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材料力学を活かした弾性靱性向上と疲労破壊防止設計手法

目次
はじめに:材料力学と製造業の現場課題
製造業において、「破壊しない」「壊れにくい」製品を作ることは、永遠の課題です。
特に部品の軽量化や省資源化、さらには高速生産など、ものづくりの現場では、常に両立が難しい要求が押し寄せてきます。
そんな中で、材料力学の知識を現場レベルで活かし、弾性靱性を向上させ、さらに疲労破壊を防ぐ設計方法が求められています。
この記事では、昭和の頃から抜け出せずにいるアナログ文化が残る現場のリアルな風景も交えつつ、材料力学の基礎と、それを応用した実践的な対策について詳しく解説します。
また、調達購買やバイヤー、サプライヤーの方々にも有益となる視点も盛り込み、より実用的で現場ですぐ役立つ知識を提供します。
材料力学の基礎と製造現場での応用
材料力学の基本とは何か
材料力学は、材料に力が加わったときにどのような変形や応力が発生し、最終的に破壊に至るのかを解析する学問領域です。
たとえば、軸に引っ張り荷重をかけた場合の伸び、梁に曲げモーメントを与えた際のたわみ、ボルトやリベットへのせん断応力など、製造業で生産されるほぼ全ての構造物に関わっています。
この知識は設計者だけでなく、購買や現場作業者が部品選定や工程改善、品質検証の場面でも強力な武器となります。
なぜなら発注ミスや設計変更対応をするとき、材料の特性に基づく適切な判断ができるからです。
現場でありがちな材料トラブルとその背景
昭和から尽きない現場あるあるとして、図面で指定されていたのに「溶接で割れた」「ボルトがすぐ緩む」などの事象があります。
この根本には、材料力学への理解不足や、加工プロセス・使用環境を無視した材料選定が絡んでいることがほとんどです。
具体的には「引っ張り強さ」や「硬さ」だけで選定し、「靱性」や「疲労強度」といった特性を軽視してしまうケースです。
弾性靱性と疲労破壊を正しく理解する
弾性靱性の意味と、現場での重要性
弾性靱性とは、材料が変形しても破壊せず元に戻る能力と、エネルギーを吸収する粘り強さのバランスを示します。
この性質が高いと、たとえば工場の搬送装置やロボットアームのアクチュエータ部品が、荷重変動や衝撃で「いきなりパキッ」と割れるリスクを大幅に低減できます。
設計の現場では「限界応力値を守れば十分」と思われがちですが、突発的な衝撃・異常荷重が加わったとき、靱性が低いと一瞬で割れやすくなります。
特に自動化ラインやIoT導入が増える昨今、装置の停止が直接コストと信用の損失につながるため、弾性靱性を考慮した材料・設計選定はますます重要です。
疲労破壊:数値だけでは見抜けない実態
金属部品の多くが耐用年数の途中で「突然折れた」「ヒビが入った」といったトラブルを起こすことがあります。
これが「疲労破壊」と呼ばれる現象です。
一度に大きな力が加わって壊れるわけではなく、繰り返し小さな力が蓄積して内部に微細なクラックが生じ、ある日突然、目に見える破壊に発展します。
現場では「この部品、カタログ上の強度では十分余裕があるはずなのに・・・」と首をひねる場面が少なくありません。
これは疲労強度の考慮不足や、実際の使い方(取付ミス・クリープ・温度変動など)が想定外のストレスをかけていることが原因です。
弾性靱性向上と疲労破壊防止のための実践的設計手法
材料選定と工程管理のポイント
1. 必要強度と靱性バランスの考慮
超高強度の材料を選ぶほど安全、というのは誤解です。
たとえばSKD材や焼入れ鋼は硬く強いですが、靱性が低いと衝撃や突発的外力に弱く、破壊しやすくなります。
JIS規格表やカタログスペックだけでなく、実際の応力・荷重パターンに合わせて「破断形態(脆性破壊or延性破壊)」や「靱性値(吸収エネルギー)」も確認しましょう。
2. 疲労の発生しやすい部位の設計改善
応力集中が発生しやすい「角」「切欠き」や「急激な断面変化」は極力避け、できるだけR(曲面)を大きく設計します。
また、表面仕上げを良くし、ショットピーニングやホーニングなどの表面処理で残留圧縮応力を与えると、疲労寿命が格段に向上します。
3. 接合方法の見直しと検証
ボルト接合や溶接構造では、応力集中しやすい箇所や溶接欠陥から疲労クラックが起きやすいです。
設計段階から非破壊検査(UT、MTなど)を工場と連携して加え、溶接後の熱処理なども検討するとよいでしょう。
4. 材料のトレーサビリティ管理と品質保証
同一品種同一スペックでも、ヒートやロットによって微妙な材質差があり、靱性・疲労強度のバラツキ要因となります。
購買・調達バイヤーは、サプライヤーごとの品質履歴と試験データ実績を把握し、可能ならば抜き取り検査や定期的なサプライヤー監査を実施することで、リスク低減につながります。
ラテラルシンキングで攻める設計変革
現場でありがちな「前からこうやってきた」「コストダウン命令だから材料グレードは落とせ」という声に流されては本質的な改革は進みません。
むしろ現場の声や“異常が起こるプロセス”から逆算し、材料や形状を抜本的に見直すラテラルシンキング(水平思考)が必要です。
例えば、メーカーAの標準図面品をそのまま横展開するのではなく、現場での破壊データや突発トラブルの発生傾向の「なぜ?」を徹底追究。
さらに、自動車や医療分野で使われている先進材料(高靱性鋼、繊維複合材、表面熱処理鋼など)を一部応用するなど、業界をまたいだ横断的知見の吸収が大切です。
バイヤー視点:調達・購買における材料力学活用のヒント
コストだけでなく“Life Cycle”コストを読む
調達・購買の業務において、「この材料は割高だが、長期的なリプレイスやメンテナンスコストを考慮したら、逆に安価」といった判断力が求められます。
従来からの単純な価格交渉だけでなく、疲労寿命やトラブル時の応急措置コストまでをトータルコストとして捉えることが重要です。
“靱性保証”や“疲労強度”に強いサプライヤーの見極め
単なるISO取得やスペック値の提示だけではなく、靱性や疲労強度の保持力について「実績に基づくエビデンス」を持つサプライヤーは大変貴重です。
納入実績、保証体制、非破壊検査やトレーサビリティの運用状況、納入後トラブル時の対応力など、現場の信頼を得る指標にしましょう。
サプライヤー目線:バイヤーの深層心理を理解する
サプライヤーとして受注案件の拡大を目指すなら、バイヤーが「弾性靱性」「疲労破壊」を重視する背景をきちんと理解することが重要です。
単なるコスト提案やスペック説明だけでなく、自社技術でどれだけ現場トラブルを減らしてきたか、靱性改善事例やフィールドデータを“提案型”で示す価値があります。
また、設計者・現場担当者と積極的にコミュニケーションを持ち、現場の困りごとに寄り添った「その一手」を提供できれば、継続取引への信頼が深化します。
まとめ:材料力学的アプローチで現場トラブルゼロへ
今回紹介した材料力学の視点と、弾性靱性向上・疲労破壊防止の具体的手法は、単なる知識に留まらず、現場の課題を根本から解決する思考法です。
今後、省人化・自動化・国際競争が進む中で、材料力学の応用力を高めることが製造業全体の底力となります。
現場・設計・購買・サプライヤーが共通認識を持ち、新しい知見を柔軟に取り入れ、アナログ時代から抜け出す“現場改革力”を磨いていきましょう。
あなたの製造業ライフが、より安全・高品質・合理的なものとなることを心から願っています。
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