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3D実装技術の基礎と量産実用化に向けた多層配線技術の最新開発動向

3D実装技術の基礎と量産実用化に向けた多層配線技術の最新開発動向
はじめに:3D実装技術がもたらす製造業の新たな可能性
半導体・電子部品の小型化、高性能化が著しい現代において、従来の2次元(2D)実装技術では限界を迎えつつあります。
その壁を打ち破るソリューションとして、3D実装技術が近年大きく注目されています。
特に、IoTや5G、エッジコンピューティングの普及によって、多層化・高密度化へのニーズが急増しています。
製造業の現場、調達/購買や品質管理のプロとして言えるのは、単なる高性能化だけでなく、歩留まりや量産性、そしてコストのバランスが非常に重要だということです。
この記事では、現場目線を大切にしつつ、3D実装技術の基礎、量産への課題、多層配線技術の最新動向、そして今後の業界発展を見据えたヒントをわかりやすく解説します。
3D実装技術の基礎——なぜ今、3Dなのか
3D実装技術とは、電子部品やICチップなどを3次元的に積層・配置し、従来よりも高集積・高密度な回路を実現する技術です。
一般的な2D実装では、基板上に並べて配置するスタイルが主流でした。
3D実装では、各種ICや部品を立体的に積み重ね、それぞれの層(ダイ)を直接接続することで、高速な信号伝送と省スペース化が図れます。
主な3D実装技術には、以下の3つがあります。
1. TSV(Through Silicon Via:シリコン貫通電極)による積層
2. Die to Die、Die to Wafer、Wafer to Waferといった積層方式
3. RDL(Redistribution Layer)技術を用いた高密度配線
これらの技術は、高性能スマートフォン、AIプロセッサ、IoT用センサー、最先端車載機器など、さまざまな分野に導入が進んでいます。
2D実装からの脱却――アナログ現場はなぜ3D実装に消極的だったのか
製造業の現場、特に昭和以来のアナログなラインでは、新技術への転換に慎重な傾向があります。
理由は明確です。
歩留まり、品質保証性、材料コスト、装置投資のリスクが大きいからです。
たとえば、ICチップの積層やTSV接続はミクロン単位での精密な加工・接合が求められるため、従来のライン改造や新規検査設備の導入など莫大な投資が必要です。
超高精度な配線・実装で不具合が出ると、1枚の不良で何層ものダイや部品が無駄になる危険が増大します。
さらに、不良解析やリペアのノウハウが2D時代と大きく異なるため、現場の人材教育との両立が課題となります。
しかし、半導体におけるムーアの法則の終焉が叫ばれる中、「3D化なしには生き残れない」との危機感が業界横断的に高まり、徐々に現場レベルへの導入が進んでいます。
3D実装における多層配線技術の要点
3D実装技術の歩留まりや信頼性を大きく左右するのが、多層配線技術です。
単にICや部品を積層するだけでなく、各層間を短距離・低抵抗・低インダクタンスで高密度に接続することが求められます。
主な多層配線技術には下記のアプローチがあります。
・TSV:シリコン基板を通して層間を垂直に接続し、高速・省スペースを実現
・RDL(Redistribution Layer):再配線層を設け、入出力端子の省スペース化や柔軟な配線パターンを提供
・マイクロバンプ接合:高密度・高信頼性を実現する微細はんだ接合技術
・PoP(Package on Package):ICパッケージ自体を上下方向に積層し、電気的・機械的接続を最適化
これらの技術は、それぞれのラインアップ/製品用途に応じた特徴を持ち、“適材適所”の視点が重要となります。
量産実用化に立ちはだかる課題と、現場で戦う人々の工夫
3D実装や多層配線技術の『研究・試作レベル』と『量産』との間には、大きなギャップが存在します。
ここで求められるのは理論・技術力だけでなく、現場で培われたノウハウと粘り強い改善活動です。
主要な量産課題を現場目線で整理します。
【歩留まりの低下】
多層配線・積層構造が複雑化することで、各層のズレ・接合不良・ショートなどの不良リスクは飛躍的に高まります。
実際、パイロットラインでの歩留まりは50%台からスタートすることも珍しくありません。
そこで求められるのは、不良発生メカニズムの徹底解明と、検査・計測技術の高度化です。
現場ではAI画像解析やX線CTによる非破壊検査、自動化装置と組み合わせた工程間フィードバックなど、最先端のIoT技術との融合が進んでいます。
【材料・設備コストの増大】
3D実装対応材料(高密度シリコン、微細配線絶縁体、低熱膨張バンプなど)は高価です。
また、装置投資も2D時代の3〜5倍規模になるため、購買・調達現場ではサプライヤーとの交渉力やロングタームの契約戦略がますます重要になっています。
【品質保証・リスク管理】
3D構造の複雑化に対応したJIS/IEC規格や業界ガイドラインが整備されつつありますが、現場での品質保証活動においては「見えない不良」をいかに抑えるかが課題です。
部材サプライヤー、設備メーカー、組立・実装現場の垣根を超えたオープンなコミュニケーションが不可欠です。
それを支える“横串を刺す”プロジェクトマネジメントの仕組みづくりも組織変革のテーマとなっています。
多層配線技術の最新開発動向——世界のリーダー企業は今、何を目指しているか
3D実装・多層配線技術は、世界的に激しい開発競争が繰り広げられている分野です。
海外ではTSMC、Samsung、Intelといったトップファウンドリが、「3D IC統合プラットフォーム」やCoWoS(Chip-on-Wafer-on-Substrate)、FoCoS(Fan-out Chip-on-Substrate)などの高度技術を実用化しています。
一方、日本国内でも、村田製作所、太陽誘電、京セラなどの大手メーカーが、新たなセラミック多層基板やSiP(System-in-Package)構造の独自技術を量産ラインで展開しています。
さらに、大学・官民連携プロジェクトでのマイクロバンプ微細接合や新規Cu配線技術の研究も盛んです。
ここ数年の最大の注目点は、AI・サーバー向けのハイエンド市場だけでなく、低価格ミドルレンジのIoT・自動車用電子部品にも3D・多層配線技術が幅広く活用されるようになってきたことです。
つまり、「最先端だけではない、汎用化・商用化の波」が押し寄せてきています。
サプライヤー/調達・購買/現場エンジニアが今知っておくべきこと
3D実装・多層配線技術の飛躍的進化にともない、現場のバイヤー、サプライヤー、そして現場エンジニアが今学び、備えるべき視点を整理します。
・新材料、最新設備の動向把握と、サプライヤーとのオープンな情報連携
・生産性と品質を両立する“現場発イノベーション”の推進(自動化/検査DXの導入、品質設計から参画する体制構築など)
・業界標準化やECO設計(リユース性・リサイクル性)への早期対応(企業価値向上という観点でも重要)
・グローバル調達、BCP(事業継続計画)の観点を持った材料選定・リスク分散管理
バイヤー志望の方は、「単価交渉屋」から、「技術+現場プロセス改善+サプライチェーン最適化のキーマン」へと進化する必要に迫られています。
また、サプライヤーの立場では、顧客バイヤーが“何を不安に思っているのか”“何に困っているのか”を現場目線で想像し、情報とソリューションを提案できることが信頼構築のカギとなります。
まとめ:3D実装・多層配線技術がもたらす未来への展望
3D実装技術と多層配線技術の進化は、今後の日本の製造業復権、新たなサプライチェーンの構築、そして世界最先端技術へのキャッチアップ(あるいはリード)に直結すると言えます。
現場で地道に積み重ねてきた“ものづくり力”と、「垣根を超えるオープンな連携」「デジタル・自動化技術」の柔軟な取り込みが、3D時代の勝者を決めます。
激動の時代だからこそ、現場の知恵と現実主義を武器に、産業構造の進化を主体的に牽引していきましょう。
現場の皆さん、サプライヤー、そしてバイヤーを目指す次世代の皆さんとともに、日本の製造業に新たな未来を切り拓いていくことを強く願います。
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