投稿日:2025年7月17日

品質不具合ゼロ工程となぜなぜ分析真因見つけ方生産現場見える化原価管理仕組み作り

はじめに ― 製造業の現場で求められる「ゼロ工程」と「なぜなぜ分析」

製造業は常に「品質」「納期」「コスト」の3大要素をバランスよく最適化することが求められます。

中でも、近年ますます強く叫ばれるのが「品質不具合ゼロ工程」と「なぜなぜ分析による真因究明」です。

昭和の大量生産型のアナログな現場から、デジタル化やグローバル化が進む時代へ。

それでも、現場レベルには独自の文化や、人に依存したノウハウが色濃く残っています。

本記事では、私が20年以上の現場経験から学んだ「品質不具合ゼロ工程」への実践アプローチ、真因を見抜く「なぜなぜ分析」の進め方、さらに「見える化」と「原価管理」まで現場目線でわかりやすく解説します。

調達購買やバイヤーを目指す方、取引先サプライヤーの皆さんにも必ず役立つ視点を提供します。

ゼロ工程不良とは ― 不良を作りこまない現場体質をつくる

“ゼロ工程”の本当の意味と難しさ

「ゼロ工程不良」という言葉は耳で聞くと簡単ですが、これを本気でやろうとすると極めて難しい壁に直面します。

それは「不良品を次工程に流さず、その場で根本的に潰しましょう」ではなく、そもそも「不良を初めから作りこまない」ことを指します。

不良発生の都度、修正や手直し作業をしているうちは“後追い品質”から脱却できません。

自工程完結(セルフチェック・未然防止)の思想で、スタッフ一人ひとりが不具合をゼロにする仕組みにする。

この文化を現場に根付かせることが、まさに製造業の「王道」です。

なぜゼロ工程不良が求められるのか ― 顧客満足と利益確保の観点から

不良品が混入すれば、顧客先でトラブルに発展します。

回収・交換コスト、信頼喪失といった“減点”が生じるリスクは、経営に直結します。

また、工程内での不良修正も、人や時間・部材コスト・在庫増加など見えないロスが多く、利益を圧迫します。

グローバル競争・多品種少量生産・短納期要求が当たり前となったいま、ゼロ工程不良の浸透は、「品質」を守り「利益」も確保する両輪です。

成功企業が必ず実践している、不変の戦略と言えるでしょう。

「現場が止まること」を恐れず、徹底改善する勇気

昭和型“現場は止めるな”という根強い信仰がありますが、不良をあいまいにごまかして出荷するほど危険なことはありません。

ドイツなど先進ものづくり国では、ライン停止型の問題解決が常識です。

ラインが止まることで、初めて「あってはならないことだ」と皆で真剣に考え、真因を探し出せます。

現場の本当の進化は、「止まる勇気」から始まるのです。

なぜなぜ分析 ― 真因を見抜く5回の問いかけ

なぜなぜ分析で「現象の奥に潜む本当の原因」をあぶりだす

現場で不具合が発生したとき、「なぜこの現象が起きたのか」を徹底的に掘り下げることが大切です。

これが「なぜなぜ分析」です。

単なる“報告書用の儀式”にしてしまうと形だけの追究になり、再発防止策として弱いものになりかねません。

本質は「なぜ?」を5回(あるいは納得するまで)繰り返し、表面的な原因(ヒューマンエラー、うっかりミス)などに逃げず、「構造的な真因」をあぶりだします。

なぜなぜ分析で陥りがちなワナと正しい進め方

ありがちなのは、
– ミスをした「個人の責任」に落ち着く
– 「確認が足りなかった」と精神論で終わる
– 対象範囲が狭すぎて、全体最適からズレてしまう

こうした罠を避けるために、現場スタッフと「オープンな場」を作ること。

対立的な空気を排し、現物・現場主義で“みんなで現場に行き、その場で対話”が大事です。

なぜなぜ分析を愚直に続けるうち、「設備の選定ミス」「設計の曖昧さ」「作業標準の不備」など“システムの穴”に気づけます。

結果として、再発防止・未然防止に繋がるレベルの高い施策が生み出されます。

分析フレームワーク活用例

たとえば、
1. なぜその工程で異物混入が起きたのか? →カバー開放中に素材投入したから。
2. なぜカバーを開けた状態で作業したのか? →工程進行の都合で一時的に外していた。
3. なぜそれが許されていたのか? →安全管理基準に曖昧さがあった。
4. なぜ曖昧さが残ったのか? →作業手順書の改定が現場の実態に追いついていなかった。
5. なぜ手順書改定が遅れたのか? →報告系統と現場フィードバックの仕組み不備。

このように、表層で止めず「真因」まで到達できたとき、はじめて工程改善ポイントが明確になります。

生産現場の「見える化」 ― 何が起きているのか丸見えにする仕掛け

見える化の第一歩:情報と現場の“風通し”を良くする

「見える化」とは、現場に起きている事象・進捗・変化を、誰が見ても一目瞭然でわかるようにする取り組みです。

たとえば、
– 現場のホワイトボードで生産進捗を管理
– デジタル日報・IoTセンサで品質や稼働率をリアルタイム表示
– 工程別不良発生数をグラフ化

見える化を進めることで、現場の異常やロス、ボトルネックがすぐに発見できるようになります。

現場が自律的に改善サイクルを回せる“風通しの良い現場体質”を作り出します。

なぜ見える化がアナログ現場にこそ必要か?

紙帳票や個人ノウハウ、属人的な経験値に依存した現場では、問題が隠れてしまいがちです。

トップダウンで「標準化」や「システム導入」を押し付けても、現場からの納得感が得られないと続きません。

現場起点で「本当に知りたい・困っている情報」に着目したシンプルな見える化から始めましょう。

徐々にデジタル技術やデータ活用へ展開すると、現場の納得感とデータドリブン改善が両立できます。

原価管理の仕組み作り ― コストのムダを丸裸にして強い現場に

なぜ現場で原価意識が根付きにくいのか?

多くの工場では「コストダウンが大切」という号令は以前からあります。

しかし、「原価がどう決まるか」が現場スタッフに実感として伝わっている現場は少数です。

– 材料費だけではなく、加工ロス・手待ち・歩留まりのロスも原価
– 二度手間や不良修正工数も見えない原価の“病巣”

こうした「原価の正体」を現場全員で認識し、実態を“見える化”することが欠かせません。

原価管理の基本ステップと仕組み化のヒント

1. 「標準原価」と「実際原価」のギャップを明確に
2. 工程ごとの歩留・稼働・不良・手直しなどの“損失ポイント”を正直に見える化
3. 日常の現場会議のアジェンダに「原価・コスト」が自然と上る仕組みを作る

Excelの表計算・グラフや、簡易なBIツールでも十分です。

まず「見える」→「気づく」→「対策」→「効果検証」のサイクルを、管理部門と現場が二人三脚で回せることを目指しましょう。

まとめ ― 変える勇気、続ける力

製造業の強さは「変え続ける現場力」にこそ宿ります。

昭和アナログ時代の“追い込み型品質管理”から、現場全員参加型の「ゼロ工程」文化へ。

なぜなぜ分析で真因まで掘り下げる習慣、「見える化」「原価管理」の自律サイクル――

こうした実践が、現場をしなやかに、強くしていきます。

バイヤー志望の方やサプライヤーの皆様も、「現場目線の本質的な品質・原価管理」の大切さを理解することで、より良いパートナーシップ構築につながるはずです。

“現場の声”に耳を傾け、「止まる勇気」「仕組みで回す力」で、日本の製造業は必ず次の地平にたどり着けるのです。

You cannot copy content of this page