投稿日:2025年4月8日

はんだ接合部の破壊メカニズムと強度評価法および強度信頼性向上策

はじめに

はんだ接合部は電子部品の内部構造に欠かせない部分であり、その信頼性が電子機器全体のパフォーマンスや寿命を左右します。
特に、現代の精密電子製品では、小型化と複雑化が進んでいるため、はんだ接合部の強度評価と信頼性向上がますます重要とされています。
本記事では、はんだ接合部の破壊メカニズムについての理論と実践的な強度評価法、信頼性向上のための具体策を説明します。

はんだ接合部の破壊メカニズム

はんだ接合部が破壊するメカニズムは主に以下の3つに分類されます。

疲労破壊

疲労破壊は、主に温度サイクルや機械的ストレスの繰り返しによって発生します。
電子機器は使用中に何度もオンオフを繰り返し、温度が絶えず変化します。
これにより、はんだ接合部は繰り返し膨張と収縮を経験し、微細なクラックが徐々に成長し最終的には破壊に至ります。

クリープ破壊

クリープ破壊は、長時間にわたって一定の荷重がかけられることで徐々に変形していくことで発生します。
はんだ自体が低い融点を持ち、相対的に柔らかいため、高い温度環境において通常以上の荷重がかかると、時間とともに変形し破壊が進みます。

応力腐食破壊

環境中の腐食因子が、はんだ接合部に応力を加えることで生じる破壊です。
主に湿度が高い環境や腐食性ガスの存在により促進され、特に屋外設置の電子デバイスで問題となります。

はんだ接合部の強度評価法

はんだ接合部の強度を評価するためには、具体的かつ実践的な手法が多数存在します。

引張試験

引張試験ははんだ接合部の基本的な強度を評価する方法です。
試験片を引っ張ることにより、引張応力をかけ、断裂するまでの荷重を測定します。
このことで接合部の最大引張強度を評価可能です。

せん断試験

せん断試験では、はんだ接合部にせん断力をかけ、破壊に至るまでの抵抗力を測定します。
この試験は、特に多くの電子部品を持つ小型デバイスにおいて、接合部の強度を評価するための重要な指標となります。

サーマルサイクル試験

サーマルサイクル試験は、温度の変動に対するはんだ接合部の耐久性を評価する試験です。
繰り返し温度変化を与え、その過程で接合部に生じるクラックの進展を観察します。
これは主に疲労破壊のリスクを評価する際に使用されます。

はんだ接合部の強度信頼性向上策

はんだ接合部の信頼性を向上させるためのアプローチは多岐にわたります。

材料の選択

はんだ材料の選択は接合部の強度に大きく影響します。
近年では、鉛フリーはんだの使用が推奨されており、具体的には銀を含むはんだ合金が強度の向上に寄与します。

プロセスの最適化

はんだ接合プロセスを最適化することも重要です。
最適な温度管理と時間設定を行うことで、はんだの湿潤性や拡散性を改善し、接合界面を強化することが可能です。

設計の改善

電子部品の設計を改善することも、接合部の信頼性を向上させるためのアプローチです。
例えば、応力分布を均一化するための構造を取り入れたり、応力集中を避けるための形状変更を行うことが有効です。

環境制御

接合部の破壊を防ぐためには、環境条件の制御も大切です。
特に高湿度や腐食性ガスの影響を受けにくい環境を設計することが、信頼性向上につながります。

まとめ

はんだ接合部の破壊メカニズムを理解し、強度を正しく評価することは、電子機器の信頼性向上に不可欠です。
疲労破壊、クリープ破壊、応力腐食破壊といったメカニズムを特定し、それに基づく評価手法を選択することで、製品の品質向上を目指すことができます。
また、材料の選択やプロセスの最適化、設計の改善、環境制御といった多角的なアプローチを通じて、より強固で信頼性の高いはんだ接合部の実現を追求し続けましょう。

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