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ヨーグルトの香りを長持ちさせる乳酸菌比率と熟成プロセス制御

目次
はじめに:ヨーグルト製造における「香り」への着目
ヨーグルトは、その健康機能だけでなく、まろやかな味わいと特有の香りで多くの人に親しまれています。
実際、ヨーグルト製造現場でお客様やバイヤーと話す中でも、「香りが長続きしない」「時間が経つと風味が落ちる」という課題は頻繁に耳にします。
本記事では、ヨーグルトの香りを長持ちさせるために重要な乳酸菌の比率や、熟成プロセスの制御方法について、現場目線で実践的に解説します。
さらに、昔ながらの「勘と経験」が強く残るアナログ的な製造業の風土にも配慮しつつ、最先端の技術と現場のノウハウを融合させた実用的な取り組みをご紹介します。
これにより、製造現場で働く方はもちろん、サプライヤー・バイヤー双方の視点を養うヒントを深掘りしてお届けします。
ヨーグルトの香り成分とは?基礎知識をおさらい
香りの主成分:ジアセチル、アセトアルデヒドほか
ヨーグルトのあのさわやかな香りは、乳酸菌が発酵過程で生み出す様々な揮発性成分で構成されています。
中でも代表的なのが「ジアセチル」と「アセトアルデヒド」です。
ジアセチルはバター様のリッチな芳香を、アセトアルデヒドはフレッシュで青りんごのような香りを加えます。
これらの生成量やバランスが、ヨーグルトの香りを大きく左右します。
熟成と香りの劣化の関係
製造後の時間経過・流通中の保管といったプロセスで、徐々に香り成分が飛散したり、他の成分と反応したりして、香りが弱まります。
だからこそ、乳酸菌の選択や、発酵・熟成プロセスの最適化が「香りを長持ちさせる」鍵になります。
乳酸菌比率が香りに及ぼす影響
主役はブルガリア菌とサーモフィルス菌
ヨーグルト製造で多用される乳酸菌は、「ブルガリア菌(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)」と「サーモフィルス菌(Streptococcus thermophilus)」です。
これらは単体でも発酵は可能ですが、組み合わせて使うことで香り成分の生成量が大きく変化します。
ブルガリア菌はアセトアルデヒド生成能力が非常に高く、サーモフィルス菌は乳酸生成や緩やかなジアセチル産生に強みがあります。
そのため、両者の比率を適切に設計することが、香りの”厚み”と”持続性”を高めるポイントとなります。
現場での比率配合の実践例
昭和世代の製造現場では「経験則で乳酸菌比率を決めている」ことが多いですが、最近はデータロガーや分析機器も普及し、より詳細な成分設計が可能になりました。
例えば、ブルガリア菌2:サーモフィルス菌1の比率ではアセトアルデヒドが豊かになりますが、やや酸味が強くなります。
逆にブルガリア菌1:サーモフィルス菌2にすると、酸味は控えめで、全体的にマイルドかつ香りの揮発スピードが緩やかになります。
バイヤー視点では、「出荷時の香りだけではなく消費期限近くでも香りが持続していること」が重要です。
製造現場では、そのための最適比率を実験し、流通過程での香り変化も含めて設計することが理想です。
熟成プロセス制御で香りをキープする最新テクニック
発酵温度・時間の厳密な管理
発酵温度と時間は、香り成分の生成に直結します。
伝統的な現場だと「だいたいこのくらいの温度・時間で」といった勘に頼りがちですが、今や温度ロガーや自動制御装置の導入で、微差の修正も容易になりました。
例えば、発酵温度を42℃から38℃に下げ、熟成時間を1.5倍に延ばすと、分解速度が遅くなるため、生成した香り成分の消失が抑えられます。
このような細かな制御は特に大容量タンクや完全密閉発酵槽で、その効果が顕著に現れます。
酸素・二酸化炭素コントロールの重要性
発酵後のヨーグルトは、密閉状態で貯蔵・流通されることが多いですが、一部の製造ラインではCO₂濃度や残存酸素量も管理できる場合があります。
酸素が多いと、アセトアルデヒドが酸化分解しやすくなり、香りの劣化につながります。
低酸素環境の維持、流通時のインナー包装改善・不活性ガス充填といった先進技術も、香りロス防止に貢献します。
現場でよくある「もったいない」事例とその打開策
“瓶詰め”時の香りロス
従来の瓶詰め・カップ詰め工程で、「思ったより香りが薄い」と現場が悩むケースは非常に多いです。
これは充填時に空気と触れることで、香り成分が逃げやすいためです。
そのため、製造プロセスの「香りのピーク」を逃さず即充填する、もしくは低温状態での充填に切り替えて揮発を抑えるといった工夫が必要です。
流通工程・庫内保管での温度ムラ
消費期限近くになると、バイヤーや小売現場で「香りが全然違う」となりクレームにつながるケースがあります。
これは流通や保管時の温度管理が十分でないことが多いです。
製造現場では、出荷ロットごとの温度ロガーデータ解析や「冷蔵庫の死角(冷えにくい場所)」の継続チェックを習慣化することで、香りの劣化リスクをグッと減らすことができます。
アナログ業界でもできる!身近な改善アプローチ
乳酸菌スターター管理の標準化
昭和時代から受け継がれている「前日仕込みのスターター流用」や「残り物の寄せ集め」では、香り成分生成の”安定化”は望めません。
近年の現場改善では、「毎回新しい純粋培養スターターを使用する」「スターターの冷蔵・冷凍条件をタイマーで徹底管理する」など、小さなルール設定が効果的です。
ラインごとの充填タイミング最適化
大量生産現場では、全ライン同時充填が難しい場合があります。
このとき、出来立てから充填までの待ち時間がバラつくことで、香り成分の揮発度合いに大きな差が生まれます。
生産計画に「香りのピーク時間」管理を取り入れる、ラインごとの作業時間記録を点検するなど、すぐできる現場改善が香り保持の大きな打ち手となります。
サプライヤー・バイヤーから見た「香り長持ち」の価値提案
サプライヤーは「具体データで香りの証明を」
下請けやOEM供給の立場では、香りの持続性を自社の強みにできるかが問われます。
検証データ(揮発性成分の濃度経時変化試験など)を提示し、「最初だけでなく日持ちした状態でも香りが一定です」と説明できれば、バイヤーからの信頼度も格段に上がります。
バイヤーは「流通後テスト」の徹底を
バイヤー目線では、仕入れ時点だけでなく実際の店頭・購入後の日持ち香りレベルまで視野を広げる必要があります。
購買決定の際は、サプライヤーから提供された香り持続データを必ず確認し、合理的な判断材料とすることが不可欠です。
こうした「香り持続」データのやり取りは、売れる製品づくり&仕入先評価の新しいスタンダードとなりつつあります。
製造業全体へのメッセージ:ラテラルシンキングで香りの価値を再発見しよう
「香りを長持ちさせる技術」と聞くと、乳業だけに閉じた話に見えるかもしれません。
しかし、発酵制御や副次成分管理は、ビール、漬物、パン、コーヒーなど、幅広い食品製造業にも共通するテーマです。
一方で、「昔からこのやり方でやってきた」「今さら新しい方法は…」という現場も依然根強いものです。
変化を恐れず、データと現場ノウハウの両方を掛け合わせるラテラルシンキングこそ、アナログ時代から脱却し、新たな価値を生む道筋です。
まとめ:明日から実践できる、香り長持ちヨーグルトの極意
ヨーグルトの香りを長持ちさせるには、「乳酸菌の比率最適化」「熟成・発酵条件の厳密管理」「現場改善による充填タイミングや温度制御」が三本柱となります。
また、サプライヤー・バイヤー双方が「香り成分の経時品質」を共通言語として持つことで、仕入先評価・ブランド価値向上にもつながります。
昭和の経験と令和の技術が融合すれば、業界全体の標準もさらに高まっていくはずです。
日々の製造現場のひと工夫から、業界全体のイノベーションまで、ぜひ一歩踏み出してみてください。
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