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ねじ締結のゆるみ防止と疲労強度・信頼性向上策およびトラブル対策

目次
はじめに:ねじ締結が製造業でもつ重要な理由
製造業において「ねじ締結」はごく当たり前の工程ですが、その確実性は製品の品質や安全性に直結します。
私の経験上、現場で起こるトラブルの多くは「ねじのゆるみ」や「疲労破壊」を根本原因とする場合が非常に多いです。
ねじ締結部は部品や製品全体をつなぐ命綱のような存在です。
昭和期から使われてきた技法も多いものの、現代では自動化、高機能化の波に押され、より高い信頼性と耐久性が求められています。
この記事では、現場目線で実践的な「ねじのゆるみ防止策」「疲労強度・信頼性向上策」そして「工場でありがちなトラブルとその対策」について、具体的かつ網羅的に解説します。
バイヤーやサプライヤーの視点からも活用できる、交渉や設計のヒントも盛り込んでいます。
ねじ締結の基礎知識:なぜ問題が起きるのか?
ねじ締結部で起こりやすいトラブルには、「ゆるみ」「疲労破壊」「ガタ」「固着」などがあります。
これらは全て、ねじ部分の設計・材料・加工・組付け・運用・保守、全てのフェーズに原因が潜んでいます。
ねじの“ゆるみ”が発生するメカニズム
ねじは、締め付けることで部材同士を圧着し、摩擦力によって居座り続ける構造です。
しかし、振動、熱膨張・収縮、繰返し荷重、温度環境、締め過ぎ・不足など、想定外の力が加わることで「ゆるみ」が発生します。
昭和から令和へと技術が進歩する中でも、工場ラインで毎日のようにゆるみトラブルが報告されているのが現実です。
疲労破壊とは:見えない危険
ねじやボルトは金属疲労の影響を顕著に受けます。
わずかな応力集中が、繰り返し荷重によって微小き裂を成長させ、やがて破断に至ります。
この破壊は外観から察知しにくく、「突然壊れた」事故になりやすいのが大きな特徴です。
疲労強度の問題は、生産管理や品質保証の現場で常に神経を尖らせているテーマです。
ねじのゆるみ防止:現場で効果的な7つの工夫
1. 適切な締付トルクの管理
最大の基本は「規定トルク通りに締めること」です。
手ルクレンチに頼っていた昭和世代とは異なり、現代はデジタルトルクレンチやトルク管理システムを導入し、目視+データでダブルチェックを行います。
しかし、現場では「なじみトルク」を見逃しがちです。
初期締付→再度増し締めのプロセスや、サンプル抜き取りで締付記録を残すことが、ゆるみ防止の基本対応となります。
2. ゆるみ止め部品・機構の活用
バネ座金(スプリングワッシャー)、ナイロンナット、セルフロックナット、ねじロック液(緩み止め剤)、ダブルナットなど、業界標準となっている「ゆるみ止め部品」の活用は今でも有効です。
コストや自動化対応も考慮し「正しい場所に、最適な方法で」使い分けましょう。
一方で、「バネ座金万能神話」には注意が必要です。
高速動作や大荷重箇所では逆に摩耗や疲労のトラブルとなる場合があるため現場のヒヤリ・ハット情報の共有が重要です。
3. 社内規格や標準化の徹底
工場全体でネジ規格や締結ルールを“標準化”することが重要です。
現場判断で勝手に部品や方法が変わると、ゆるみトラブルの温床となります。
作業者教育とチェックリスト運用、見える化をセットで行いましょう。
4. 摩擦係数を考慮した潤滑剤・表面処理
ねじ表面の状態や潤滑性もゆるみや疲労き裂に大きく影響します。
防錆グリースやモリブデン系潤滑剤の活用、黒染めやニッケルメッキなどの表面処理もゆるみトラブルの抑止につながります。
5. 振動対策:締結体の設計見直し
装置や機械で発生する振動は、最も厄介な「ゆるみ要因」です。
振動周波数と共振を避ける設計や、締結部周辺のリブ補強、吸振ゴムの適用など、設計レベルからの配慮を行いましょう。
製造業におけるIoTセンシングの導入で「異常振動時のアラーム制御」を設ける事例も増えています。
6. 増し締め・点検の現場運用
「ねじは締めたら終わり」ではなく、定期的な点検や増し締めの運用を習慣付けましょう。
特に、長時間使用や輸送振動を受ける機器では、導入後1週間~1カ月以内の再点検がトラブル防止に効果絶大です。
7. 破壊モードと失敗事例の積極共有
どんなにマニュアルを整備しても、ヒューマンエラーや誤組み付けのリスクは付きものです。
工場内で起こった“ゆるみ事例”“疲労破壊事例”を積極的に共有し、再発防止策やノウハウの蓄積に役立てましょう。
管理職や品質保証担当者は、失敗事例を結果だけでなく工程から徹底分析・フィードバックする仕組みづくりが鍵となります。
疲労強度・信頼性向上のための設計&生産現場での具体策
応力集中を減らす設計配慮
締付部分の角部を丸めたり、テーパ(傾斜)を持たせるなど、応力集中箇所を緩和する設計が疲労強度向上に直結します。
ねじ穴のバリ取り、ねじ山の精度管理も細かいものの信頼性に大きな違いが現れます。
ねじピッチ・材質・表面硬度の選定
細目ねじ(細かいピッチのねじ)は緩みづらく、材料強度が必要な場合はSCM435やSUH合金などの高強度材料を使用します。
また、表面硬化処理やショットピーニングの採用も、疲労き裂の発生を遅らせるため有効です。
各種部材ごとに適切な「ねじ材質とピッチ」を選定することが現場目線では極めて重要な業務です。
熱影響・耐食性・異種金属によるガルバニック腐食への備え
設備が屋外・高温・多湿環境で使われる場合、サビや腐食によるゆるみ、破壊のリスクが高まります。
用途に応じてステンレス、チタン、耐食コーティングボルト、樹脂ノブなどの採用も選択肢として検討しましょう。
異種金属締結部では断熱パッキンや絶縁体挿入も効果的です。
工程内検査・リーン生産方式と信頼性
締結部の作業工程では、「セル生産」や「リーン生産方式」を活用し、個々の作業者が責任を持てる体制を作ることがゆるみ&信頼性の土台となります。
また、目視+デジタルツール(トルクレンチ・動画記録)の併用もミス防止に有効です。
設計・解析ツールの最新活用
CAx(CAEやCAD)を駆使した応力解析、疲労寿命計算、FMEA(故障モード影響解析)など、設計段階からの“不具合予知”が今や現場の常識です。
設計と生産、品質管理担当者との情報共有にITプラットフォームを導入し、標準化・トレースできる仕組み作りを徹底することが品質向上への近道となります。
ねじトラブルに現場が陥る典型パターンと対策
ケース1:とりあえず増し締めの「悪循環」
よくある現場の誤りが「ゆるんだから、とりあえず増し締めで…」という対応です。
これは根本原因(振動、温度、初期トルク不足、不適正部品など)を放置したまま、余計な負荷をかけて疲労破壊のリスクを高めてしまいます。
原因究明→再発防止の改善サイクルを管理職と現場が一丸で徹底しましょう。
ケース2:ねじの“持ち出し在庫ショート”による代替品流用
現場で使うねじが一時的に在庫切れとなり、近いサイズや、明細不明な代替品を“とりあえず流用”するケースも散見されます。
これにより、互換性のない材質・規格品が混入し、事故、量産不良、最悪リコールにつながる事態も発生しています。
調達購買や資材管理の精度向上、デジタル在庫可視化システムの導入、現場と資材担当の定期ミーティングが重要です。
ケース3:設計変更や外注先切替時の不十分な調整
急な設計変更や、サプライヤーの変更時に「図面と現物のギャップ」「締結条件の不一致」が発生することがあります。
特にグローバル調達時は、JIS、ISO、ASTMなど規格違いにも注意が必要です。
現場立ち会いによる最終確認や、図面・現物マスタ管理の徹底がカギとなります。
バイヤー・サプライヤー視点でのねじ締結信頼性向上のポイント
バイヤー(購買担当)であれば、締結部品の調達先評価・部品サンプル検証・品質保証体制の精査が最重要です。
サプライヤー側は、「どの工程・どの場面でゆるみ・疲労リスクが最も高いのか?」を把握した上で、顧客ファーストの改善案を提案できることがパートナーとして選ばれる条件です。
発注仕様書やQMS(品質マネジメントシステム)で不明瞭な点があれば、事前に細かく確認・擦り合わせ、後工程の現場トラブルを未然に防ぎましょう。
まとめ:今後のねじ締結 未来を切り開く管理術
ねじ締結は、工場の自動化やDXが進んでも、現場の「進化」と「基本の徹底」を両立しなければ未来はありません。
締結トルク管理のデジタル化、生産データの蓄積と分析、見える化による標準化、設計段階からの疲労強度シミュレーション。
これらを現場レベルに落とし込み、人が介在する部分は教育と現場連携でカバーする。
「昭和の遺産」であっても、現場の知識やノウハウを最大限活かしつつ、令和の最新技術・管理力を融合していくことが、今後の製造業の発展には不可欠です。
トラブルゼロは夢かもしれませんが、「この一手間が未来への投資」と原点回帰し、ねじ締結の信頼性・安全性を高めていきましょう。
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