投稿日:2025年9月21日

Yesマン営業が顧客からも軽視される逆説的な問題

はじめに:営業パーソンの「Yesマン化」とは

ものづくり現場で長年勤めてきた私が最近よく耳にするのは、「営業がYesマンすぎる」という指摘です。

顧客の要望にただ「はい、承知しました」と従うだけの営業活動が、かえって顧客からの信頼を損ない、自社の付加価値を見失わせてしまう。

この逆説的な現象がなぜ起きるのか。
また、そもそもなぜ昭和期から令和の今でも「Yesマン」が根深く残るのか。

本記事では、製造業の現場を知る立場から、Yesマン営業の功罪、バイヤーの心理、そしてサプライヤーの明日を切り拓く実践的アプローチについて、現場実例とラテラルシンキングの視点で掘り下げていきます。

なぜYesマン営業が生まれるのか

背景にある日本型商習慣と組織文化

日本の製造業には、長年にわたり「お客様は神様」的な発想が根付いてきました。

この精神自体は悪いものではありませんが、度を越してしまうと、バイヤー(顧客企業)の言いなりになったり、「波風を立てない」こと自体が評価される社内風土につながります。

特に調達や購買の現場では、「取引関係を長く安定させること=善」とみなされがちで、営業担当者はついバイヤーの顔色をうかがいがちです。

結果、気がつけば単なる「要件通りに動く人」、いわば「Yesマン」になってしまいがちです。

KPI偏重・数字至上主義の弊害

最近では営業成績が可視化・数値化され、上司から求められるノルマ達成が最重要視されるようになりました。

短期的な受注や契約件数が評価軸になるため、営業担当者はどうしても「波風を立てて断られるより、イエスと言って受注するほうが安全だ」と思いがちです。

実はこれが、顧客の真のニーズや課題を提案によって掘り下げる余地を自ら放棄することに、つながっています。

Yesマン営業が顧客から軽視される理由

顧客が求めているのは「提案力」と「専門性」

バイヤー経験者に話を聞くと、「うん、うん、と何でも話を合わせてくる営業は頼りにならない」としばしば耳にします。

なぜ「Yesマン」は評価されないのでしょうか。

それは、顧客(バイヤー)がサプライヤーに求めているのは「指示通りに動くだけの人」ではなく、「現場や商流、技術を本質的に理解し、課題解決やコスト改善を一緒に考えてくれるパートナー」だからです。

とりわけ、ものづくりの現場では「なぜそれが必要なのか」「こうした方がコストや納期に有利になるのでは」といった本質的な質問や提案を求められるシーンが多いです。

営業担当者が自信のなさから「はい」「わかりました」しか言えないと、顧客から次第に「この会社に相談しても広がりがない」「ノーアイディアな人だ」と見なされてしまいます。

「断らない」ことが信頼を失う逆説

多くの営業パーソンが恐れているのは、「断る」場面です。

一見、リスク回避の行動にも見えますが、すべてを「できます」「大丈夫です」と答えてしまうことこそ、本当のリスクの始まりです。

なぜなら、無理な納期やコスト要求に全て従うことで、現場では納期遅延や品質問題など二次的な問題が発生しやすくなります。

そして、「できません」ときちんと伝え、なぜその条件では無理なのか、その代替案を持って提案できる営業こそ、顧客から「本当の相談相手」として頼られるようになります。

これは、過去の商談や品質トラブルなどの生々しい経験則からも明らかです。

昭和的体質から脱却できないアナログ業界の現状と課題

「現場依存」の功罪とデジタル化の遅れ

製造業では今も多くの現場が「人の勘・経験」「ベテランの鶴の一声」に頼っています。

営業活動も基本的には訪問、顔合わせ、現場確認という古い商慣行が残っています。

近年はオンライン商談や図面の電子化が進みつつあるとはいえ、本質的な「顧客課題の抽出」「手戻りの少ない意思疎通」には、人間の洞察力や関係構築が不可欠です。

たとえば、バイヤーが社内での承認フローや用途が曖昧なまま希望だけを伝えてくる場合、Yesマン営業は言われた通りに見積もりを出して終わります。

逆に、業務フローやQCD(品質・コスト・納期)の本質を質問し、課題抽出から入り直す営業こそ価値を生みます。

組織風土が「異論反論」を許さないジレンマ

私が経験したある大手工場でも、「顧客の要求は絶対」とする現場の空気が根深く残っていました。

しかし、社会全体が急速に変化し、バイヤーも多忙化・合理化を求められている現代では、「言われるがまま」ではサプライヤー側も競争に勝てません。

ベテラン営業や現場責任者こそ、「なぜ」「どうして」を社内外に問い直す勇気と仕組みが必要です。

バイヤーの視点で考える「理想のサプライヤー像」

バイヤーが本当に求めているのは「答え」ではなく「選択肢」

調達担当者やバイヤーの本心に迫ると、「自分だけでは判断できないリスクや、より良い道を示してくれるサプライヤー」が重宝されます。

たとえば、同じ納期遅延リスクが発生しそうな時、「新しい工程提案」「コストダウンのための素材選定」「品質リスクの洗い出し」など、プロならではの知恵を提示してくれるパートナーをバイヤーは高く評価します。

「できません」と言うこと自体より、なぜできないのか、どうすれば近づけるか、一歩踏み込んだ議論をしてくれる存在こそが信頼されるのです。

決められた納期・コスト以外の「隠れた期待」に応える

表向きの見積もり条件以外にも、バイヤーは「急な要望にも応えられる柔軟性」「社内報告で説明しやすい提案資料」など、様々な背景事情を抱えています。

Yesマン営業がそれを読み取ることはできませんが、本当に頼れる営業であれば、「御社の品質保証部門はこの資料があると助かるはずです」「去年同様のトラブルが再発しないよう、この工程を追加します」などと能動的に動き、信頼を積み重ねていきます。

サプライヤーが明日からできる「脱Yesマン」の実践アクション

現場目線でのヒアリング力と課題抽出力の強化

現場出身者の強みは、技術的な「なぜ?」を徹底して追えることです。

「なぜコストを下げたいのか?」「なぜこの納期が絶対なのか?」という根本原因に踏み込むこと。

1つ質問を投げかけるごとに、お客様の潜在ニーズや、社内事情まで可視化されます。

このヒアリング力・課題抽出力が、ただの「御用聞き営業」と「バリュークリエイター」との分水嶺になります。

「自信あるNo」と「複数の提案」を持つ

Yesマン営業から抜け出すカギは、誠実な「No」を伝えられること。

断る際も、「なぜ厳しいのか」「成功率とリスクは何か」、そして必ず「現実的な代替案」を併せて提示することです。

たとえば、「この期間では現状は生産キャパが足りませんが、B案の工程変更により、2週間短縮できる可能性があります」など、確かな選択肢を提案します。

バイヤーはこの「選択肢と根拠」を待っています。

社内外で「異論を許容する空気」の醸成

Yesマン営業を生み出す最大の温床は、「何も言わない、波風立てない」組織風土です。

改善会議や提案会議など、日常的に「課題発見」や「ダメ出し」ができる空気を作り出しましょう。

新入社員や若手営業でも「お客様の本音を聞く」ことが、社内で評価される文化を浸透させることが、結局は顧客からも信頼される体制につながります。

まとめ:現場がつくる“価値”で顧客のパートナーに

Yesマン営業は短期的には波風が立たず、取引も順調に見えます。

しかし、その裏側で「ノーアイディア」「主体性なし」のレッテルを貼られ、長期的には顧客からの新規案件や相談は他社へ流れてしまいがちです。

バイヤーが本当に求めているのは、指示待ち人間ではなく、「現場の知見やノウハウを踏まえ、課題を一緒に乗り越えるパートナー」です。

現場でしか見えない課題やリスクを拾い上げ、時には「できません」と伝えつつ、必ず補完案や想定外の選択肢を示せる営業体質を育てていきましょう。

こうした積み重ねが、製造業の競争力を高め、業界全体のレベルアップにつながっていきます。

これからの製造業に必要なのは、「イエス」を繰り返す人ではなく、「なぜ?」と問い、本質的な提案と解決策を持つ現場志向のプロフェッショナルです。

自社の明日を切り拓くために、今日から小さな変化を始めてみてはいかがでしょうか。

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