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熱設計初心者でもできる放熱部材の選定とトラブル防止ステップバイステップ解説

目次
はじめに
製造業の現場では、製品の高性能化・高集積化が進む一方で、電子機器や機械装置の「熱設計」はますます重要なテーマとなっています。
特に、設計・調達・品質管理の各現場で「放熱部材」の選定とトラブル防止は避けて通れない課題です。
しかし、現場では未経験者への引き継ぎが不十分なまま、昭和から続くアナログ的な『なんとなく経験則』が根強く残っているのも事実です。
今回は、バイヤー・サプライヤー双方の現場感覚と最新動向を踏まえながら、初心者でも実践できる放熱部材の選び方とトラブル未然防止のためのステップをわかりやすく解説します。
なぜ今、放熱部材の適切な選定が求められているのか?
電子部品の高発熱化が止まらない
近年、製品の高性能化や小型化によって、プロセッサやパワーデバイスなど発熱が大きい部品が多用されています。
従来通りの「お決まりのヒートシンクや放熱グリース」で対応していた時代から、材料選定や取り付け方法次第で製品寿命や信頼性に大きな影響を与える時代へと突入しています。
「設計×調達×品質管理」連携の重要性
昭和時代のように、一部門の経験値=“暗黙知”だけで部材選定を進める時代は終わりつつあります。
設計部門が期待する熱特性、調達部門が求めるコストや調達性、品質部門が担保したい信頼性、このすべてを連関させて最適な部材・材質を選ぶ姿勢が製造現場でも求められています。
放熱部材の基礎知識
代表的な放熱部材の種類と特徴
– ヒートシンク(アルミ/銅:最も汎用的)
– 放熱シート・放熱グリース(ギャップ補償、微細な凸凹にも最適)
– 放熱スプレッダ(半導体のパッケージ全体をカバー)
– 熱伝導材料(絶縁シート、フェーズチェンジ素材、放熱パテなど)
熱設計の第一歩は、これらの特徴・性能・コスト・供給性を正確に把握するところから始まります。
なぜ“ただ冷やせばいい”が通じなくなったのか
例えば、放熱グリース一つ取っても、「入手しやすい安価品」を選ぶだけでは、長期使用による軟化・硬化や分離トラブルを招き、最終的に機器の寿命や安全性に影響するケースが多発しています。
また、ヒートシンクとデバイスの取付方法(ねじ止め、ばね止め、熱伝導シート併用など)によっても、熱抵抗や信頼性が大きく変わるのです。
【実践】放熱部材の選定ポイントと注意点
①用途・動作環境を徹底分析する
まずは、放熱すべき部位がどれくらいの熱を持つのか、発熱部品の最大電力や連続運転条件、使用環境(高温多湿、屋外/屋内、振動の有無など)を具体的に洗い出しましょう。
想定環境で最悪ケース(サーマルショック、粉じんや油ミストの付着など)も見落とさないことが重要です。
②熱解析シミュレーション or 手計算の使い分け
昨今では、熱抵抗の手計算だけでなく、3D CADデータと連動した熱解析ツールが普及しています。
– 初期設計段階→手計算&カタログスペックで目安選定
– 詳細設計/量産前→簡易シミュレーションや現品評価で最適化
現場メンバーには“最悪条件でのマージン”を必ず設けるよう指導し、過去トラブル事例も事前に共有しましょう。
③放熱部材選定の「よくある失敗例」
- 物性値(熱伝導率)だけで選んでしまう
(→熱伝導率が高くても、放熱パス全体の熱抵抗=放熱性能は最終的な使い方次第です) - 厚みや接触面圧が合っていない
(→過大圧縮で劣化、圧縮不足で局所発熱・空気層増加) - 入手性やコストを無視したオーバースペック化
(→後工程で部品調達不能・コスト高騰による生産停止トラブル)
トラブル防止!放熱部材管理の現場ノウハウ
「紙図面」「Excel台帳」に頼り切りはNG
現場ではいまだに台帳管理や伝票ベースで部材管理・変更履歴を残すケースも多いものです。
しかし、類似部材・型番違いでの装着ミスや、現場独自の“持ち込み部材”混入、組付け工数増加が品質トラブルを招く最大要因です。
可能な限り、
– 部材管理をPDM/MRPや生産管理システムで一元管理
– 品番・材質・サプライヤ情報までデジタルで共有
– QRコード/2次元コード運用による現物紛失トラブル削減
の3点セットが有効です。
「なぜコストダウン要求に負けてはいけないのか」
安易なコストカット意識だけでグレードダウン品や“ノーブランド品”に置き換える事例も、特に中堅工場・協力工場では散見されます。
放熱部材は一見、消耗品的なイメージですが「見えないリスク」「トラブルリカバリーにかかる実コスト」の大きさを全社で意識すべきです。
調達部門や購買バイヤーは、サプライヤーの品質管理体制や安定供給力を重視し、中長期視点での『全体最適』に寄与する部材選定を必ず徹底しましょう。
受け入れ検査・中間検査の工夫
放熱部材は目視検査での違いが分かりづらいことから、現物サンプルでの寸法・触感・圧縮試験や赤外線等による熱伝達評価を加えると、現場トラブル発生リスクを大幅に減らすことができます。
「ロット毎にサンプル抜き取り評価+個体識別の履歴化」も、現代工場の最低限の安心対策です。
サプライヤーとバイヤーの理想的協業とは
サプライヤーが知っておくべき“バイヤーの思考”
– 同一部材でも、調達先分散によるリスク回避を常に意識している
– 新グレード導入時は現場テストだけでなく、長期安定供給体制も重視
– コストダウン交渉の裏には“品質リスク最小化”という大命題がある
サプライヤー側も、単なるスペック競争ではなく「現場課題に最適な素材提案」「現品立会い・技術提案力の強化」「納期遅延・品質クレームへの早期対応力」といった付加価値を前面に打ち出すことが求められます。
バイヤーは“現場密着型”手法で情報を集めよう
従来型の価格比較だけでなく、現地工場でのスタッフヒアリング、過去のトラブル経緯、エンドユーザーからのリクエスト動向も調達戦略に組み込んでいきます。
また、近年ではグリーン調達(RoHS・REACH対応などの環境規制)やトレーサビリティ、脱炭素イノベーションを軸にした持続可能なサプライチェーン構築が必須となっています。
まとめ:現場目線×データ活用でトラブル・ロスと決別せよ
放熱部材の選定とトラブル対策は、一見地味なテーマですが、ものづくり現場においては「信頼性のカギ」「納期通しとコスト削減の生命線」です。
先輩たちの経験則に頼るだけでなく、現代の管理システムやデータ活用を駆使することで、昭和型の勘・経験から脱却できます。
サプライヤー・バイヤーという立場の違いを超え、「現場の困りごとに科学的合理性と現実解を与える」ことこそ、今求められる製造業プロフェッショナルです。
未来の製造業は、現場を知る皆さん一人ひとりのラテラルな挑戦によって、より良く生まれ変わることができるのです。
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