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パッケージ最適化でデッドスペースをゼロにし輸送費を確実に下げる設計

目次
はじめに:なぜ今「パッケージ最適化」が必須なのか
グローバル競争が激化し、原材料も輸送費も右肩上がりという現代。
製造原価の削減や、物流コストの圧縮は、もはや管理者レベルの美辞麗句ではなく、現場の生死を分ける実務的な課題です。
特に製品パッケージに潜む「デッドスペース(無駄な空間)」の影響は想像以上に大きく、パレット、コンテナ、トラック1台あたりに積める数量や輸送効率に直結します。
しかし日本の多くの製造現場では、「このケースに製品を入れるのが慣例だから」という昭和的慣習によって、真剣なパッケージ最適化に取り組む文化が根付きにくい現状があります。
この記事では、実際に製造現場に長年携わってきた目線から、デッドスペース撲滅と輸送費削減を同時に達成するパッケージ設計の極意を、理論と現場のリアルを織り交ぜて解説します。
デッドスペースがもたらすロスとその「見えないコスト」
デッドスペースは、「輸送中、実際に製品が占めている体積」と「その製品に割り当てられた梱包(パッケージ)や物流資材の体積」の間に生じる、何も収益を生まない空間です。
この無駄は一つ一つ見ると些細ですが、年間で積み上げると以下のようなコストロスを引き起こします。
1. 物流コストのダイレクトな増加
トラックやコンテナは“体積”で料金が決まることが多く、同じ便で積載できる製品数が減る分、単位当たりの輸送原価が上がります。
荷台がスカスカのまま規定重量まで到達しなくても、最大積載体積に達した時点で次の便が必要になるため、非効率なコスト構造が生まれます。
2. 保管スペースの無駄遣い
工場や倉庫の床面積も有限です。
製品箱の体積に対して中身がスカスカの場合、その分だけ余計な保管スペースが必要となり、賃料や電気代の無駄につながります。
3. 二次的なロス
デッドスペースが増えると、現場作業の手間も増加します。
例えば梱包作業で緩衝材が過剰になる、積み付けの効率が悪くなり搬送やピッキングの工数が増える、梱包用ダンボール資材費も高くつく、など二次的なコストロスが発生します。
パッケージ最適化の基本思想 ― ミリ単位の設計で「積載効率100%」を目指す
パッケージ最適化の本質は、「最終的に輸送什器1台に対して、どれだけ無駄なく製品が積めるか」を突き詰めることです。
発想の出発点を間違えると、デッドスペースは永久になくなりません。
1. 製品サイズとパッケージサイズの「再考」
一般的な現場では、すでに作られた製品を、その製品よりひとまわり大きい箱に入れ、それをまとめて出荷…という流れが主流です。
ですがこれは根本的な最適化にはなりません。
真の最適化は、まず「最終的に使用するパレットやトラックのサイズ」から逆算し、
・その面積、体積、内寸に対して最も無駄なく詰められる「外箱サイズ」
・その外箱にちょうどフィットしつつ、かつ緩衝材や仕切りをミニマムにできる「内箱」「仕切り」「製品本体サイズ」
この設計をミリ単位で攻めていくことが急所です。
2. 多品種少量・バリエーション時代の考え方
個別受注生産やバリエーション展開が当たり前の時代、箱サイズを都度最適化するのは非現実的との声もよく聞きます。
しかし、この制約を絶対視しているうちは、永遠に昭和的コスト構造から脱却できません。
カスタマイズ品でも「基幹となる共通サイズ」を軸にモジュール設計、共通パーツ・共通外装の率を上げれば、パッケージサイズ自体も共通化して効率化が図れます。
3. サプライヤーとの協業による最適化
製品本体や部材の寸法変更、パッケージ材料の刷新は、サプライヤー単独では難しい判断になります。
バイヤー主導で「全体最適」の意識を持ち、設計部門・調達部門・物流部門・サプライヤーを巻き込み、『パッケージ含めた設計仕様協議』を合同で進めることが重要です。
現場でよくある「最適化失敗パターン」とその突破策
パッケージ最適化に関する現場のあるある・失敗パターンには典型例があります。
それらを俯瞰し、どう乗り越えるかを考えます。
1. 「箱だけ小さくしたら壊れる」問題
限界ぎりぎりに詰めると事故や破損リスクが増加すると敬遠されがちです。
しかし緩衝材や詰め紙に頼るばかりでは、体積も工数も増え“本末転倒”となります。
ここで必要なのは設計段階からの「耐久性試験」「輸送試験」をセットで組み込み、実データで「どこまで攻めても安全か?」を追求することです。
2. 現場との温度差
設計や調達の意図が現場に浸透しておらず、「なんとなく今のままが楽だから…」と最適化の実行が止まることも少なくありません。
これを解消するには、最適化による具体的なメリット(作業工数削減、保管効率アップ、何より自分たちの工場収益改善!)を、現場リーダーと数字で共有、同じKPIを追いかける文化が不可欠です。
3. 既存在庫・投資回収とのジレンマ
すぐに最適設計へ移行したいものの、「既存のパッケージ資材が大量に在庫化して…」といった抵抗もあります。
この場合は“移行期スケジュール”を設計し、段階的に現行品と新規品を混載運用してスムーズに切り替える運営体制を作ります。
この柔軟性が現場目線の知恵です。
最新技術とデータ活用が拓く「パッケージ最適化」の新境地
DX化・IoT化が進む現在、パッケージ最適化もデータを活用した「見える化」「数値化」が鍵となります。
1. 設計段階での3D CAD/シミュレーション活用
CADで実際の箱詰めレイアウトやパレット上での積載シミュレーションを行い、理論上最も効率的なパッケージサイズ・形状を数値で導き出す文化が広まっています。
いわば従来の「えいや!」感覚から、きっちり理屈でロジカルに攻める時代です。
2. 積載率データの収集と継続改善
実際の積載率(トラック1台あたりの製品数や積載効率)もIoTを活用してデータ収集、月次で改善サイクルを回すことができれば、現状把握から次の改善へと確実に進めます。
3. AI・最適化アルゴリズムの利用
多品種少量生産の現場でも、AIパッキングアルゴリズムや、組み合わせ最適化ツールを用いることで、「この受注ロットなら、どの箱サイズ・どんな詰め方が最小ロスで済むか」を自動で算出することが可能です。
バイヤーとして現場を動かす「説得力のある提案」とは
実際に調達購買の立場やバイヤー業務に従事していると、サプライヤーや設計部門と最適化を推進する難しさを痛感します。
しかし、現場を“動かす”提案を作るためには、次の視点が重要です。
1. 定量的な効果算出
「パッケージ最適化で年間○○万円の物流費削減」や「出荷数量○○%アップ」など、数字で示しやすい効果を事前に試算しましょう。
経営層や管理職はこの具体的なインパクトを重視します。
2. サプライヤーの立ち位置配慮
一方的な変更要請や都合の押し付けではなく、「御社の工場にもこの最適化メリットがある」「共通部材化で資材調達コストも下がります」と、サプライヤー自体の現場利益になるような提案が大切です。
3. 品質・歩留まり・現場工数などトータルバランスで議論
箱サイズ最適化だけを追いかけて大事故を招いては「二度とやるな」となります。
歩留まりや品質保証の観点も必ずセットで議論することが、信頼を得るためには欠かせません。
まとめ ― 「今、本気でやる価値」がここにある
パッケージ最適化、デッドスペースゼロ化は一朝一夕にできるものではありません。
しかしグローバル競争が続く中、本気で利益体質を磨きたい企業にとって、輸送コスト削減のインパクトは極めて大きなテーマです。
従来の昭和流「なんとなく自社流」から、設計~現場~物流が一体となり、
「現状仕様は本当に最良か?」を問い直すカルチャーをぜひ作ってください。
実践を重ねるほど、工場もサプライヤーもバイヤーも、必ず“利益率の向上”という形でその成果を体感できるはずです。
パッケージ最適化という一見地味なテーマから、製造業の新しい地平線を、ともに開拓していきましょう。
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