます。

・生地が極厚手・極薄手で針強度が足りない→穿孔や生地傷を生む
・ニット地特有の引きつれ→ボールポイント針の採用で改善
・伸縮性加味したかがり縫い→ストレッチ性ある設計と針先形状の工夫
・高密度ステッチでも糸切れリスクないか→耐摩耗性・針番手選定
生地・工程ごとに針の種類(丸針・ボールポイント・厚地用等)、サイズ(番手)を細やかに選び、生産現場で針の摩耗・曲がりチェックのルールを敷くべきです。

針不良の見落としが“重大不良”を招く

パーカーの大量生産現場では、不織布やインターライナー使用時の「すべり性」「針先摩耗」「ヒートシール不良」など、目に見えにくいミクロな不具合が重大ロスに直結します。
昭和的な「同じ工程、同じ針でOK」な思考から脱却し、各生地サンプルごとのテストピース試験をバイヤー側が主導する(シュリンクテスト・打ち抜き検査・等)ことが、品証の差別化になるのです。

現場目線×工程改善:糸と針の新潮流をつくる

“工程個別最適化”のすすめ

現代の製造業は、“全体最適”よりも「工程ごとに個別最適を積み重ねる」ことで強い製造現場がつくられます。
パーカーのOEM現場で
・袖縫製には伸縮性重視のスパン糸、針は丸針
・ポケット縫い付けには高強度ウーリー糸・厚地針
・フード周囲は高密度ステッチ対応で番手大きめ
このようなアジャストメントを現場各所で行うことで、不良品率を削減でき、仕上がりの美しさが顧客満足度(CS)向上に直結します。

現場との「対話」が新しい価値を生む

現場に足を運び、実際に糸・針のセットアップを見て、ライン長・職工の声を聞きましょう。
日本のアパレルOEMは図面・仕様書通りの運用に頼りすぎる傾向がありますが、アジアや東南アジア現地工場では、作業効率・品質向上をトライ&エラーする知恵が現場に隠れています。

・「縫い目のピッチを1mm変えた」「ミシン速度を調整した」
・「針の型番を季節や気温で変えてみた」
・「糸のテンション調整でほつれリスクを低減した」
こういった“現場知”を拾い上げ、バイヤーやサプライヤーが数値で可視化し、全工程へ展開することで、従来の「昭和的な品質保証」からワンランク上の品質マネジメントに転換できます。

アフターケア:OEMパーカーにおける“糸と針”の長期的視点

納品後の品質変化まで見据える

どんなに生産現場で最適な糸・針選定を行っても、倉庫保管、流通時の衝撃、消費者の洗濯での耐久性能も品質の一部です。
バイヤーとしては、納品前のサンプルテスト(洗濯試験、ねじれ試験)、サプライヤーとしては、納品後半年~1年程度の消費者クレーム分析や“逆算的フィードバック”を積極的に行いましょう。

日本人の「モノづくり魂」は、1枚のパーカーにまで徹底的なこだわりを宿してきました。
その“遺伝子”は、最細部の“糸と針”の選定責任として再創造できます。

まとめ:OEMパーカーで世界基準の品質競争力を持つために

OEMパーカーの品質は、単なる価格勝負やロットメリットだけで決まるものではありません。
糸の選定では、「材質」「耐久性」「生地との相性」を多面的に分析。
針の選定では、「番手」「針先」「生地ごと特有リスク」に細心の注意を払う。

現場で培われたスキル、バイヤー・サプライヤーの“対話力”、設計からアフターまで一貫してハンズオンで品質改善を粘り強く続ける。
この“糸と針”へのこだわりこそが、令和時代のOEMパーカーづくりで勝ち残る最大の武器になります。

工場の現場=ブランド価値の最前線。
1枚のパーカーが世界基準のプロダクトになるよう、今こそ“糸と針”という現場の知恵に向き合いませんか。

読んでくださった皆様が、自身の現場改善・業界進化の一助となることを願っています。

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