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伝える力と聴く力を高めるロジカルコミュニケーション手法でビジネス成果を最大化

目次
製造業で求められる「伝える力」と「聴く力」とは
製造業の現場は、日々めまぐるしく変化します。
新たな取引の交渉から、生産ラインの改善、品質不良への対策まで、無数のコミュニケーションが飛び交っています。
そのなかで、「伝えたつもり」「分かってくれているはず」という思い込みが業務の遅延や品質トラブル、大きな損失につながることを、20年間の現場経験で何度も目の当たりにしてきました。
製造業では、単に言葉を交わすだけではなく、「伝える力」と「聴く力」の両方をバランス良く高めることが、現場やサプライチェーン全体のパフォーマンス向上に不可欠です。
この記事では、アナログ色が強く、情報共有や意思疎通の文化が昭和時代から変わり切れていない製造業界のリアリティを踏まえ、ロジカルコミュニケーション手法の活用でどのようにビジネス成果が最大化できるのかを掘り下げます。
バイヤー、サプライヤーの垣根を超え、現場起点の新しい「伝える・聴く」のコミュニケーション術を解説していきます。
なぜ、ロジカルコミュニケーションが製造業に必要なのか
伝言ゲーム式の情報伝達が今もはびこる
大手製造業でも、ちょっとした伝達事項が「伝言ゲーム」化してしまい、現場に正確な情報が伝わらないという問題があります。
設計から生産、調達、品質管理と工程ごとに担当部門が細分化されているため、情報が伝わるたびに解釈が変わり、肝心な部分が抜けてしまう現象です。
この「情報劣化」は、工程の遅れや不良流出、追加コストの発生といった形でビジネス成果を著しく損ないます。
ロジカルコミュニケーションによって、ポイントを押さえた伝達と確認を徹底できれば、この伝言ゲームの弊害は大幅に減少します。
上下関係や年功序列文化が意思疎通の障害に
製造業は今もなお、現場の年配者や上司の意見が絶対という暗黙のルールが強く残っている職場が多いです。
たとえば、「上の人にはっきりと意見を述べづらい」「先輩からの指示だから修正依頼をしづらい」といったムードが、コミュニケーションの停滞を招きます。
このような文化風土のなかでは、単なる気配りや根回し以上に、誰もが納得できる論理的な伝え方・聴き方を身につけることが重要です。
ロジカルコミュニケーションは、こうした環境でも無用な対立や忖度を避け、オープンな双方向の対話を実現する武器になります。
ロジカルに「伝える」と「聴く」を定義する
伝える力の本質:論点、結論、根拠の明確化
ロジカルに伝えるとは、ただ詳細に説明するのではなく、「何が課題か」「結論として何をしてほしいのか」「その理由や背景は何か」をシンプルかつ具体的に示すことです。
たとえば、購買(バイヤー)からサプライヤーに品質改善を依頼する場合、
「先日納入された部品Aの不具合率が従来比で3%増加しています。
現行の検査体制にどのような変更を加えると対策できるか、ご提案をいただけますか。
(結論)改善案のご提示をお願いします。
(根拠)品質統計から生産ライン全体に与える影響が大きいためです。」
このように、論点(品質不良)、結論(改善案要請)、根拠(影響の大きさ)を簡潔に伝えることで、相手の理解度が飛躍的に上がります。
聴く力の進化:事実・意図・感情を聞き分ける
ロジカルに聴くとは、「その話の目的や背景は何か」「どの部分が事実でどこからが推測なのか」「相手が本音で困っている部分はどこか」という複数のレイヤーを意識して聴くことです。
現場の例で言えば、サプライヤーが「現状のリードタイム(納期)はこれ以上縮められません」と述べたとき、
・ファクト(事実):どの工程がボトルネックなのか?
・意図:納期短縮で発生するコストやリスクへの懸念は何か?
・感情:不満、不安、現場へのプレッシャーを感じているのか?
こうした観点で「掘り下げ質問」を返すことで、表面上では見えない真の課題や合意ポイントが見えてきます。
昭和的アナログ現場でも定着する「3つのコミュニケーション技術」
1. ピラミッドストラクチャーを使った説明術
「頭から最後まで全部話す」というクセが抜けないアナログ現場でも、ピラミッドストラクチャー(結論→根拠→詳細)を徹底するだけで、相手の理解度は格段に向上します。
例えば、「なぜ生産ラインを一時停止する必要があるのか?」という問いに対し、
・【結論】製品Bの寸法異常発生により、継続生産が不良品の増加を招くため、一時停止が必要です。
・【根拠】最新の寸法測定データ、顧客からのクレーム件数。
・【詳細】該当ロットの生産状況、対策にかかる目安時間。
このような論理的展開は、現場でも上司、部下どちらにも納得感を与えやすいメソッドです。
2. 仮説思考で「先回り確認」する姿勢
アナログ現場の課題は、何か起きてから「誰の指示で?」「なぜやったのか?」と後追い確認になるケースが多いことです。
ロジカルコミュニケーションでは、「この説明で相手がどんな疑問を持つか」「何に不安を持ちそうか」を仮説立てて、事前に確認や追加情報を用意しておくことを推奨します。
たとえば、
「工程変更を提案すると、現場からは“工数が増える懸念”が挙がりそうだ」と考え、
・作業工数のシミュレーション
・他工場での成功事例
といった具体的データも添えて説明すれば、スムーズな合意形成につながります。
3. オープンクエスチョンで相手の本音を引き出す
サプライヤーや協力会社とのコミュニケーションでは、つい「この条件で行けますか?イエスorノー」のような質問に頼りがちですが、
・「ほかに現場で懸念されているポイントはありませんか?」
・「納期に関して、どうしたら無理なく対応できるでしょう?」
というオープンクエスチョン(Yes/Noで終わらない質問)を挟むことで、現場の今の苦労や未解決の課題を把握しやすくなります。
この積み重ねが、取引先との信頼関係強化やトラブル発生時の即時対応力を高める基盤となります。
デジタルとアナログの融合で「伝える・聴く」の質を底上げ
ITツール活用は”現場の声”とのブリッジ
最新のITツール活用(チャット、プロジェクト管理ツール、BIツール等)が増えても、「結局は現場がついていけない」「現場目線の情報が反映されない」といったことも多くあります。
デジタル化はあくまで補助であり、人間同士の相互理解を高める手段です。
たとえば
・重大な連絡(異常発生、仕様変更など)は必ず口頭+文章でダブル伝達
・チャット履歴を使って「どこに食い違いがあったか」を双方で振り返る仕組み
…こうしたアナログ×デジタルのハイブリッド運用が、確実な業務遂行やノウハウの蓄積につながります。
「暗黙知」を「形式知」に変換するスキル
昭和型現場で重宝されてきたベテラン職人の「勘」や「経験値」も、コミュニケーションの言語化によって初めて組織資産として残せるようになります。
・なぜこの工程で不良が出やすいのか?
・経験上、どんな場合に取引先との摩擦が起きやすいのか?
こうした現場起点の”暗黙知”を、ロジカルにヒアリング・言語化して全体に共有することで、組織全体が強くなります。
現場目線のラテラルシンキングが新しい価値を生む
ロジカルコミュニケーションの重要性は、現場だけでなく、バイヤー・サプライヤー関係、さらには業界全体の「壁」を取り払うきっかけにもなります。
たとえば、
・現場の「できません」「無理です」という声の奥に、工程の非効率や資材調達の課題が隠れていないか?
・バイヤーの「値下げ要請」に対し、原料高騰や物流コストの変化を正確に説明できているか?
こうした従来の「思い込み」や「常識」をラテラル(水平)シンキングで深掘りし、論理的フレームで再整理することで、まったく新しい落としどころや解決策が生まれるのです。
現場に根ざした「伝える・聴く」の積み重ねが最終的に
・安定した生産計画の実現、
・取引先との長期的な信頼関係の構築、
・技術・ノウハウ資産の着実な承継
…といったビジネス成果の最大化につながります。
まとめ:今日からできるロジカルコミュニケーション実践アクション
最後に、製造業の現場で働く皆さんが「伝える力・聴く力」をさらに高めるためのアクションをまとめます。
- 伝達時は必ず「結論(何をしてほしい)」→「理由(なぜ重要か)」→「詳細(具体的な要求)」の順に話す
- 相手の説明や訴えを聞く際「事実・意図・感情」を意識し、掘り下げる補足質問を毎回一つプラスする
- デジタルツールを資料・記録用と割り切り、対面や口頭+文字で複数ルートの情報伝達を心がける
- 現場の”勘と経験”に耳を傾け、それを仕組み化・形式知化するためのヒアリング・記録機会を設ける
- バイヤー・サプライヤー間では「Why(なぜ)」を意識して事実ベースで対話し、無用な忖度や対立を避ける
製造業の価値は、結局「人と人」の対話の質で決まります。
20年以上現場で仕事をしてきた私自身、たくさんの失敗やトラブル、画期的な発見を“伝える・聴く”の積み重ねから得てきました。
今日から一歩、ロジカルコミュニケーションを意識し、現場や取引先との「つながり」をより強くしてみてください。
きっと、あなたの仕事の成果や職場の空気がぐっと良くなるはずです。
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