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OEMアウターのデザインに影響を与えるファスナー選定と付属管理

目次
はじめに:なぜファスナー選定と付属管理が重要なのか
製造業、とくにOEMによるアウターウェア生産において、ファスナーとそれに伴う付属品の選定・管理は極めて重要です。
多くの方が「ファスナーは単なる部品」と考えがちですが、実は製品のデザイン性、機能性、さらにはコストや生産効率にまで大きな影響を及ぼします。
現場で20年以上にわたり調達や生産管理、品質管理を担当し、数多くのOEM案件を手掛けてきた経験から、見落とされがちな「ファスナー選定と付属管理」の本質と、アナログ業界の根深い慣習との付き合い方、そして今後のあるべき姿について深く掘り下げていきます。
OEMアウターにおけるファスナーの役割とは
アウターウェアの製造において、ファスナーは単なる開閉パーツではありません。
デザイン性・機能性双方の要となり、サプライヤーやバイヤーの意思決定に大きく影響を与えます。
デザイン性への貢献
ファスナーにはさまざまな種類があります。
例えば、メタルファスナー、樹脂ファスナー、ビスロン(射出成型ファスナー)、逆開ファスナーなど多彩です。
これらの選択によって、アウターウェアの表情が大きく変わります。
たとえば、メタルファスナーはハードな印象を、樹脂ファスナーやビスロンはスポーティな印象を醸し出すことが可能です。
用途やターゲット層のイメージに合わせて最適なファスナーを提案できることが、OEMバイヤーとしての信頼構築につながります。
機能性への影響
アウターは防寒や防風、耐水性といった機能が求められます。
止水ファスナーや、ダブルジップ、オートロック機能などは付加価値を大きく左右します。
用途によっては、スムーズな開閉(滑り)、引き手の大きさや形状など実用面での要望も多いため、こうした情報を的確にヒアリング・提案できるかが腕の見せどころです。
OEMならではの悩み:サプライヤーとの調整
近年ではSDGs・環境配慮型部材の採用(リサイクル樹脂や塗装レス部品)も増えていますが、コストや調達リードタイム、安定供給面での課題もまだ多く、一筋縄ではいきません。
また、日本国内外の主要ファスナーメーカー(YKK、SAB、LAMPOなど)によっても製品品質や納期、コスト差が生じます。
OEMの現場ではこれらのファクターをバランスよく判断し、最善策を練ることが肝要です。
付属品管理の落とし穴:昭和から抜け出せない“現場力”の功罪
ファスナーのみならず、ボタン、バックル、リベットなど“副資材”の管理もアウターOEM製造の命綱です。
しかし、業界全体としては「職人技能」に依存しすぎる“昭和的現場力”が根強く残っているのが実情です。
なぜ現場力に頼る構造になるのか
理由は大きく2点あります。
ひとつは、図面・指示書に落としきれない「阿吽の呼吸」が現場には存在しているためです。
「このパーツは●●さんの経験を信じて…」と、暗黙知で業務が回りがちです。
もうひとつは、アウターウェアが「シーズン商品」であり、毎回新しいデザイン/仕様へのチャレンジが常に発生するため、教科書通りの運用ができない構造的欠陥があげられます。
アナログ特有の課題:在庫・ロス・品質事故
現場力に依存すると属人化が進み、以下のような問題を招きがちです。
– 一部パーツ不足による生産遅延
– 本来使うはずのない色やサイズを「ストックが余っているから」と流用
– 品質クレーム発生時のトレース不能(実際に装着したファスナーが規格外だった…など)
こうした“現場あるある”に対応するには、付属品管理におけるシステム化・標準化が避けて通れません。
業界動向:脱・昭和のアナログ運用とDX化の必要性
今、業界内では「製造業DX」や「部品トレーサビリティの強化」が急速に進展しています。
ファスナーや付属品にも、この波が押し寄せています。
製品個体管理とロットトレースの重要性
グローバル展開や大規模OEM化が進む中、ファスナー1本からロット、原材料、製造履歴までトレースできることが求められる時代です。
とくに欧州、米国大手ブランド向けOEMでは、「サプライチェーン上の安全性」と「環境配慮」の観点から原材料証明書や生産履歴データの提出が必須です。
このようなハイクオリティな付属品管理ができるかどうかで、今後サプライヤーの選別が進んでいくでしょう。
デジタル管理の導入と課題
多くの工場で、既存の在庫管理や発注管理はExcelベース、最悪の場合は手書き帳票やFAXが未だ主流という現場も多いです。
こうした状況ではトラブルの再発防止・比較検証さえままなりません。
一方で、バーコードやRFIDタグによる個体管理、IoTを活用した設備自動発注、さらにはクラウド在庫管理システムの導入事例も増えつつあります。
ファスナーや付属品も「品番」「ロット番号」「納入日」「使用先プロダクト」まで紐づけし、リアルタイムでロケーション管理ができる体制の整備が不可欠です。
バイヤー・サプライヤー双方から見た“強い現場”とは
ファスナー選定と付属品管理を“現場起点”で強化することのメリットは計り知れません。
バイヤー、サプライヤーそれぞれの立場から、押さえておきたいポイントを整理します。
バイヤー視点:リスクマネジメントと差別化戦略
バイヤーにとって、ファスナー選定・付属管理の強化は大きく2つのメリットがあります。
ひとつは、納期・品質リスクの最小化です。
詳細な管理情報をサプライヤーに共有し、事前のリスク予防ができます。
もうひとつは、自社ブランドに“独自性ある部材”を仕込むことで、類似品との差別化が可能となります。
特殊引手やカラーリング、リサイクル素材など、付属品戦略はいわば「隠れたブランド力」です。
サプライヤー視点:受注獲得・信頼性向上
サプライヤーは、精度ある部品管理を武器に受注競争力を高めることができます。
「どの製品にどのファスナー、どのロットを使ったか」を明確かつ即時回答できる体制があれば、大手バイヤーからの信頼性向上、監査対応もスムーズです。
将来的には、部品情報のデジタル提供(API連携やデータベース化)が商談条件になることも増えるため、今のうちから体制づくりを進めるべきです。
明日から実行できる、ファスナー選定・付属品管理の現場改善法
いくらIT化やDXといっても、現場オペレーションと直結しない施策は空回りしかねません。
生産・調達・品質管理担当者、営業担当者に向けて、即効性の高い現場改善策を紹介します。
コミュニケーションの明確化
図面・指示書だけでなく、仕様変更や特記事項はチャットワークなどのツールで即時共有し、履歴を残しましょう。
「現場からの声」を吸い上げ、ヒアリング不備や「言った言わない」問題を減らすだけでも実トラブルが減ります。
付属品仕様書の徹底とデジタル化
ファスナー寸法、種類、色番、素材、メーカー、テープ有無などを必ず書式設定し、エクセル台帳化(できればクラウド管理)することで現場の可視化が進みます。
現場に都度確認しなくても、誰もが仕様確認できる環境構築が第一歩です。
サプライヤーとのダブルチェック体制
現物サンプルや納品部品は、現場側だけ任せず、サプライヤーにも写真送付やロットナンバー照合など「念のため」のダブルチェック工程を設けましょう。
トラブルの初期発見、原因究明のレスポンスを高められます。
まとめ:ファスナー選定・付属管理は“現場力×デジタル”で次世代へ
OEMアウター製造において、ファスナー選定と付属品管理は「単なる部品調達」ではなく、製品力・ブランド力・リスクヘッジの根幹を成しています。
今までは“職人の経験”やアナログ管理に頼ってきた現場も、いよいよ本腰を入れたデジタル化・標準化への変革が求められる時代です。
そのためには、現場・調達・バイヤー・サプライヤー全員が役割意識をもち、分業&情報連携の精度を高めていくこと。
「現場力」と「IT力」、両輪での進化こそが、これからの強いものづくりに欠かせません。
最前線で働く皆さま、一緒に“新しい地平”を切り拓きましょう。
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